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風向きの変化
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「椿田先生って端正な割には女っ気がないと思ってたけど、あんな年増を相手にするなんてかなりの悪趣味じゃない」
皆瀬川は悲鳴に近い声をあげて身震いした。安藤によると、議員と称されたあの女は元地方局のアナウンサーで、上司だった夫を秘書に持つらしい。現在二期目で、一人娘がこの春本校を卒業したという。
「どうせなら母娘、あるいは旦那様とのツーショット写真を撮って差し上げたかったです」
しっかりシャッターを切っていた安藤は、時間と共に鮮明になってきた写真をメンバーに見せた。言葉とは裏腹に、邪な現場を収めて得意げである。
「そもそも、議員の人が何用で学校に来ているんですか」
創一は質問を投げかけながら、皆と交わらず独り試験勉強をする同級生を見遣った。興味のない素振りをしているが、頁をめくる指はいつの間にか止まっている。
「確か、校舎を改築するって話があったわよねえ。それをいいことに、校長に方便を使って裏で逢瀬を重ねてるんじゃないかしら」
「議員としての実績にもなりますし、さりげなく意中の男と逢う口実もできますしね……。ましてや学校内で不倫など、誰も考えないですから」
「ついでに、娘の金沢郁未って椿田先生を妙に気に入ってたわよね。クラスの副担任だったから。その時から面識あったのよ、あの女。親子で同じ男にベタベタしてて気持ち悪いわ」
あれこれと憶測を立てる上級生をよそに、椿田は荷物を持ちそっと部室から出ていった。創一は跡を追いたい衝動に駆られたが、二者の間に挟まれた状態では気が引ける。
結局、会話に口を挟むこともできず時間だけが過ぎ、一通り噂話を聞き終わったところで解散となった。騒々しさが過ぎ、室内に残された創一はふと窓の外を見下ろす。裏庭は午後の安らぎを取り戻し、鬱陶しい雑草が蔓延っているばかりだった。
皆瀬川は悲鳴に近い声をあげて身震いした。安藤によると、議員と称されたあの女は元地方局のアナウンサーで、上司だった夫を秘書に持つらしい。現在二期目で、一人娘がこの春本校を卒業したという。
「どうせなら母娘、あるいは旦那様とのツーショット写真を撮って差し上げたかったです」
しっかりシャッターを切っていた安藤は、時間と共に鮮明になってきた写真をメンバーに見せた。言葉とは裏腹に、邪な現場を収めて得意げである。
「そもそも、議員の人が何用で学校に来ているんですか」
創一は質問を投げかけながら、皆と交わらず独り試験勉強をする同級生を見遣った。興味のない素振りをしているが、頁をめくる指はいつの間にか止まっている。
「確か、校舎を改築するって話があったわよねえ。それをいいことに、校長に方便を使って裏で逢瀬を重ねてるんじゃないかしら」
「議員としての実績にもなりますし、さりげなく意中の男と逢う口実もできますしね……。ましてや学校内で不倫など、誰も考えないですから」
「ついでに、娘の金沢郁未って椿田先生を妙に気に入ってたわよね。クラスの副担任だったから。その時から面識あったのよ、あの女。親子で同じ男にベタベタしてて気持ち悪いわ」
あれこれと憶測を立てる上級生をよそに、椿田は荷物を持ちそっと部室から出ていった。創一は跡を追いたい衝動に駆られたが、二者の間に挟まれた状態では気が引ける。
結局、会話に口を挟むこともできず時間だけが過ぎ、一通り噂話を聞き終わったところで解散となった。騒々しさが過ぎ、室内に残された創一はふと窓の外を見下ろす。裏庭は午後の安らぎを取り戻し、鬱陶しい雑草が蔓延っているばかりだった。
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