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────2章『宝船と戦艦』
■1「嵐の予感」
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****♡Side・久隆
その日、久隆は父に会いに大崎グループ本社の社長室にいた。何度来ても異質な部屋で“なんなんだ、AV顔負けのこのポスターは“とところ狭しと壁に貼られた肌色の多いポスターを見上げ、久隆はげんなりする。
真面目に考えることを諦め、
「親父、頼みがあるんだ」
久隆が父にそう切り出すと、
「パパって呼んでっていつもいってるでしょ!」
と、駄々をこねられた。
「パパって呼んでくれたら、久隆がして欲しいことなんでもしてあげる。欲しいものなんでもあげる」
言動が変態だ、まるでパトロンのよう。しかし今日は、屈辱に耐え父の言うことに従わければ、ならない。事態は急を要した。
「パパ」
「!」
いつもなら絶対にいうことを聞かないのに、と父はびっくりしている。久隆とて、こんな羞恥にまみれた言動は望んでいない。だが、
「良い子だね、どうしたの?ここに座りなさい」
と父が調子に乗る。彼は黙っていればカッコいいし、モテるのだろうが、口を開けばただのクレイジーな変態。
「うん」
高校一年生にもなって、父にお膝抱っこされるなんて、屈辱以外の何物でもないが我慢するしかない。
俺には今、守らなければならないものがある。
それは決してプライドなんかじゃない。
「パパ?」
可愛らしく甘えてみる、反吐が出そうだ。
「久隆、なんだい?」
なんでこんな屈辱を味あわなければならないのか、きっと顔が童顔過ぎるせいだ。未だに時々小学生と間違えられることもしばしばで。
「あのね」
「なんでも言ってごらん?パパがなんでもしてあげるよ」
怖い男だ。何故、息子相手に権力や金の力を見せつけたいのか、久隆には未だにわからない。
父ちゃんはすごいんだそー!
ってやつだろうか?
「俺に、もし何かあったら」
そんなことは無いに越したことはないが。
「え?」
「咲夜と葵ちゃんを守って欲しい」
それがここへ来た要件だ。
「何か?」
反芻する父に、久隆は唇を噛み締める。
「大里を本気にさせたみたいだ」
自分は舐めてかかっていた、大里に。
「ああ」
父にはなんのことかすんなり分かったようで。
「そろそろ、こっちも本気で迎え撃つ必要があるかもしれない」
久隆は和の忠告を軽視していた。
「もし、あの二人に危害を加える気なら、俺は一人で立ち向かう。その覚悟もある」
と、久隆は続けて。自分には愛しい咲夜と初めての友人である葵を守る義務がある。二人を私事に巻き込んだのは、自分なのだから。
「久隆、二人のことは任せなさい」
今の久隆には父の返答が、心強かった。
「うん」
「それよりも、常に和を側に置くこと。いいね?」
「なるべくそうするよ」
真剣な眼差しに変わった父は、最愛の息子である久隆を抱き締める。
「大丈夫だ、久隆は僕の自慢の息子だ」
「...」
「大丈夫だよ」
たまに真面目だと、逆に怖いと言うことは黙っていようと久隆は固く誓うのだった。
その日、久隆は父に会いに大崎グループ本社の社長室にいた。何度来ても異質な部屋で“なんなんだ、AV顔負けのこのポスターは“とところ狭しと壁に貼られた肌色の多いポスターを見上げ、久隆はげんなりする。
真面目に考えることを諦め、
「親父、頼みがあるんだ」
久隆が父にそう切り出すと、
「パパって呼んでっていつもいってるでしょ!」
と、駄々をこねられた。
「パパって呼んでくれたら、久隆がして欲しいことなんでもしてあげる。欲しいものなんでもあげる」
言動が変態だ、まるでパトロンのよう。しかし今日は、屈辱に耐え父の言うことに従わければ、ならない。事態は急を要した。
「パパ」
「!」
いつもなら絶対にいうことを聞かないのに、と父はびっくりしている。久隆とて、こんな羞恥にまみれた言動は望んでいない。だが、
「良い子だね、どうしたの?ここに座りなさい」
と父が調子に乗る。彼は黙っていればカッコいいし、モテるのだろうが、口を開けばただのクレイジーな変態。
「うん」
高校一年生にもなって、父にお膝抱っこされるなんて、屈辱以外の何物でもないが我慢するしかない。
俺には今、守らなければならないものがある。
それは決してプライドなんかじゃない。
「パパ?」
可愛らしく甘えてみる、反吐が出そうだ。
「久隆、なんだい?」
なんでこんな屈辱を味あわなければならないのか、きっと顔が童顔過ぎるせいだ。未だに時々小学生と間違えられることもしばしばで。
「あのね」
「なんでも言ってごらん?パパがなんでもしてあげるよ」
怖い男だ。何故、息子相手に権力や金の力を見せつけたいのか、久隆には未だにわからない。
父ちゃんはすごいんだそー!
ってやつだろうか?
「俺に、もし何かあったら」
そんなことは無いに越したことはないが。
「え?」
「咲夜と葵ちゃんを守って欲しい」
それがここへ来た要件だ。
「何か?」
反芻する父に、久隆は唇を噛み締める。
「大里を本気にさせたみたいだ」
自分は舐めてかかっていた、大里に。
「ああ」
父にはなんのことかすんなり分かったようで。
「そろそろ、こっちも本気で迎え撃つ必要があるかもしれない」
久隆は和の忠告を軽視していた。
「もし、あの二人に危害を加える気なら、俺は一人で立ち向かう。その覚悟もある」
と、久隆は続けて。自分には愛しい咲夜と初めての友人である葵を守る義務がある。二人を私事に巻き込んだのは、自分なのだから。
「久隆、二人のことは任せなさい」
今の久隆には父の返答が、心強かった。
「うん」
「それよりも、常に和を側に置くこと。いいね?」
「なるべくそうするよ」
真剣な眼差しに変わった父は、最愛の息子である久隆を抱き締める。
「大丈夫だ、久隆は僕の自慢の息子だ」
「...」
「大丈夫だよ」
たまに真面目だと、逆に怖いと言うことは黙っていようと久隆は固く誓うのだった。
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