魔性男子はモテたくない

月華

文字の大きさ
上 下
26 / 52
2.消えた平穏

一緒に行こう

しおりを挟む
***


 怒涛の一日を終え、明くる日の朝。俺は新たな難問に頭を悩ませている。


「だーかーらー、大丈夫だって」
「いいじゃねぇか、一緒に登校するくらい。俺の親衛隊のことなら気にすんな」


 俺の同室者兼友人の秀が、今朝から一緒に登校しようと言い出したのだ。
 というのも、昨日鞄も忘れて速攻帰宅したにも関わらずその時には既に帰宅していた(SHRをサボったらしい)秀は、鞄もマスクを付けることさえ忘れて帰宅した俺に、何かあったのではと問い詰めてきたのだ。
 もちろん何もなかったと話したが、ならなぜマスクを付けてないんだ、なぜ鞄なんてもんを忘れてくるんだと言われてしまったらぐうの音も出ない。仕方なく、例の転校生に追われて逃げて来たと軽く説明したらこれだ。


「俺がいた方が少しは牽制になるだろ。もし近寄って来ても、俺が相手してる間に逃げりゃいいじゃねぇか」
「……確かにそうなんだけどさあ」
「同室なんだし、俺に相談して一緒に登校してもらってるとか言やあいい」
「ぐ……確かに」


 秀の言っていることは正直、ありがたいことこの上ない。心配なのは転校生ではなく、もう一人の方。あのイカれ腐男子である。親衛隊持ちの秀と一緒に登校なんてしたら、絶対に煩い。絶対に絶対に絡んでくるに違いないのだ。
 同室が秀だとはとっくに知られているものの、一切喋らない、関わりはほとんどないと嘘を吐いているので、そこも突っ込まれそうで怖い。
 ……だが。道添は確かにウザいし面倒臭いが、俺の貞操に害はない。対して、あの転校生は純粋な力では敵いそうにないことが分かったし、確実に貞操が危うい。
 グググ、と歯ぎしりを殺しつつ、大きく息を吐いた。


「……お願いします」
「分かりゃいいんだよ。おら、行くぞ」


 ふん、と勝ち誇った顔で笑う秀にマスクの下で苦笑しつつ、靴を履いた(ちなみに玄関で言い合っていた)。


「で、相手はどんな奴だって?」
「黒毬藻」
「それ以外だよ」
「瓶底メガネ。デカい」
「見りゃ分かるか?」
「分かると思うよ、変に目立ってっから」


 どことなくいつもより機嫌の良さそうな秀が、なるほどな、と呟いた。タッパは黒毬藻の方があるけれど、力は秀の方があるんじゃないだろうか。なんせ格闘一家のスパルタ教育だし。秀ならそう打ち負かされる心配もないので、そういった点でも安心だ。


「悪いな、秀」


 もう室外なので、小さめに話しかける。


「お前のせいじゃないだろ」
「んー……だけど、面倒な事に巻き込んだ」
「別に、面倒じゃねぇよ」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

アイテムボックスだけで異世界生活

shinko
ファンタジー
いきなり異世界で目覚めた主人公、起きるとなぜか記憶が無い。 あるのはアイテムボックスだけ……。 なぜ、俺はここにいるのか。そして俺は誰なのか。 説明してくれる神も、女神もできてやしない。 よくあるファンタジーの世界の中で、 生きていくため、努力していく。 そしてついに気がつく主人公。 アイテムボックスってすごいんじゃね? お気楽に読めるハッピーファンタジーです。 よろしくお願いします。

生徒会長親衛隊長を辞めたい!

佳奈
BL
私立黎明学園という全寮制男子校に通っている鮎川頼は幼なじみの生徒会長の親衛隊長をしている。 その役職により頼は全校生徒から嫌われていたがなんだかんだ平和に過ごしていた。 しかし季節外れの転校生の出現により大混乱発生 面倒事には関わりたくないけどいろんなことに巻き込まれてしまう嫌われ親衛隊長の総愛され物語! 嫌われ要素は少なめです。タイトル回収まで気持ち長いかもしれません。 一旦考えているところまで不定期更新です。ちょくちょく手直ししながら更新したいと思います。 *王道学園の設定を使用してるため設定や名称などが被りますが他作品などとは関係ありません。全てフィクションです。 素人の文のため暖かい目で見ていただけると幸いです。よろしくお願いします。

【完結】出会いは悪夢、甘い蜜

琉海
BL
憧れを追って入学した学園にいたのは運命の番だった。 アルファがオメガをガブガブしてます。

室長サマの憂鬱なる日常と怠惰な日々

BL
SECRET OF THE WORLD シリーズ《僕の名前はクリフェイド・シュバルク。僕は今、憂鬱すぎて溜め息ついている。なぜ、こうなったのか…。 ※シリーズごとに章で分けています。 ※タイトル変えました。 トラブル体質の主人公が巻き込み巻き込まれ…の問題ばかりを起こし、周囲を振り回す物語です。シリアスとコメディと半々くらいです。 ファンタジー含みます。

俺にはラブラブな超絶イケメンのスパダリ彼氏がいるので、王道学園とやらに無理やり巻き込まないでくださいっ!!

しおりんごん
BL
俺の名前は 笹島 小太郎 高校2年生のちょっと激しめの甘党 顔は可もなく不可もなく、、、と思いたい 身長は170、、、行ってる、、、し ウルセェ!本人が言ってるんだからほんとなんだよ! そんな比較的どこにでもいそうな人柄の俺だが少し周りと違うことがあって、、、 それは、、、 俺には超絶ラブラブなイケメン彼氏がいるのだ!!! 容姿端麗、文武両道 金髪碧眼(ロシアの血が多く入ってるかららしい) 一つ下の学年で、通ってる高校は違うけど、一週間に一度は放課後デートを欠かさないそんなスパダリ完璧彼氏! 名前を堂坂レオンくん! 俺はレオンが大好きだし、レオンも俺が大好きで (自己肯定感が高すぎるって? 実は付き合いたての時に、なんで俺なんか、、、って1人で考えて喧嘩して 結局レオンからわからせという名のおしお、(re 、、、ま、まぁレオンからわかりやすすぎる愛情を一思いに受けてたらそりゃ自身も出るわなっていうこと!) ちょうどこの春レオンが高校に上がって、それでも変わりないラブラブな生活を送っていたんだけど なんとある日空から人が降って来て! ※ファンタジーでもなんでもなく、物理的に降って来たんだ 信じられるか?いや、信じろ 腐ってる姉さんたちが言うには、そいつはみんな大好き王道転校生! 、、、ってなんだ? 兎にも角にも、そいつが現れてから俺の高校がおかしくなってる? いやなんだよ平凡巻き込まれ役って! あーもう!そんな睨むな!牽制するな! 俺には超絶ラブラブな彼氏がいるからそっちのいざこざに巻き込まないでくださいっ!!! ※主人公は固定カプ、、、というか、初っ端から2人でイチャイチャしてるし、ずっと変わりません ※同姓同士の婚姻が認められている世界線での話です ※王道学園とはなんぞや?という人のために一応説明を載せていますが、私には文才が圧倒的に足りないのでわからないままでしたら、他の方の作品を参照していただきたいです🙇‍♀️ ※シリアスは皆無です 終始ドタバタイチャイチャラブコメディでおとどけします

王道にはしたくないので

八瑠璃
BL
国中殆どの金持ちの子息のみが通う、小中高一貫の超名門マンモス校〈朱鷺学園〉 幼少の頃からそこに通い、能力を高め他を率いてきた生徒会長こと鷹官 仁。前世知識から得た何れ来るとも知れぬ転校生に、平穏な日々と将来を潰されない為に日々努力を怠らず理想の会長となるべく努めてきた仁だったが、少々やり過ぎなせいでいつの間にか大変なことになっていた_____。 これは、やりすぎちまった超絶カリスマ生徒会長とそんな彼の周囲のお話である。

またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。

朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。 婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。 だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。 リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。 「なろう」「カクヨム」に投稿しています。

悪役令息の兄には全てが視えている

翡翠飾
BL
「そういえば、この間臣麗くんにお兄さんが居るって聞きました!意外です、てっきり臣麗くんは一人っ子だと思っていたので」 駄目だ、それを言っては。それを言ったら君は───。 大企業の御曹司で跡取りである美少年高校生、神水流皇麗。彼はある日、噂の編入生と自身の弟である神水流臣麗がもめているのを止めてほしいと頼まれ、そちらへ向かう。けれどそこで聞いた編入生の言葉に、酷い頭痛を覚え前世の記憶を思い出す。 そして彼は気付いた、現代学園もののファンタジー乙女ゲームに転生していた事に。そして自身の弟は悪役令息。自殺したり、家が没落したり、殺人鬼として少年院に入れられたり、父に勘当されキャラ全員を皆殺しにしたり───?!?!しかもそんな中、皇麗はことごとく死亡し臣麗の闇堕ちに体よく使われる?! 絶対死んでたまるか、臣麗も死なせないし人も殺させない。臣麗は僕の弟、だから僕の使命として彼を幸せにする。 僕の持っている予知能力で、全てを見透してみせるから───。 けれど見えてくるのは、乙女ゲームの暗い闇で?! これは人が能力を使う世界での、予知能力を持った秀才美少年のお話。

処理中です...