魔性男子はモテたくない

月華

文字の大きさ
上 下
48 / 52
2.消えた平穏

お昼だよ

しおりを挟む
***


 教室に戻り授業を受け、休み時間は即ベランダに隠れるを繰り返して花菱を避けていたらようやくの昼。なんでただ日々を過ごすのにこんな苦労しなければならないのか。全くもって遺憾である。
 昼はどうしようかなと思いつつ教科書やらを片していたら、ふと前方が陰った。


「岬、一緒にお昼食べない?」


 流星である。


「え、な、なんで……?」


 これまで一度たりとも昼食に誘われたことなどないし、目立つからお断りしたい。と、思っていたのに厄介な奴がまたひとり。


「いいじゃん! 一緒に行こう! あ、俺も一緒でいい!?」


 腐男子こと道添がウザいことこの上ないテンションでぴょんとやってきた。勝手に流星からのお誘いに了承しないで欲しいし、なに勝手に一緒に行く流れ作ってんだ! 
 なんか、この流れで断ったら嫌な感じになるじゃん!


「ほら、あの転校生にまた絡まれたりしても厄介でしょ? 一緒にいた方がいいのかなって」


 と、流星は邪気のない笑顔で「いいでしょ?」と言いたげに軽く首を傾げた。うん、そんな仕草も決まってます。そして、それを言われたら確かにそうかもしれないと思ってしまう自分がいる。
 花菱はす~ぐ人を攫おうとする厄介な奴なので、誰か一緒にいた方が、かつ花菱を止めるガッツを持っていそうな人がいた方がいいのは事実。流星はサッカー部でそれなりに筋肉もあるし、ひょろい道添はともかくきっと牽制になる。


「岬、飯行くぞ」


 そんなことを考えていたら秀が追加された。なんで? 一緒に行くとかいうのって登校時だけじゃなかったっけ? 一緒に飯食おうぜ! みたいなキャラだったっけ?


「ギャー! 兼崎クンじゃん! え、岬同志……え!? 爽やか君に一匹狼とかまじ王道すぎでは……!? なにこの神展開!」
「道添くん……静かにしようか」


 この空気を読まない腐男子のせいで断るタイミングを逃してしまった俺は、なぜか最高に目立つ流星と秀を交えて食堂に行くことになってしまった。
 うーん、どうしてこうなった。


「秀……なんでお前まで」
「いいだろ、この際」
「なにがこの際なのかよくわかんないんだけど」


 流星と道添には聞こえない音量で秀に問いただすも、ひょいと前を向かれてしまった。もう答える気はないらしい。なんたる横暴。
 正直俺は、購買でパンでも買ってひっそり数II準備室にでも行こうかと思っていた。だから対花菱への気遣いはありがたいが無用なのである。だって、すでに視線が痛い。仕方がないので前方を歩く道添を引っ張り、さらに一歩下がる。前に流星と秀、後ろに俺と道添というもしかしたら一緒に歩いているのではなくただ行く方向が同じなだけなのでは? と思えなくもない布陣である。
 道添は「え、なんで!?」と俺の行動に目を丸くしていたが、目の前の珍しいイケメン2人の組み合わせにすぐ意識は持っていかれたらしい。「一匹狼×爽やか君もアリ!」とはしゃいでいる。目の前に餌があればそこに全集中するという点では非常に扱いやすい。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生したら、ラスボス様が俺の婚約者だった!!

ミクリ21
BL
前世で、プレイしたことのあるRPGによく似た世界に転生したジオルド。 ゲームだったとしたら、ジオルドは所謂モブである。 ジオルドの婚約者は、このゲームのラスボスのシルビアだ。 笑顔で迫るヤンデレラスボスに、いろんな意味でドキドキしているよ。 「ジオルド、浮気したら………相手を拷問してから殺しちゃうぞ☆」

悪役令嬢の双子の兄

みるきぃ
BL
『魅惑のプリンセス』というタイトルの乙女ゲームに転生した俺。転生したのはいいけど、悪役令嬢の双子の兄だった。

病んでる愛はゲームの世界で充分です!

書鈴 夏(ショベルカー)
BL
ヤンデレゲームが好きな平凡男子高校生、田山直也。 幼馴染の一条翔に呆れられながらも、今日もゲームに勤しんでいた。 席替えで隣になった大人しい目隠れ生徒との交流を始め、周りの生徒たちから重い愛を現実でも向けられるようになってしまう。 田山の明日はどっちだ!! ヤンデレ大好き普通の男子高校生、田山直也がなんやかんやあってヤンデレ男子たちに執着される話です。 BL大賞参加作品です。よろしくお願いします。

ヤンデレ化していた幼稚園ぶりの友人に食べられました

ミルク珈琲
BL
幼稚園の頃ずっと後ろを着いてきて、泣き虫だった男の子がいた。 「優ちゃんは絶対に僕のものにする♡」 ストーリーを分かりやすくするために少しだけ変更させて頂きましたm(_ _)m ・洸sideも投稿させて頂く予定です

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

超絶美形な俺がBLゲームに転生した件

抹茶ごはん
BL
同性婚が当たり前に認められている世界観のBLゲーム、『白い薔薇は愛の象徴となり得るか』略して白薔薇の攻略対象キャラである第二王子、その婚約者でありゲームでは名前も出てこないモブキャラだったミレクシア・サンダルフォンに生まれ変わった美麗は憤怒した。 何故なら第二王子は婚約者がいながらゲームの主人公にひとめぼれし、第二王子ルートだろうが他のルートだろうが勝手に婚約破棄、ゲームの主人公にアピールしまくる恋愛モンスターになるのだ。…俺はこんなに美形なのに!! 別に第二王子のことなんて好きでもなんでもないけれど、美形ゆえにプライドが高く婚約破棄を受け入れられない本作主人公が奮闘する話。 この作品はフィクションです。実際のあらゆるものと関係ありません。

風紀“副”委員長はギリギリモブです

柚実
BL
名家の子息ばかりが集まる全寮制の男子校、鳳凰学園。 俺、佐倉伊織はその学園で風紀“副”委員長をしている。 そう、“副”だ。あくまでも“副”。 だから、ここが王道学園だろうがなんだろうが俺はモブでしかない────はずなのに! BL王道学園に入ってしまった男子高校生がモブであろうとしているのに、主要キャラ達から逃げられない話。

勇者パーティーハーレム!…の荷物番の俺の話

バナナ男さん
BL
突然異世界に召喚された普通の平凡アラサーおじさん< 山野 石郎 >改め【 イシ 】 世界を救う勇者とそれを支えし美少女戦士達の勇者パーティーの中・・俺の能力、ゼロ!あるのは訳の分からない< 覗く >という能力だけ。 これは、ちょっとしたおじさんイジメを受けながらもマイペースに旅に同行する荷物番のおじさんと、世界最強の力を持った勇者様のお話。 無気力、性格破綻勇者様 ✕ 平凡荷物番のおじさんのBLです。 不憫受けが書きたくて書いてみたのですが、少々意地悪な場面がありますので、どうかそういった表現が苦手なお方はご注意ください_○/|_ 土下座!

処理中です...