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第29話:連理と零夜の生徒救出
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外に出てみると、こちらもステージ内同様普段よりも少し暗くなっていた。が、ダンジョンが作った照明のアーティファクトが完全には消えていない上、空間が狭いため、戦えないほどではない。
入口周辺はそこそこ落ち着いているが、入口に続く通路の方には未だ多くの生徒と魔物がごった返していた。
「おいおい、本当に大変なことになってるんだな――って零夜!?」
すると、突然スキルを発動して前方に転移した零夜に対し、連理が驚いて声を上げた。
零夜は魔物が居るところまで走り出し、生徒を襲っていたウサギ型の魔物をナイフで討伐した。
さらに間髪入れずに周囲を確認し、周囲に居たウサギの魔物をナイフで両断していた。
「アイツはっえぇな……っと、俺も行かないとな」
そう言って連理は炎の剣を展開し、走り出した。
「うわ……本物だ……」
零夜に助けられた生徒が、そんな言葉を漏らした。
「おい、『うわ』ってなんだ。『うわ』って」
「す、すまん……」
「とりあえず、ステージ部屋の位置は分かるよな? そっちは今安全だから、そっちに行った方がいいぞ」
「わ、分かった。助かる」
そう言うと、彼はどこかおぼつかない足取りでステージ部屋の方に向かった。
それから、連理は零夜に追いつき、声を掛けた。
「よっ、救助に精を出すのもいいが、それじゃ俺がついてけんぞ」
苦笑いしながら連理は言った。
「す、すまん……なんだか、昔のことを思い出してな。居ても立っても居られなくなったんだ」
零夜は自身のナイフを眺め、何かを憂うような表情を浮かべた。
昔のこと、というのは彼の両親がダンジョン内で死んだことだろう。様々なイレギュラーが起こり、ダンジョンから出られなくなっている今の状況は、どこか当時とかぶるものがあるのかもしれない。
「なるほどな――っと、危ない」
連理はそう言って零夜の後ろに居た狼の魔物を炎の剣で両断した。
「っ、居たのか。ありがとう、助かった」
連理は、生徒に攻撃が当たらないよう注意しながら、さらに周囲に居た魔物の討伐を進める。
それから、零夜に向き直らないまま連理は語り始めた。
「零夜のそういうとこ、俺は嫌いじゃないけどな」
「……何がだ?」
突然そう言われて、零夜は困惑気味に返した。
「自分の昔の嫌だった経験を、他人にさせないように、真っ直ぐ、ただひたすらに努力できるところだよ」
「……そんなに、大したことじゃない。それに、連理だって『楽しい』を広める配信を続けられてるじゃないか」
零夜も同じく、魔物を討伐しながらも連理に話していた。
背中合わせで、お互いを援護するように二人は魔物を倒していった。
「あれは、正直打算混じりなんだよ。単純に小遣い稼ぎがしたいとか、注目を集めたいとか、そういう類のさ。でも、零夜はそういうのがないから、俺はすごいと思うんだ」
背中越しの会話だったが、それでも連理が嘘を吐いていないことは声色からなんとなく予想できた。零夜はなんと返せばいいか分からなくて、一瞬沈黙する。
一拍置いてから、一番良いと思うだろう結論を出した。
「――そうか、ありがとう」
「……おうよ!」
その言葉に、連理は元気よく返事し、一帯に居る最後の魔物を討伐した。
どうやら、それでこの辺りの魔物は大体倒し終わったようだ。
そこかしこに腰を抜かした生徒は居るが、軽く声をかければ問題ないだろう。
「アナウンスも聞こえたと思うが、今のところステージは安全な空間になってる。みんなそっちに行ってくれ!」
不思議そうな顔をするもの、ハッとして走り出すもの、様々な生徒が居たが、ともかくここはなんとなかりそうだ。
「さて、この辺はもういいだろ。入口の方が崩落してるみたいだし、今度はそっちに向かおう。瓦礫に挟まれている人も、もしかしたら居るかもしれない」
「了解した」
◇
階段を登ると、そこは明るい空間だった。どうやら、魔力や電力を使う道具をショートさせる魔道具の効果も、ここまでは届いていなかったようだ。
また、奥にはダンジョン改札口が見えた。
少し目を凝らしてみると、入口そのものは崩落に巻き込まれていないことが分かった。
「改札口は巻き込まれていないんだな」
「ダンガーの転移は手前のはず。これであれば、ダンガーが発動しても生き埋めになることはなさそうだな」
零夜はそれを見てホッと胸をなでおろした。
「ま、崩落した場所にダンガーが発動したとして、生き埋めになるのかは分からないんだけどな」
「確かにそうだが――何が起こるか分からないからこそ危険、ということもあるだろう」
「……確かにそうじゃん」
連理は至極真剣な表情でそう呟いた。
「分かってなかったのか……まあいい、行くぞ」
そう言うと零夜と連理は走り出した。
入口に近づいていくにつれて、改札口周辺の様子が鮮明になっていく。
どうやら、入口付近には魔物がかなりの数集まっているようだ。さらに、生徒たちがその魔物に追い詰められるようにして改札側に集まっていた。
「このっ――!」
一人の生徒が勇気を振り絞って突撃を仕掛けるが、その拳は空を切った。
さらにそのせいで体勢を崩してしまい、魔物集団の中に居た狼の魔物に噛みつかれそうになった。
その瞬間、その生徒の前に零夜が出現した。
スキルの効果だろう。
「はっ!」
ナイフを一振りすると、狼の魔物に致命的な一撃を与えた。
「あ、あんたは――!?」
「助けに来た――みんなは下がっててくれ」
零夜は他の生徒を下がらせながら、魔物に向き直った。
しかし、あまりにも数が多い。
ざっと見て、二十体強は居る。地べた型の狼や猪や、飛行型のコウモリなど、様々な魔物が居た。
それを見て、零夜はまずポケットから魔石を取り出すと、すぐにそれをナイフで斬った。
すると、ナイフは淡い赤色の光を帯びた。
「――これでも喰らえっ!」
零夜はそのナイフで飛びかかってきた狼を斬りつけると、赤い斬撃が飛翔し、さらに後方に居た狼までをも負傷させた。
零夜はさらに一、二とナイフを振り、狼の魔物を撃退していく。
合計三回振ったところで、ナイフの赤い光は消滅していた。
「す、すげぇ……」
「よっと! 俺も居るぞ!」
炎の剣を振りかぶりながら、連理が登場した。
「アイツ……アオバか!」
一人の生徒が声を上げた。
「その通り! あの配信者の青葉連理でございます! さあ逃げた逃げた! コイツらは俺がやっとくから、みんなはステージ部屋に逃げてくれ!」
その言葉とともに、連理はアークキャスター――アーティファクトの銃を構え、魔物に撃ち込んでいく。
レーザーが飛来し、飛行型のコウモリの魔物を次々と撃ち抜いていった。
「わ、分かりました!」
生徒達は連理が作った逃げ道を通って、そのままステージ部屋に向かっていった。
「あとはコイツらを倒すだけか。一応集団戦は苦手なんだがな」
「だが、それほど難しくはないだろう?」
「だな――まあ、余裕だろ」
連理がニッと不敵な笑みを浮かべた。
~あとがき~
今夜は二話連続更新スペシャルです!
……とはいえ、以前更新をサボったことに対する埋め合わせでしかないのですが。
それに、これ以上ペースを落とすと3月中に完結するかかなり怪しくなってしまいますからね。すでに怪しいのにな。
……さ、さて。それでは今回はお楽しみいただけたでしょうか?
面白かった、と思ってくださった方は、お気に入り登録などなどお願いいたします! また、コメントについてもしてくださるととても喜びます! 「面白かった!」程度の短いものでも大歓迎です!
気が向いた方は、ぜひぜひよろしくお願いします!
それでは、また来週お会いしましょう!
最後までお読みいただき本当にありがとうございました!
入口周辺はそこそこ落ち着いているが、入口に続く通路の方には未だ多くの生徒と魔物がごった返していた。
「おいおい、本当に大変なことになってるんだな――って零夜!?」
すると、突然スキルを発動して前方に転移した零夜に対し、連理が驚いて声を上げた。
零夜は魔物が居るところまで走り出し、生徒を襲っていたウサギ型の魔物をナイフで討伐した。
さらに間髪入れずに周囲を確認し、周囲に居たウサギの魔物をナイフで両断していた。
「アイツはっえぇな……っと、俺も行かないとな」
そう言って連理は炎の剣を展開し、走り出した。
「うわ……本物だ……」
零夜に助けられた生徒が、そんな言葉を漏らした。
「おい、『うわ』ってなんだ。『うわ』って」
「す、すまん……」
「とりあえず、ステージ部屋の位置は分かるよな? そっちは今安全だから、そっちに行った方がいいぞ」
「わ、分かった。助かる」
そう言うと、彼はどこかおぼつかない足取りでステージ部屋の方に向かった。
それから、連理は零夜に追いつき、声を掛けた。
「よっ、救助に精を出すのもいいが、それじゃ俺がついてけんぞ」
苦笑いしながら連理は言った。
「す、すまん……なんだか、昔のことを思い出してな。居ても立っても居られなくなったんだ」
零夜は自身のナイフを眺め、何かを憂うような表情を浮かべた。
昔のこと、というのは彼の両親がダンジョン内で死んだことだろう。様々なイレギュラーが起こり、ダンジョンから出られなくなっている今の状況は、どこか当時とかぶるものがあるのかもしれない。
「なるほどな――っと、危ない」
連理はそう言って零夜の後ろに居た狼の魔物を炎の剣で両断した。
「っ、居たのか。ありがとう、助かった」
連理は、生徒に攻撃が当たらないよう注意しながら、さらに周囲に居た魔物の討伐を進める。
それから、零夜に向き直らないまま連理は語り始めた。
「零夜のそういうとこ、俺は嫌いじゃないけどな」
「……何がだ?」
突然そう言われて、零夜は困惑気味に返した。
「自分の昔の嫌だった経験を、他人にさせないように、真っ直ぐ、ただひたすらに努力できるところだよ」
「……そんなに、大したことじゃない。それに、連理だって『楽しい』を広める配信を続けられてるじゃないか」
零夜も同じく、魔物を討伐しながらも連理に話していた。
背中合わせで、お互いを援護するように二人は魔物を倒していった。
「あれは、正直打算混じりなんだよ。単純に小遣い稼ぎがしたいとか、注目を集めたいとか、そういう類のさ。でも、零夜はそういうのがないから、俺はすごいと思うんだ」
背中越しの会話だったが、それでも連理が嘘を吐いていないことは声色からなんとなく予想できた。零夜はなんと返せばいいか分からなくて、一瞬沈黙する。
一拍置いてから、一番良いと思うだろう結論を出した。
「――そうか、ありがとう」
「……おうよ!」
その言葉に、連理は元気よく返事し、一帯に居る最後の魔物を討伐した。
どうやら、それでこの辺りの魔物は大体倒し終わったようだ。
そこかしこに腰を抜かした生徒は居るが、軽く声をかければ問題ないだろう。
「アナウンスも聞こえたと思うが、今のところステージは安全な空間になってる。みんなそっちに行ってくれ!」
不思議そうな顔をするもの、ハッとして走り出すもの、様々な生徒が居たが、ともかくここはなんとなかりそうだ。
「さて、この辺はもういいだろ。入口の方が崩落してるみたいだし、今度はそっちに向かおう。瓦礫に挟まれている人も、もしかしたら居るかもしれない」
「了解した」
◇
階段を登ると、そこは明るい空間だった。どうやら、魔力や電力を使う道具をショートさせる魔道具の効果も、ここまでは届いていなかったようだ。
また、奥にはダンジョン改札口が見えた。
少し目を凝らしてみると、入口そのものは崩落に巻き込まれていないことが分かった。
「改札口は巻き込まれていないんだな」
「ダンガーの転移は手前のはず。これであれば、ダンガーが発動しても生き埋めになることはなさそうだな」
零夜はそれを見てホッと胸をなでおろした。
「ま、崩落した場所にダンガーが発動したとして、生き埋めになるのかは分からないんだけどな」
「確かにそうだが――何が起こるか分からないからこそ危険、ということもあるだろう」
「……確かにそうじゃん」
連理は至極真剣な表情でそう呟いた。
「分かってなかったのか……まあいい、行くぞ」
そう言うと零夜と連理は走り出した。
入口に近づいていくにつれて、改札口周辺の様子が鮮明になっていく。
どうやら、入口付近には魔物がかなりの数集まっているようだ。さらに、生徒たちがその魔物に追い詰められるようにして改札側に集まっていた。
「このっ――!」
一人の生徒が勇気を振り絞って突撃を仕掛けるが、その拳は空を切った。
さらにそのせいで体勢を崩してしまい、魔物集団の中に居た狼の魔物に噛みつかれそうになった。
その瞬間、その生徒の前に零夜が出現した。
スキルの効果だろう。
「はっ!」
ナイフを一振りすると、狼の魔物に致命的な一撃を与えた。
「あ、あんたは――!?」
「助けに来た――みんなは下がっててくれ」
零夜は他の生徒を下がらせながら、魔物に向き直った。
しかし、あまりにも数が多い。
ざっと見て、二十体強は居る。地べた型の狼や猪や、飛行型のコウモリなど、様々な魔物が居た。
それを見て、零夜はまずポケットから魔石を取り出すと、すぐにそれをナイフで斬った。
すると、ナイフは淡い赤色の光を帯びた。
「――これでも喰らえっ!」
零夜はそのナイフで飛びかかってきた狼を斬りつけると、赤い斬撃が飛翔し、さらに後方に居た狼までをも負傷させた。
零夜はさらに一、二とナイフを振り、狼の魔物を撃退していく。
合計三回振ったところで、ナイフの赤い光は消滅していた。
「す、すげぇ……」
「よっと! 俺も居るぞ!」
炎の剣を振りかぶりながら、連理が登場した。
「アイツ……アオバか!」
一人の生徒が声を上げた。
「その通り! あの配信者の青葉連理でございます! さあ逃げた逃げた! コイツらは俺がやっとくから、みんなはステージ部屋に逃げてくれ!」
その言葉とともに、連理はアークキャスター――アーティファクトの銃を構え、魔物に撃ち込んでいく。
レーザーが飛来し、飛行型のコウモリの魔物を次々と撃ち抜いていった。
「わ、分かりました!」
生徒達は連理が作った逃げ道を通って、そのままステージ部屋に向かっていった。
「あとはコイツらを倒すだけか。一応集団戦は苦手なんだがな」
「だが、それほど難しくはないだろう?」
「だな――まあ、余裕だろ」
連理がニッと不敵な笑みを浮かべた。
~あとがき~
今夜は二話連続更新スペシャルです!
……とはいえ、以前更新をサボったことに対する埋め合わせでしかないのですが。
それに、これ以上ペースを落とすと3月中に完結するかかなり怪しくなってしまいますからね。すでに怪しいのにな。
……さ、さて。それでは今回はお楽しみいただけたでしょうか?
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