上 下
78 / 147
────6章『絆』

■2「愛しい人への提案」【微R】

しおりを挟む
 ****♡Side・咲夜

「んんッ」
 咲夜は久隆に甘いキスをされ、ぎゅっと彼に抱きついた。
「咲夜、可愛い」

 優しく抱きしめてくれる腕。
 その声、その姿。
 その顔、その表情。
 性格も全部好き。
 久隆の全てが大好きッ。

「咲夜はなんでそんなに可愛いの?」
 と彼はため息をつき、咲夜のうなじに口づける。
「そんなこと言うの、久隆だけだよ」
 中性的な容姿の咲夜は、綺麗な子と形容されることはあったが、可愛いと言うのは彼だけだ。

 可愛いだなんて。
 久隆が可愛い子が好きだというのなら嬉しいけれど。

「何も準備がないから、舐めてあげるよ」
 と彼に言われ、
「やッ」
 咲夜は抱きつく腕に力を込める。
「うん?どうして?」
 そんな咲夜に、彼は不思議そうに問う。
「キスいっぱい欲しい」
 とおねだりをすると彼は、
「咲夜は、ほんともうッ」
 可愛い、可愛いと言って、たくさんキスをくれた。
「じゃあ、手でしてあげるね」
「あッ..ん..」
 咲夜は久隆に”汚れる”と言われ、下着ごとズボンを降ろされる。彼の指が咲夜自身に絡まると、
「久隆の手、大好きッ..あッ..はあッ..」
 気持ちよさに声が漏れ、
「家帰ったらいっぱい愛してあげる」
「んんッ..久隆ッ」
 咲夜は彼の、キスと愛撫に夢中になっていた。
「好きッ..んッ..久隆がっ」
「大好きだよ、咲夜」

 **

「ねえ、久隆」
「うん?」
 咲夜は後始末をしてくれている久隆に、自分の考えを話すことを決心し、話しかけた。
「俺は、葵と大里くんには話したほうが良いと思う」
 過ちを繰り返してはいけないというのが咲夜の考えだった。
「え?」
「大里くんは前回、俺たちに黙って単独行動したことをすごく悔やんでいた。ねえ、俺たち仲間だよね?チームなんだよね?」
「咲夜..」
 彼は咲夜の言葉に驚き、手を止める。
「俺が久隆にしたこと、二人は責めなかった。それどころか、葵は連帯責任とさえ言ったんだよ。これは二人じゃ解決できないよ、専門医に見てもらうべきだと思う」
 久隆は黙って咲夜の話を聞きながら、再び手を動かし始めた。

「それが出来ないなら余計に、葵たちに助けを求めるべきだと思うんだ。久隆は信用してない?それとも、心配かけたくない?」
「後者かな」
「俺がもし二人の立場なら、頼って欲しいと思う。大里くんは、俺たちのために何かしたいと思って動いてくれたけれど、内緒にしたことが発端になってこうなってしまったと一番、後悔してる。」
「うん」
「彼にも、久隆の計画話すべきだよ。きっと力になってくれるよ、俺たちの」
「そうだね」
「だから、二人には言おう?俺が二人から何か言われることを心配しているのなら、平気だよ」

 久隆がこうなってしまったこと、咲夜が久隆をこうしてしまったことで、葵と大里は自分に怒りをぶつけるかもしれない。二人にとって、久隆はとても大切な人だから。

「咲夜」
 後始末を終えた久隆に、咲夜は抱きしめられる。
「咲夜は正しい。でも、もし」
「うん」
「世界中が俺たちの敵にまわってしまったら。俺と一緒に逃げてくれる?」
 世界はそんなに厳しくはないと咲夜は思ったが、彼はずっと敵だらけのところにいたのだ。
「うん、世界の果てだって一緒にいくよ」
「俺はただ、咲夜と一緒にいたいだけなんだ」
「うん」
「この幸せを二度と誰にも奪われたくない」
「側にいるよ。久隆が嫌だと言っても離れないから」
 咲夜がぎゅっと彼を抱きしめ返すと、
「安心した」
 とやっと笑顔になる久隆に安心したのだった。

 ****

「おかえり」
 久隆と手を繋いで席に戻ると、葵と大里が楽しそうに話をしていたのでホッとする。店に入ったばかりの時はまだ、どことなくぎこちなかったからだ。
「何話してたの?」
 と久隆が二人に問いかけると、
「明日の花火大会、みんなで行かないか?って」
 と大里から返答が帰ってくる。
「いいね」
「佐倉っちと和も誘わない?」
 と、葵。
「楽しそう。みんなで浴衣着たいなー」
 と咲夜が思わず口にすると、葵と久隆が顔を見合せ、
「咲夜、可愛い」
 と、何故か二人は悶絶した。そんな二人に大里は肩を竦め、
「よし、じゃあ決定で」
 と葵がニコニコしている。
「二人に話がある」
 穏やかな空気になったところで、久隆が突如真面目な顔をし、先ほどのことを二人に打ち明けた。

 **

「!」
「想定内」
 驚く葵に、大里は冷静で。
「ホントに病院には行かないつもりなのか?久隆」
 大里は長く一緒にいるだけあって、久隆の精神科の主治医のこともよく知っているようだ。
「親父に知られたくない」
「んー..とりあえず明日の昼間、みんなで図書館いこう。何か文献あるかもしれないし」
 大里の提案に久隆が、少しだけ明るい顔になる。
「こういうのは、専門医に任せるべきだと思うけれど」
 そういえばと、咲夜は思う。その間にも、久隆は自分たちの遂行している計画について大里に話始めた。

 自分はいつの間に克服できたのだろうか?
 義父から受けた強姦未遂。
 久隆に初めて身体を開いた日は怖くて堪らなかったのに。
 それなのに、今は久隆に求められるのが嬉しくて仕方がない。
 未遂だったからなのだろうか?

「そうか、話してくれてありがとう。俺も協力するよ」
 大里は、久隆の話を聞くと穏やかに微笑んだ。
「大里、そんなこと言って平気なの?」
 と葵が口を挟む。
「まあ、あれだな。俺を仲間だと思ってくれることが嬉しい。片倉と霧島のことよく知らなかったうちは正直、恨んでたし、久隆を取り返したいと思ってた」
 俺たちは初めて大里の本心を聞くこととなった。

「それが二人に近づいた初めの理由。でも、一緒に遊ぶうちに楽しいって思い始めてた」
 葵は頬杖をつき、大里を見つめている。
「俺、今まで友達いなかったしさ。自分に近づく奴らは、なんらかの利益を求めてたし。彩都は違うけどな」
「黒川くん、いい子だよね」
 久隆が相づちを打つ。
「二人と一緒にいるうちに、久隆の大切なその世界を守りたいって思い始めてた。だからパーティーの時、霧島が大変だって聞いて俺が一人でなんとかしなきゃって思った」

 正直、咲夜は大里から敵意を向けられていることに気づいてはいた。しかし、あの日廊下で他の生徒から守ろうとしてくれたのを知り、彼が悪い人だとは思えなかったのだ。だからこそ、彼からの昼食の誘いを承諾したのだが。何故かあの時、誘った本人のほうが咲夜の反応に不思議そうな顔しており、そのことが印象に残った。

「みんなに話さず、一人で行動したからこういう結果になった。だから、久隆が辛いこと話してくれたのは嬉しい。片倉たちが仲間だと思ってくれることも」
「大里だけが悪いわけじゃない。当事者なのに、俺は何も知らなかった」
 と葵が顔を歪め、
「これからは、一人で悩まないでみんなで解決してゆこうよ」
 と続けた彼の提案にみな頷いた。
「よし、一旦帰ろ」
「あのさ」
 立ち上がろうとした時、大里が切り出す。
「この間のオール楽しかった。また混ぜてよ」
 その言葉に咲夜たち三人は顔を見合せ、
「もちろん!」
 と三人は同時にそう大里に返事をする。綺麗にハモった事にみなで笑い合った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

とろとろ【R18短編集】

ちまこ。
BL
ねっとり、じっくりと。 とろとろにされてます。 喘ぎ声は可愛いめ。 乳首責め多めの作品集です。

真・身体検査

RIKUTO
BL
とある男子高校生の身体検査。 特別に選出されたS君は保健室でどんな検査を受けるのだろうか?

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

ドSな義兄ちゃんは、ドMな僕を調教する

天災
BL
 ドSな義兄ちゃんは僕を調教する。

部室強制監獄

裕光
BL
 夜8時に毎日更新します!  高校2年生サッカー部所属の祐介。  先輩・後輩・同級生みんなから親しく人望がとても厚い。  ある日の夜。  剣道部の同級生 蓮と夜飯に行った所途中からプチッと記憶が途切れてしまう  気づいたら剣道部の部室に拘束されて身動きは取れなくなっていた  現れたのは蓮ともう1人。  1個上の剣道部蓮の先輩の大野だ。  そして大野は裕介に向かって言った。  大野「お前も肉便器に改造してやる」  大野は蓮に裕介のサッカーの練習着を渡すと中を開けて―…  

受け付けの全裸お兄さんが店主に客の前で公開プレイされる大人の玩具専門店

ミクリ21 (新)
BL
大人の玩具専門店【ラブシモン】を営む執事服の店主レイザーと、受け付けの全裸お兄さんシモンが毎日公開プレイしている話。

おしっこ8分目を守りましょう

こじらせた処女
BL
 海里(24)がルームシェアをしている新(24)のおしっこ我慢癖を矯正させるためにとあるルールを設ける話。

処理中です...