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2.消えた平穏
爽やかなイケメン委員長
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マスクをしているから意味はないだろうが、ヘラっと口元に笑みを作って軽く頭を下げつつ、気持ち早足で生徒会室の大きな扉へ向かった。役員たちには完全に背を向けても、グサグサと視線が背中に刺さっているのを感じる。もうこんなところ二度と来るものか、と内心で叫びながら後ろ手に大扉を閉め、ようやくホッと一息を吐いた。
溜息を足元へ落とすと、寒々しい靴下のままの足が映る。昇降口まで戻らなければとさらに溜息を吐こうとしたところで、視界に上履きが入ってきたので思わず顔を上げた。
「秀——と、委員長?」
顔を上げた先には仏頂面をした秀と、困ったように眉をハの字にさせたクラス委員長・榛 流星がいた。
相手にはよく見えないだろうがキョトンと目を丸くしている俺を知ってか知らずか、秀が「おら」と言いながら足元に上履きを投げた。俺の物である。
「え、もしかして取ってきてくれたの、か?」
普通に聞きそうになって思わず焦る。そういえば何故か委員長までいるので、演技した方がいいだろう。
「あんだけダッシュしてってたからな。もしかしたらと思って見てみたらやっぱり上履き入ったままだし。つかお前、脚早すぎねぇ?」
小中学校と、俺は学年1位の俊足だった。割と長距離も得意だ。うん、そんなことはどうでもいい。
「あ、ありがとう」
本音を言えば汚いであろう靴下のままで履くのは躊躇われたが、だからと言って寮に戻って履き替える暇もないので諦める。ひんやりと冷えていた足先が、少しだけ落ち着いたような気がした。
「そう言えば……どうして委員長、が?」
おどおどとしながら榛に顔を向ける。175cmの俺とほぼ同じ身長なので、視線のぶつかり具合がどことなく近い。俺と同じS組のクラス委員長ということもあり、まぁ例外なくイケメンである。いらん腐男子情報によると抱かれたいランキング(笑)9位。なんと抱きたいランキング(笑)でも18位とかそのくらいの上位に食い込んでいる、さらりとした茶髪がなんとも爽やかな正統派美形。
「いや、自分のクラスの一人に朝っぱらから物騒な放送があったから、何事かと思って。先生に断って迎えに来たんだよ」
ニコッとした癖のない笑顔に揃った白い歯がキラリと輝く。なんというか、王子様のような雰囲気。サッカー部らしく、華奢ではない健康的な細さが身長よりも高く見える印象を与えていた。俺はあえて猫背気味にしているので、そう思うのかもしれない。
「あ、すみません……ご迷惑を……」
「そんなこと気にしないで。でも、意外だったな。兼崎君ってB組でしょ? 仲良いんだね」
アルカイックスマイルを崩さずに、榛がチラと秀を見た。1年の頃からS組で榛とは同じクラスだが、もちろん秀と行動していたことなど今日までなかったので、意外に思うのは当然だろう。
溜息を足元へ落とすと、寒々しい靴下のままの足が映る。昇降口まで戻らなければとさらに溜息を吐こうとしたところで、視界に上履きが入ってきたので思わず顔を上げた。
「秀——と、委員長?」
顔を上げた先には仏頂面をした秀と、困ったように眉をハの字にさせたクラス委員長・榛 流星がいた。
相手にはよく見えないだろうがキョトンと目を丸くしている俺を知ってか知らずか、秀が「おら」と言いながら足元に上履きを投げた。俺の物である。
「え、もしかして取ってきてくれたの、か?」
普通に聞きそうになって思わず焦る。そういえば何故か委員長までいるので、演技した方がいいだろう。
「あんだけダッシュしてってたからな。もしかしたらと思って見てみたらやっぱり上履き入ったままだし。つかお前、脚早すぎねぇ?」
小中学校と、俺は学年1位の俊足だった。割と長距離も得意だ。うん、そんなことはどうでもいい。
「あ、ありがとう」
本音を言えば汚いであろう靴下のままで履くのは躊躇われたが、だからと言って寮に戻って履き替える暇もないので諦める。ひんやりと冷えていた足先が、少しだけ落ち着いたような気がした。
「そう言えば……どうして委員長、が?」
おどおどとしながら榛に顔を向ける。175cmの俺とほぼ同じ身長なので、視線のぶつかり具合がどことなく近い。俺と同じS組のクラス委員長ということもあり、まぁ例外なくイケメンである。いらん腐男子情報によると抱かれたいランキング(笑)9位。なんと抱きたいランキング(笑)でも18位とかそのくらいの上位に食い込んでいる、さらりとした茶髪がなんとも爽やかな正統派美形。
「いや、自分のクラスの一人に朝っぱらから物騒な放送があったから、何事かと思って。先生に断って迎えに来たんだよ」
ニコッとした癖のない笑顔に揃った白い歯がキラリと輝く。なんというか、王子様のような雰囲気。サッカー部らしく、華奢ではない健康的な細さが身長よりも高く見える印象を与えていた。俺はあえて猫背気味にしているので、そう思うのかもしれない。
「あ、すみません……ご迷惑を……」
「そんなこと気にしないで。でも、意外だったな。兼崎君ってB組でしょ? 仲良いんだね」
アルカイックスマイルを崩さずに、榛がチラと秀を見た。1年の頃からS組で榛とは同じクラスだが、もちろん秀と行動していたことなど今日までなかったので、意外に思うのは当然だろう。
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