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16.王家の秘密
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ジルと心を通わせ幸せに満ち足りた気持ちになったところで、今までの様々な疑問が湧いてきた。
「……ねぇねぇジル。色々聞いてもいい? そもそも私はどうなるの? ジルが第二王子を降下するまでっ言うけど、なんですぐに降下できないの? というか、なんで私は婚約破棄の後あんな……えっとその…色々な人に抱かれたのかなぁって……」
そう言えばっ! 色々なことがありすぎてすっかり遠い過去で忘れそうでしたが、そもそも私の処女を頂かれた後、ものすごい淫乱パーティみたいなことしてた気がする……
まぁ前も思ったけど、そもそもずっとジルの顔見てるか咥えているかで、全然他の人にされたって感じではないんだけどね。
そう思っていたんだけど、私の質問を聞いたジルは真っ青になって、とても悲壮そうな顔をした。
「……ごめん。本当……フィーには謝っても許しては貰えないと思うけど……もう最後の手段だったんだ。3人には、フィーのナカでは吐精しないようには言っていた。君を側室にしようと執着を見せ始めた兄上に諦めさせる為、君を兄上の前で犯した。相手が僕1人だけで済めばいいとは思っていたけど、やはり兄上はそれだけでは収まらなかった。徹底的に君を突き落としたと見せる為に、全員で犯すことになってしまった……本当にごめん……」
えぇぇーーー! そんな事があったの!? おまけに、私を側室ってあいつ! 何考えてるんだ! 私は一生あんたの愛妾として、子どもも産めず性奴隷のように仕えればいいっての!???
側室がどういう扱いか、流石の私でもそれは知っている。
あまりにもの衝撃の事実に、私はビックリして何も言えない。
「ラクスは本当は僕の侍従であり騎士だったけど、優秀さを見込まれ兄上にも仕えてた。いずれは兄上の側近となる予定で。それを利用して兄上とリーリウムの動きを見張らせていた。ラクスは小さい頃から支えてくれる数少ない信用できるやつだから、今回の件を頼んだ……今もここにいるけど、フィーが嫌がってはいけないから、姿を現さないようにと厳命してる」
ラクス様っ! あのマントくれた人だ! 彼とも致したとは思うんだけど、マントの記憶ぐらいしか私にはなかった。
と言うか、ジルがそこまで気を遣ってくれているなんて……
ご飯置いてくれてたのもラクス様かなぁ。妖精さんみたいな働きありがとうございます。
というか、私に気付かれずにご飯の上げ下げしてくれるって、これまた謎スキルだ。
ん? なんかジルってばサラッと言ったけど、侍従の掛け持ちなんて普通しなくって、それってつまりは自分の側近のラクス様いずれ取られるって事じゃない!?
なんかジルの扱い酷すぎなんですけどーーー!
私がラクスさんに大きく反応したのを見て、ジルは何か勘違いしたらしい。
「……もしかして、ラクスを気に入ったりした……?……っフィーが望むなら……いや、でもっ……!」
何かとんでもない方向に話が飛んでいきそうな気がして慌てて答える。
「えっ! ちょっとジル待って! 私実は最初の時って、ジル以外の記憶があんまりないの……ほら、ずっとジルとキスしたり……そのぉ……してたでしょ?」
皆まで言わずとも察してくださいっ! 口に出すのは流石に恥ずかしすぎる……
真っ赤になりながら口籠る私を見て、ジルは今まで見たこともないぐらいの蕩けるような笑顔を向けた。
……やめてっ! そんな綺麗な顔でそんな風に見つめるなんてもはや凶器だわっ!
その瞳に欲情の熱が灯るのを見た私は、抱きつかれそうになる前に話の続きを促す。
毎回毎回欲情されて事に及んでたら、全部話を聞くまで何日もかかってしまう……
後、毎度妖精さんみたいな働きをしてもらうのが気の毒なので、ラクス様を今度改めて紹介してもらう事にした。
向こうは私のこと気まずいかもしれないけどねっ!
「宰相の息子のセレソは……その、どうやら女では勃たないって聞いていたから、無理やり頼み込んでみたんだ。兄上の将来の右腕だけど、あいつは昔出会ってから色々面倒みてくれてたりして、いいやつなんだ」
……ふむ? 女では勃たない。ジルと仲良し。なんだか女の第六感がぴーんと何かに反応した気がした。
「レーベは利害関係の一致だ。あいつはリーリウムを王妃にしたかった。女好きだけど口が堅いのには保証があったから」
ほわ~。なんていうか、ジルの用意周到さに改めて感心させられた。
というか。なんでそこまで周りくどい事をするのだろうか?
別に、婚約破棄された私とジルが婚約してすぐに結婚すればいいだけだし、もっと言えばジルがこのまま王位継承権簒奪しちゃえば良くない?
と、ちょっとばかり不穏な事を考えてみた。
「……なんでこんなやり方って思うよね。ここからは、フィーの知らない王族の事情が絡んで来るんだ。それにはまず、神話の話からした方がいいと思う」
そう言うと、ジルは昨日私が読んでいた神話の絵本を持ってきた。
「昨日の絵本。フィーの知らない部分があったでしょ?」
そうそう! そうなのよね!!
小さい頃から読んでた話に続きがあって、びっくりしたのだ。
「あれは、王家用の絵本になる。一般には知らされない部分が記載されているんだ。……さらに、あの絵本には続きがあるんだ」
絵本にはまだ続きがあったのだ!
ジルは、その後の話を語った。
================
カケラを持つ魂、すなわちフラーマを有する人々は、神の石により選定され指導者として人々を導いていった。
その指導者の中で、特に魔法の力が強い者がフラーマを判別できる石を掲げ、国王として各々国を治めていくようになった。
国王以外の魔法を使える者たちは、国王を支えていき国の繁栄の礎となった。
しかし、暫く時が経つにつれ国同士が争いあい、それは国王を筆頭に魔法を使用できる者達同士で争う程になっていった。豊かな国を一夜にして滅亡させる程、魔法使い同士の争いは激しかった。
魔法を使用できる人々はどんどんその数を減らし、魔法を使用できない人はもっともっと数を減らしていった。
世界は破滅へと近づいていった。
嘆き悲しんだ神々は、石と盟約を交わさなければ魔法を使えないようにした。
また、残された人々は、滅亡へと突き進む自分たちの行いを恥じ、以後二度とこのような争いを起こさないことを神々に誓った。
世界が破滅する前に、強い魔法を使用できる王家が石を管理し、石との盟約者を厳しく縛った。
こうして、この出来事を戒めとし、魔法の使用に関して多くの制限を設けることとなった。
魔法の使用者を王家の直系のみと限定すること。
魔法使い同士で争わないこと。
無用な争いを生まないために、王位継承についてカケラを持つ魂を有していれば、大きな問題がない限りは嫡子継承を絶対とすること。
ーーーこれらは、王家のみの秘密として受け継がれていった。
================
なんと壮大な王家の秘密に、頭がパンパンになってしまった。
つまり、現在ウェントゥス国では、王家の直系として、国王陛下、王妃様、トリスティン様、ジルヴェール様の4人が石との盟約により魔法を行使できるという事になる。
継承権争いの種とならないために、代々側室が微妙な立場だったのだろう。
ただ、王妃教育の一環として習った王家の歴史の中で、過去側室を持っていたり、その側室の子が王位を継いだ事例もあったと思う。
「過去の歴史から、フラーマを有する者同士で結ばれた子は、フラーマとして産まれる確率が高かった。そのため、王位を継承する嫡子は、フラーマを有するものと婚姻を結ぶことが義務づけられた。正妃との子がフラーマを有していなければ、側室を娶ることもあった。もちろん、フラーマを有するものは平民にもいたので、過去平民の妻を正妃として迎えた事例もある。ただ、全国民を石の選定にかけるわけにもいかず、代々貴族の年頃の子女から王妃の条件に合う者として、フラーマを有するかどうか選定が行われる」
私が王妃探しのため互いの顔合わせをするためだと思っていたお茶会に、そんな裏があったのだ!
「石と呼応するのは、だいたい7歳頃以降だと言われている。王妃の選定も、王子としての選定も、7歳を区切りとされる。そして、兄上の歳に釣り合う国の子女が集められた王妃選定の中で、フィーだけが石に呼応した。つまり、フィーだけがカケラの魂、つまりフラーマを有する者だった……」
私が時期王妃としてトリスティン様の婚約者に決まった事情が、他にいないからだなんて!!
驚愕の事実に目を見張るものの、心の底ではなるほど、と納得する自分がいた。
だからトリスティン様は、私という婚約者がありながら他の女性が寄ってくるのを楽しんでいたんだ。
婚約者も自分で決められない(おまけに好みじゃなかったのよ絶対)、側室も持てない。
……はぁ。この人を支えたい、とか本当勘違いして無駄な努力を重ねたものだ……
「リーリウム様はイグニス国で石の選定を受け、フラーマを有するものとして次期王妃候補者だった。しかも、リーリウム様のお父上はウェントゥス国の貴族だ。フィーとの婚約を解消させ兄上の新しい婚約者とするべく、僕はリーリウム様がこの国へ来るように誘導した。予想通り兄上はリーリウム様に惹かれた。フィーとの婚約を解消しリーリウム様を次期王妃として発表するだけだと思っていたのに、まさかフィーを側室に望むなんて……とにかく、兄上がリーリウム様と子を作り、その子が7歳になって王位継承が確定するまでは、僕は降下できない。魔法を使用できるものが減ると民が困ってしまうからね。それに、魔法使い同士で争うわけにはいかないから、僕は兄から継承権を簒奪するつもりはない。……兄上もあれで悪人ではないからね。…まぁそこそこの王になると思うよ」
そう言って、なんだか寂しそうな顔をしながらジルは淡々と語った。
……うん、まぁわかるかも。そう。悪い人ではないのだトリスティン様は。
私に対しても、冷たい態度を取りつつもどこか切り捨てきれない。全て中途半端なのだろう。
ジルの方が間違いなく優秀であることは、こうして話してみたらすぐにでも分かる。
でもきっと、継承権を奪うつもりはないジルは、ずっと目立たないようにしてきたんだろう。
今まで出席した舞踏会などの公の場では、その姿を見たことがなかった。
ーーーージルの幼少期を思うと、胸が痛んだ。
「……ねぇねぇジル。色々聞いてもいい? そもそも私はどうなるの? ジルが第二王子を降下するまでっ言うけど、なんですぐに降下できないの? というか、なんで私は婚約破棄の後あんな……えっとその…色々な人に抱かれたのかなぁって……」
そう言えばっ! 色々なことがありすぎてすっかり遠い過去で忘れそうでしたが、そもそも私の処女を頂かれた後、ものすごい淫乱パーティみたいなことしてた気がする……
まぁ前も思ったけど、そもそもずっとジルの顔見てるか咥えているかで、全然他の人にされたって感じではないんだけどね。
そう思っていたんだけど、私の質問を聞いたジルは真っ青になって、とても悲壮そうな顔をした。
「……ごめん。本当……フィーには謝っても許しては貰えないと思うけど……もう最後の手段だったんだ。3人には、フィーのナカでは吐精しないようには言っていた。君を側室にしようと執着を見せ始めた兄上に諦めさせる為、君を兄上の前で犯した。相手が僕1人だけで済めばいいとは思っていたけど、やはり兄上はそれだけでは収まらなかった。徹底的に君を突き落としたと見せる為に、全員で犯すことになってしまった……本当にごめん……」
えぇぇーーー! そんな事があったの!? おまけに、私を側室ってあいつ! 何考えてるんだ! 私は一生あんたの愛妾として、子どもも産めず性奴隷のように仕えればいいっての!???
側室がどういう扱いか、流石の私でもそれは知っている。
あまりにもの衝撃の事実に、私はビックリして何も言えない。
「ラクスは本当は僕の侍従であり騎士だったけど、優秀さを見込まれ兄上にも仕えてた。いずれは兄上の側近となる予定で。それを利用して兄上とリーリウムの動きを見張らせていた。ラクスは小さい頃から支えてくれる数少ない信用できるやつだから、今回の件を頼んだ……今もここにいるけど、フィーが嫌がってはいけないから、姿を現さないようにと厳命してる」
ラクス様っ! あのマントくれた人だ! 彼とも致したとは思うんだけど、マントの記憶ぐらいしか私にはなかった。
と言うか、ジルがそこまで気を遣ってくれているなんて……
ご飯置いてくれてたのもラクス様かなぁ。妖精さんみたいな働きありがとうございます。
というか、私に気付かれずにご飯の上げ下げしてくれるって、これまた謎スキルだ。
ん? なんかジルってばサラッと言ったけど、侍従の掛け持ちなんて普通しなくって、それってつまりは自分の側近のラクス様いずれ取られるって事じゃない!?
なんかジルの扱い酷すぎなんですけどーーー!
私がラクスさんに大きく反応したのを見て、ジルは何か勘違いしたらしい。
「……もしかして、ラクスを気に入ったりした……?……っフィーが望むなら……いや、でもっ……!」
何かとんでもない方向に話が飛んでいきそうな気がして慌てて答える。
「えっ! ちょっとジル待って! 私実は最初の時って、ジル以外の記憶があんまりないの……ほら、ずっとジルとキスしたり……そのぉ……してたでしょ?」
皆まで言わずとも察してくださいっ! 口に出すのは流石に恥ずかしすぎる……
真っ赤になりながら口籠る私を見て、ジルは今まで見たこともないぐらいの蕩けるような笑顔を向けた。
……やめてっ! そんな綺麗な顔でそんな風に見つめるなんてもはや凶器だわっ!
その瞳に欲情の熱が灯るのを見た私は、抱きつかれそうになる前に話の続きを促す。
毎回毎回欲情されて事に及んでたら、全部話を聞くまで何日もかかってしまう……
後、毎度妖精さんみたいな働きをしてもらうのが気の毒なので、ラクス様を今度改めて紹介してもらう事にした。
向こうは私のこと気まずいかもしれないけどねっ!
「宰相の息子のセレソは……その、どうやら女では勃たないって聞いていたから、無理やり頼み込んでみたんだ。兄上の将来の右腕だけど、あいつは昔出会ってから色々面倒みてくれてたりして、いいやつなんだ」
……ふむ? 女では勃たない。ジルと仲良し。なんだか女の第六感がぴーんと何かに反応した気がした。
「レーベは利害関係の一致だ。あいつはリーリウムを王妃にしたかった。女好きだけど口が堅いのには保証があったから」
ほわ~。なんていうか、ジルの用意周到さに改めて感心させられた。
というか。なんでそこまで周りくどい事をするのだろうか?
別に、婚約破棄された私とジルが婚約してすぐに結婚すればいいだけだし、もっと言えばジルがこのまま王位継承権簒奪しちゃえば良くない?
と、ちょっとばかり不穏な事を考えてみた。
「……なんでこんなやり方って思うよね。ここからは、フィーの知らない王族の事情が絡んで来るんだ。それにはまず、神話の話からした方がいいと思う」
そう言うと、ジルは昨日私が読んでいた神話の絵本を持ってきた。
「昨日の絵本。フィーの知らない部分があったでしょ?」
そうそう! そうなのよね!!
小さい頃から読んでた話に続きがあって、びっくりしたのだ。
「あれは、王家用の絵本になる。一般には知らされない部分が記載されているんだ。……さらに、あの絵本には続きがあるんだ」
絵本にはまだ続きがあったのだ!
ジルは、その後の話を語った。
================
カケラを持つ魂、すなわちフラーマを有する人々は、神の石により選定され指導者として人々を導いていった。
その指導者の中で、特に魔法の力が強い者がフラーマを判別できる石を掲げ、国王として各々国を治めていくようになった。
国王以外の魔法を使える者たちは、国王を支えていき国の繁栄の礎となった。
しかし、暫く時が経つにつれ国同士が争いあい、それは国王を筆頭に魔法を使用できる者達同士で争う程になっていった。豊かな国を一夜にして滅亡させる程、魔法使い同士の争いは激しかった。
魔法を使用できる人々はどんどんその数を減らし、魔法を使用できない人はもっともっと数を減らしていった。
世界は破滅へと近づいていった。
嘆き悲しんだ神々は、石と盟約を交わさなければ魔法を使えないようにした。
また、残された人々は、滅亡へと突き進む自分たちの行いを恥じ、以後二度とこのような争いを起こさないことを神々に誓った。
世界が破滅する前に、強い魔法を使用できる王家が石を管理し、石との盟約者を厳しく縛った。
こうして、この出来事を戒めとし、魔法の使用に関して多くの制限を設けることとなった。
魔法の使用者を王家の直系のみと限定すること。
魔法使い同士で争わないこと。
無用な争いを生まないために、王位継承についてカケラを持つ魂を有していれば、大きな問題がない限りは嫡子継承を絶対とすること。
ーーーこれらは、王家のみの秘密として受け継がれていった。
================
なんと壮大な王家の秘密に、頭がパンパンになってしまった。
つまり、現在ウェントゥス国では、王家の直系として、国王陛下、王妃様、トリスティン様、ジルヴェール様の4人が石との盟約により魔法を行使できるという事になる。
継承権争いの種とならないために、代々側室が微妙な立場だったのだろう。
ただ、王妃教育の一環として習った王家の歴史の中で、過去側室を持っていたり、その側室の子が王位を継いだ事例もあったと思う。
「過去の歴史から、フラーマを有する者同士で結ばれた子は、フラーマとして産まれる確率が高かった。そのため、王位を継承する嫡子は、フラーマを有するものと婚姻を結ぶことが義務づけられた。正妃との子がフラーマを有していなければ、側室を娶ることもあった。もちろん、フラーマを有するものは平民にもいたので、過去平民の妻を正妃として迎えた事例もある。ただ、全国民を石の選定にかけるわけにもいかず、代々貴族の年頃の子女から王妃の条件に合う者として、フラーマを有するかどうか選定が行われる」
私が王妃探しのため互いの顔合わせをするためだと思っていたお茶会に、そんな裏があったのだ!
「石と呼応するのは、だいたい7歳頃以降だと言われている。王妃の選定も、王子としての選定も、7歳を区切りとされる。そして、兄上の歳に釣り合う国の子女が集められた王妃選定の中で、フィーだけが石に呼応した。つまり、フィーだけがカケラの魂、つまりフラーマを有する者だった……」
私が時期王妃としてトリスティン様の婚約者に決まった事情が、他にいないからだなんて!!
驚愕の事実に目を見張るものの、心の底ではなるほど、と納得する自分がいた。
だからトリスティン様は、私という婚約者がありながら他の女性が寄ってくるのを楽しんでいたんだ。
婚約者も自分で決められない(おまけに好みじゃなかったのよ絶対)、側室も持てない。
……はぁ。この人を支えたい、とか本当勘違いして無駄な努力を重ねたものだ……
「リーリウム様はイグニス国で石の選定を受け、フラーマを有するものとして次期王妃候補者だった。しかも、リーリウム様のお父上はウェントゥス国の貴族だ。フィーとの婚約を解消させ兄上の新しい婚約者とするべく、僕はリーリウム様がこの国へ来るように誘導した。予想通り兄上はリーリウム様に惹かれた。フィーとの婚約を解消しリーリウム様を次期王妃として発表するだけだと思っていたのに、まさかフィーを側室に望むなんて……とにかく、兄上がリーリウム様と子を作り、その子が7歳になって王位継承が確定するまでは、僕は降下できない。魔法を使用できるものが減ると民が困ってしまうからね。それに、魔法使い同士で争うわけにはいかないから、僕は兄から継承権を簒奪するつもりはない。……兄上もあれで悪人ではないからね。…まぁそこそこの王になると思うよ」
そう言って、なんだか寂しそうな顔をしながらジルは淡々と語った。
……うん、まぁわかるかも。そう。悪い人ではないのだトリスティン様は。
私に対しても、冷たい態度を取りつつもどこか切り捨てきれない。全て中途半端なのだろう。
ジルの方が間違いなく優秀であることは、こうして話してみたらすぐにでも分かる。
でもきっと、継承権を奪うつもりはないジルは、ずっと目立たないようにしてきたんだろう。
今まで出席した舞踏会などの公の場では、その姿を見たことがなかった。
ーーーージルの幼少期を思うと、胸が痛んだ。
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