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五章:ワインディング
第二十六話:夏の日差しと恋心
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ポニーテールが風になびいた。
ダッシュする少女の身体がカモシカのように躍動する。
練習メニューは、三百メートル走が四本の二セット。
それぞれの間には五分の、セットの間には十五分の休憩を入れる。
見た目以上にハードな内容だ。
水分補給も欠かせない。
おおよそ二十分ごとぐらいに、「もう少し飲みたいな」ぐらいの量を口にしていると、すべてが終わる頃までには軽く一リットルを消費する計算となる。
だが、その効果は実にてきめんだった。
一年ばかしこのメニューに親しめば、タイムアップは約束されたようなものであった。
夏も終わりに差しかかり、部活動などとうのむかしに引退しているはずの眞琴であったが、習慣というものは実に恐ろしい。
気が付けば、これまでどおりの基礎練習をこなさないと落ち着いて受験勉強もできない自分自身を、彼女は見出してしまっていたのだ。
センパイ、センパイと慕ってくれる後輩たちの練習を見てやる傍ら、それこそ無駄に全力を尽くしてグラウンドを走る眞琴。
時に、年頃の女性としては無防備にすぎる一瞬を見せることもある。
だが一方で、そうした姿に熱い視線を注ぐ者が存在するという現実に、彼女はまったく気付いていない。
実のところ眞琴は、クラスメートたちにとって自分がどれだけ魅力的な存在であるのかを決定的に自覚してなかった。
そして、そうした心理がもたらす気さくさが彼らにとって心惹かれる一因となっていることもまた、彼女の知るところとはなってなかった。
「やっぱ、いいよなぁ」
やはり後輩の指導にきていたのであろうか、眞琴たち女子部員から少し離れた位置でウォーミングアップをしている男子陸上部員が、ため息混じりにそう呟いた。
「猿渡のヤツ、彼氏いるんだろうな。何せ、おまえを振ったくらいなんだからなァ」
彼の側でストレッチしていた別の男子部員が、その発言を聞いて動きを止めた。
しまったとばかりに、発言の主は片手であわてて口を覆う。
動きを止めた男子生徒の名は、高山正彦。
尽生学園陸上部における短距離走のエースであり、この夏のインターハイでも全国四位の結果を出した有数の実力者だ。
大学へは、その力量を評価されて推薦での入学が約束されており、やがては実業団での活躍も期待されるほどの逸材だった。
ただし、学業が不得手というわけではない。
むしろ、彼は文武両道を地で行っている優秀な若者であり、その甘いマスクと相まって異性から受ける好意の総量はなんとも膨大なものであった。
その高山が猿渡眞琴に「袖にされた」という事実は、今日、意外にも多くの生徒が知るところとなっていた。
無論、眞琴がそれを話したわけではないし高山自身が語ったわけでもないのだが、どういうわけかそれは公然の秘密として多くの耳に届いていた。
「悪ィ……」
ばつが悪そうに、話を振った大森という男子部員が謝罪する。
「いいさ。事実だしな」と高山は答えたが、先ほどの言葉が彼の古傷を一撃したことは否めない。
彼の表情があからさまな陰りを見せたことが、見事にそれを裏付けていた。
意識の外から放たれた言葉の刃とは、それほどまでに鋭いのであった。
「気にすんなよ。おまえなら、いくらでもほかにいいオンナが見付かるさ」
そんな高山を見かねてか、別の男子部員がふたりの会話に割って入った。
高山と同じクラスの安生という生徒だ。
厚めの唇を捻るようにして彼は告げる。
「それに実際、猿渡には付き合っているオトコがいるぜ。朝、学校までクルマで送ってもらってきてたの見たことがあるからさ。間違いない」
「なんだって?」
いくぶん俯きがちだった高山が、驚いたように顔を上げた。
「それ、本当なのか?」
「ああ」
彼の横に腰を下ろした安生が、小さく数回頷いた。
「運転してたオトコは、俺らより大分年上みたいだったけど、それでも親父さんって歳じゃなかったぜ。あいつ、確かひとりっ子だったろ? じゃあ、兄貴ってわけでもなさそうだ。だとしたら、家族以外のオトコのクルマで登校なんて、猿渡も、陰でやることやってんじゃないか」
彼の発言は、あからさまに眞琴を腐す内容で締めくくられていた。
その根幹にあったのは、過去の失恋からくる逆恨みの情だ。
何を隠そう安生も昨年、眞琴相手に見事玉砕を果たしていたのである。
だが幸いにして、そうしたネガティブな雰囲気は、残りのふたりに伝播することなく虚空に紛れて霧散した。
続く大森の台詞が、話の筋を次へと流したからだった。
「どんなヤツなんだろうな、そのオトコ」
小首を捻って彼は言った。
「そういや、いつも猿渡と連んでる眼鏡なら何か知っているかもしれないな」
「誰なんだ、そいつ?」
急に食い付いてきた高山に対し、ざっくばらんに大森は答えた。
「二組の野々村だよ。さっき保健室にいるのを見たぜ」
◆◆◆
「そう、そんなことがあったの」
そう柔和な口調で応えたのは、この学園で養護教諭の職に就く、河合理恵という名の女性だった。
対面するひとりの女子生徒に向かって、彼女は微笑みながら言葉を紡ぐ。
「あなたの話を聞く限り、猿渡さんってクルマ大好き少女みたいだから、そんなイベントに遭遇できて、きっと大喜びだったでしょうね」
「そうなんですよ、先生。おかげでサワタリの奴、これまで以上にクルマのことにはまり込んじゃって。あれじゃあ、オトコなしの高校生活確定ですよ。あ~あ、もう。もったいないったら、ありゃしない」
理恵の向かいに陣取っていたのは、眞琴の親友、野々村早苗そのひとだった。
彼女が話していた内容は、この夏に眞琴が体験した走り屋絡みの出来事だ。
情報源は、いわゆる又聞き。
もちろん、可能な限り個人情報は伏せてある。
にもかかわらず、語られる言葉の端々からは、突如として現れた「英雄」に向かう眞琴の純な憧憬を、あからさまに感じ取ることができた。
その英雄とはいったい誰のことなのか。
それは、改めて言うまでもあるまい。
眞琴が敬愛する三澤倫子の危機を救い、地元のタイトルホルダーである二階堂和也までをも易々と撃破した「八神の魔術師」壬生翔一郎のことだ。
早苗にとってそれまで親友から聞いていた彼の印象は「ほっておけない駄目兄貴」だったわけだから、正直な話、このイメージの豹変にはかなり戸惑うところがあった。
「彼女、きっとそのひとのことが好きなのね」
理恵が、落ち着いた口振りでそう言った。
「だから、そのひとの大活躍が自分のことみたいに嬉しいのよ」
「そうですかね~」
怪訝そうに腕組みをする早苗。
「アタシには、低俗な英雄崇拝にしか見えないんですけど」
「そういう見方もあるでしょうね」
あえて早苗を否定することなく、理恵は机の上のティーカップに手を伸ばした。
優雅な素振りで口を付ける。
一見隙だらけなようでいて、実のところはそうでない。
そんな複雑な印象を与える仕草だった。
河合理恵が養護教諭としてここ尽生学園に赴任してきたのは、もう三年も前の話だ。
年齢は三十代の前半で、ほぼ翔一郎と同年代。
もっともその外見は、実年齢よりひと回りほど若く見えた。
やや童顔気味と言えるかもしれない。
肩まで届かないさっぱりとしたボブカットが、その印象を強化していた。
さほど美人というわけではなかったが、人気度は高い。
それも、どちらかと言えば女生徒からだ。
難しい年齢を迎える彼女たちにとり教師や親とは一線を画した最も身近な大人の女性ということで、色々と相談ごとを持ち込まれている聞く。
とはいえ、わざわざ夏休みに出張ってきてまで世間話に興ずる生徒は、さすがに早苗ぐらいのものであったろうが。
「でも正直驚いたわ」
「何がです?」
「まだ八神街道に本当の走り屋たちが生き残ってたってこと」
懐かしそうに理恵が語った。
「先生たちがまだ学生だった頃はね、走り屋予備軍のやんちゃ坊主たちなんて、それこそそこいらじゅうに掃いて捨てるほどいたものよ。それがいつの間にかみ~んな雲隠れしちゃって、代わりに聞こえてくるのは、『若者のクルマ離れ』とか、『エコカーブーム』とか、当時のクルマ好きにとっては耳を塞ぎたくなるようなニュースばっかり。
だからなのかしら。いまはやりの草食系が悪いとは言わないけど、あの頃の熱気を肌で感じたおばさん世代の先生としては、そういう冷めた空気がちょっと──ううん、かなり残念に思われてならなかったところだったの。
なのにびっくり。あなたの話じゃあ、そうじゃない愛すべきお莫迦さんたちが、あの街道でいまだ頑張ってるっていうじゃない。格好だけじゃ満足できない、真剣に全力でバトルしたくて仕方がないっていう熱い子たちが、いまだバチバチやり合ってるっていうじゃない。
それ聞いて先生ね、驚くと同時になんだか嬉しくなっちゃったの──ああ、いまの若い子たちも全然やるもんなんだなぁって」
「先生。それ、教育者としてあるまじき発言ですよ」
笑いながら早苗が理恵をからかった。
「仮にも現職の高校教師が、違法な暴走行為を賞賛するようなこと言っちゃ駄目じゃないですか」
「うふふ。このことは、ほかの先生たちには内緒にしておいてね」
それを受けた養護教諭が、桜色の唇の前に人差し指をまっすぐ立てる。
「でも、本気でそう思ってるのは事実よ。先生もね、現役の頃は結構夜の八神街道で遊んでたくちだから」
「うわぁ、それって衝撃の事実じゃないですか。あの河合先生が、学生時代、実は不良の一角だったなんて」
「あら、先生ひょっとして、野々村さんの期待を裏切っちゃったのかしら」
「とんでもない。機会があったら、ぜひその頃のこと取材させてください」
「機会があったら、ね」
保健室の扉がコンコンと二度ほどノックされたのは、ふたりの会話がちょうどひと段落した、そんなおりでのことだった。
はぁい、と理恵が温い声で返事をするのと前後して引き戸が開き、ひとりの男子生徒がその向こう側から姿を見せた。
上下ともジャージ姿の長身だ。
高山正彦だった。
「すいません、河合先生」
高山は、申し訳なさそうに会釈して敷居をまたいだ。
「こちらに三年二組の野々村さんがうかがっていると聞いたのですが」
「野々村はアタシだけど?」
若干の驚きを含んで早苗が答えた。
それはそうだろう。
彼女と高山との接点など、これまでの学生生活において寸分たりとも存在していないのであるから。
思い返せば、まともに言葉を交わしたことすらなかったような気がする。
もちろん、早苗は高山という男子生徒を知っていた。
ことパーソナリティーに関してなら、下手な高山ファンよりも詳しい可能性すらあった。
ただしそれは、「高山正彦」という個人に対するいわば「データ」の類であって、早苗自身が体感した彼という人間の「キャラクター」というわけではなかった。
だから、早苗は変な誤解をしなかった。
高山が自分を訪ねてくるということは、明確に何かしらの目的があるからだ。
そしてそれは、はなはだ残念なことながら、自分に対する好意を表明するためのものではあるまい。
サワタリ関係だな。
ピンときた早苗であったが、それを自分の口から言い出したりはしなかった。
未来のジャーナリストを目指す彼女にとっての、それはいわば本能であった。
「ちょっと聞きたいことがあるんだ。君と同じクラスの猿渡さんのことなんだけど」
ビンゴ! いきなりきたか。
ど真ん中の直球勝負を好むアスリートらしい物言いに、早苗はにっと口の端を綻ばせた。
「ここじゃあ言いにくそうね。場所変えようか」
早苗はそう高山を促すと、理恵に一礼したのち保健室をあとにした。
ふたりがのこのことやってきたのは、校舎裏にある非常階段のあたりだった。
確かに、夏休み中のこの時期、わざわざこんな人気のないところを居場所とする学生はいないだろう。
密談を交わすには、まず絶好の場所と言えた。
「サワタリとの間を取り持てってんなら、お門違いよ」
開口一番、早苗は言った。
「他人の恋愛沙汰に首突っ込むほど、アタシ、野暮じゃないから」
「そんなことは言わない」
逆に、驚いたような声をあげたのは高山のほうだった。
ただ内心での後ろめたさがあるのだろうか、台詞のあとに力なく「けど……」を付け加えた。
「俺が知りたいのは、猿渡が付き合ってる奴のことなんだ」
早苗とまともに視線を合わせられず、俯きながら彼は尋ねる。
「クルマ持ってる年上のオトコって聞いたんだ。君なら何か知っていると思って」
翔一郎のことだな、と早苗は察した。
おそらくは、眞琴が翔一郎のクルマに乗っている光景を誰かが目撃して誤解したのだろう。
そう言えば、たまに学校まで送ってもらってきてたこともあったような。
だとしたら、とんだ勘違いだ。
壬生翔一郎は、いわば眞琴の保護者と同義語である人物だし、少なくとも早苗の知る限りにおいて、ふたりがそういう関係を築こうとした過去は一度もない。
むしろ翔一郎のほうが馴れ馴れしい妹分と距離を置こうとしている事実を、彼女はしっかりと認識していた。
「聞いてどうすんの?」
しかし、早苗はそのことを伝えなかった。
私的に知り得た情報をわざわざ他人に教えてやる必要もないし、大体において、個人の交友関係を知りたいのなら直接本人に聞くのが筋ってものだ。
こんなところだけ変化球投げてどうするのよ、と小一時間ほど高山を問い詰めたくなる。
早苗は毅然として言い切った。
「アタシ、親友のプライベートネタは売らないわよ」
だよな、と自嘲して高山は顔を上げた。
なんだか憑きものが落ちたような表情をしている。
おそらくは、自分がいかに恥ずかしい真似をしてしまったのかを、いまになって察したのだろう。
素直に謝罪を口にする。
「莫迦なこと聞いて済まなかった。忘れてくれたら嬉しい」
へぇ、と早苗は感心した。
随分と素直じゃない。こりゃ、ミーハー相手に人気が出るはずだわ、と納得する。
いたずら心半分の親切心が鎌首をもたげてきた。
悪い癖だと自覚しながら、早苗は高山に声をかける。
「アンタ、サワタリのこと諦められないの? 一回ちゃんと振られたんでしょ?」
「簡単に吹っ切れるほど俺は単純じゃないんだよ」
怒ったように高山は答えた。
「女々しくないと言えば嘘になるけど……」
「でもアンタ、モテモテじゃない?」
早苗が言った。
「サワタリ以外にも女の子はたくさんいるでしょうに」
たとえばアタシとか、と冗談っぽくしなを作ってみせる。
高山がそれを無視して話を続けた時に早苗がちょっとショックを受けたのは、この際秘密にしておこう。
「何かさ、猿渡は違うんだよ」
熱っぽく高山は言った。
「あいつは俺の上辺以外をちゃんと見たうえで好きになってくれる気がする。何て言うか、きちんと俺というオトコの本質を納得ずくで受け止めてくれると思うんだ。確かに俺の周りに女の子はたくさんいる。でも、あの子たちにとって『俺』っていう存在はなんなんだろうかって考えたら、たぶん簡単に換えの効くものなんじゃないかなって思う。俺は、そんなのは嫌なんだ。うまく説明できないけど、とにかく嫌なんだ」
「要するに、サワタリならアンタを独り占めしてくれるって思ったわけだ」
腕組みして、早苗は何度も頷いた。
態度がかなり芝居がかっている。
「わかったわ」
彼女は告げた。
「アンタの熱意に応えて、ヒントだけあげましょう。いまはそれで満足することね」
「ゴメンね、サワタリ」と内心で謝罪しながら早苗は言った。
「たぶん、アンタが思っているオトコのひとってのは、アタシの知ってるひとよ」
早苗の言葉に高山が目を輝かせた。
身を乗り出すようにして彼は問う。
「どんな奴なんだ?」
慌てるな、とばかりに右手の人差し指をチッチッチと左右に幾度か振ったあと、彼女は高山に向かってこんな風に答えた。
「そのひとは、八神街道の走り屋でね――」
ダッシュする少女の身体がカモシカのように躍動する。
練習メニューは、三百メートル走が四本の二セット。
それぞれの間には五分の、セットの間には十五分の休憩を入れる。
見た目以上にハードな内容だ。
水分補給も欠かせない。
おおよそ二十分ごとぐらいに、「もう少し飲みたいな」ぐらいの量を口にしていると、すべてが終わる頃までには軽く一リットルを消費する計算となる。
だが、その効果は実にてきめんだった。
一年ばかしこのメニューに親しめば、タイムアップは約束されたようなものであった。
夏も終わりに差しかかり、部活動などとうのむかしに引退しているはずの眞琴であったが、習慣というものは実に恐ろしい。
気が付けば、これまでどおりの基礎練習をこなさないと落ち着いて受験勉強もできない自分自身を、彼女は見出してしまっていたのだ。
センパイ、センパイと慕ってくれる後輩たちの練習を見てやる傍ら、それこそ無駄に全力を尽くしてグラウンドを走る眞琴。
時に、年頃の女性としては無防備にすぎる一瞬を見せることもある。
だが一方で、そうした姿に熱い視線を注ぐ者が存在するという現実に、彼女はまったく気付いていない。
実のところ眞琴は、クラスメートたちにとって自分がどれだけ魅力的な存在であるのかを決定的に自覚してなかった。
そして、そうした心理がもたらす気さくさが彼らにとって心惹かれる一因となっていることもまた、彼女の知るところとはなってなかった。
「やっぱ、いいよなぁ」
やはり後輩の指導にきていたのであろうか、眞琴たち女子部員から少し離れた位置でウォーミングアップをしている男子陸上部員が、ため息混じりにそう呟いた。
「猿渡のヤツ、彼氏いるんだろうな。何せ、おまえを振ったくらいなんだからなァ」
彼の側でストレッチしていた別の男子部員が、その発言を聞いて動きを止めた。
しまったとばかりに、発言の主は片手であわてて口を覆う。
動きを止めた男子生徒の名は、高山正彦。
尽生学園陸上部における短距離走のエースであり、この夏のインターハイでも全国四位の結果を出した有数の実力者だ。
大学へは、その力量を評価されて推薦での入学が約束されており、やがては実業団での活躍も期待されるほどの逸材だった。
ただし、学業が不得手というわけではない。
むしろ、彼は文武両道を地で行っている優秀な若者であり、その甘いマスクと相まって異性から受ける好意の総量はなんとも膨大なものであった。
その高山が猿渡眞琴に「袖にされた」という事実は、今日、意外にも多くの生徒が知るところとなっていた。
無論、眞琴がそれを話したわけではないし高山自身が語ったわけでもないのだが、どういうわけかそれは公然の秘密として多くの耳に届いていた。
「悪ィ……」
ばつが悪そうに、話を振った大森という男子部員が謝罪する。
「いいさ。事実だしな」と高山は答えたが、先ほどの言葉が彼の古傷を一撃したことは否めない。
彼の表情があからさまな陰りを見せたことが、見事にそれを裏付けていた。
意識の外から放たれた言葉の刃とは、それほどまでに鋭いのであった。
「気にすんなよ。おまえなら、いくらでもほかにいいオンナが見付かるさ」
そんな高山を見かねてか、別の男子部員がふたりの会話に割って入った。
高山と同じクラスの安生という生徒だ。
厚めの唇を捻るようにして彼は告げる。
「それに実際、猿渡には付き合っているオトコがいるぜ。朝、学校までクルマで送ってもらってきてたの見たことがあるからさ。間違いない」
「なんだって?」
いくぶん俯きがちだった高山が、驚いたように顔を上げた。
「それ、本当なのか?」
「ああ」
彼の横に腰を下ろした安生が、小さく数回頷いた。
「運転してたオトコは、俺らより大分年上みたいだったけど、それでも親父さんって歳じゃなかったぜ。あいつ、確かひとりっ子だったろ? じゃあ、兄貴ってわけでもなさそうだ。だとしたら、家族以外のオトコのクルマで登校なんて、猿渡も、陰でやることやってんじゃないか」
彼の発言は、あからさまに眞琴を腐す内容で締めくくられていた。
その根幹にあったのは、過去の失恋からくる逆恨みの情だ。
何を隠そう安生も昨年、眞琴相手に見事玉砕を果たしていたのである。
だが幸いにして、そうしたネガティブな雰囲気は、残りのふたりに伝播することなく虚空に紛れて霧散した。
続く大森の台詞が、話の筋を次へと流したからだった。
「どんなヤツなんだろうな、そのオトコ」
小首を捻って彼は言った。
「そういや、いつも猿渡と連んでる眼鏡なら何か知っているかもしれないな」
「誰なんだ、そいつ?」
急に食い付いてきた高山に対し、ざっくばらんに大森は答えた。
「二組の野々村だよ。さっき保健室にいるのを見たぜ」
◆◆◆
「そう、そんなことがあったの」
そう柔和な口調で応えたのは、この学園で養護教諭の職に就く、河合理恵という名の女性だった。
対面するひとりの女子生徒に向かって、彼女は微笑みながら言葉を紡ぐ。
「あなたの話を聞く限り、猿渡さんってクルマ大好き少女みたいだから、そんなイベントに遭遇できて、きっと大喜びだったでしょうね」
「そうなんですよ、先生。おかげでサワタリの奴、これまで以上にクルマのことにはまり込んじゃって。あれじゃあ、オトコなしの高校生活確定ですよ。あ~あ、もう。もったいないったら、ありゃしない」
理恵の向かいに陣取っていたのは、眞琴の親友、野々村早苗そのひとだった。
彼女が話していた内容は、この夏に眞琴が体験した走り屋絡みの出来事だ。
情報源は、いわゆる又聞き。
もちろん、可能な限り個人情報は伏せてある。
にもかかわらず、語られる言葉の端々からは、突如として現れた「英雄」に向かう眞琴の純な憧憬を、あからさまに感じ取ることができた。
その英雄とはいったい誰のことなのか。
それは、改めて言うまでもあるまい。
眞琴が敬愛する三澤倫子の危機を救い、地元のタイトルホルダーである二階堂和也までをも易々と撃破した「八神の魔術師」壬生翔一郎のことだ。
早苗にとってそれまで親友から聞いていた彼の印象は「ほっておけない駄目兄貴」だったわけだから、正直な話、このイメージの豹変にはかなり戸惑うところがあった。
「彼女、きっとそのひとのことが好きなのね」
理恵が、落ち着いた口振りでそう言った。
「だから、そのひとの大活躍が自分のことみたいに嬉しいのよ」
「そうですかね~」
怪訝そうに腕組みをする早苗。
「アタシには、低俗な英雄崇拝にしか見えないんですけど」
「そういう見方もあるでしょうね」
あえて早苗を否定することなく、理恵は机の上のティーカップに手を伸ばした。
優雅な素振りで口を付ける。
一見隙だらけなようでいて、実のところはそうでない。
そんな複雑な印象を与える仕草だった。
河合理恵が養護教諭としてここ尽生学園に赴任してきたのは、もう三年も前の話だ。
年齢は三十代の前半で、ほぼ翔一郎と同年代。
もっともその外見は、実年齢よりひと回りほど若く見えた。
やや童顔気味と言えるかもしれない。
肩まで届かないさっぱりとしたボブカットが、その印象を強化していた。
さほど美人というわけではなかったが、人気度は高い。
それも、どちらかと言えば女生徒からだ。
難しい年齢を迎える彼女たちにとり教師や親とは一線を画した最も身近な大人の女性ということで、色々と相談ごとを持ち込まれている聞く。
とはいえ、わざわざ夏休みに出張ってきてまで世間話に興ずる生徒は、さすがに早苗ぐらいのものであったろうが。
「でも正直驚いたわ」
「何がです?」
「まだ八神街道に本当の走り屋たちが生き残ってたってこと」
懐かしそうに理恵が語った。
「先生たちがまだ学生だった頃はね、走り屋予備軍のやんちゃ坊主たちなんて、それこそそこいらじゅうに掃いて捨てるほどいたものよ。それがいつの間にかみ~んな雲隠れしちゃって、代わりに聞こえてくるのは、『若者のクルマ離れ』とか、『エコカーブーム』とか、当時のクルマ好きにとっては耳を塞ぎたくなるようなニュースばっかり。
だからなのかしら。いまはやりの草食系が悪いとは言わないけど、あの頃の熱気を肌で感じたおばさん世代の先生としては、そういう冷めた空気がちょっと──ううん、かなり残念に思われてならなかったところだったの。
なのにびっくり。あなたの話じゃあ、そうじゃない愛すべきお莫迦さんたちが、あの街道でいまだ頑張ってるっていうじゃない。格好だけじゃ満足できない、真剣に全力でバトルしたくて仕方がないっていう熱い子たちが、いまだバチバチやり合ってるっていうじゃない。
それ聞いて先生ね、驚くと同時になんだか嬉しくなっちゃったの──ああ、いまの若い子たちも全然やるもんなんだなぁって」
「先生。それ、教育者としてあるまじき発言ですよ」
笑いながら早苗が理恵をからかった。
「仮にも現職の高校教師が、違法な暴走行為を賞賛するようなこと言っちゃ駄目じゃないですか」
「うふふ。このことは、ほかの先生たちには内緒にしておいてね」
それを受けた養護教諭が、桜色の唇の前に人差し指をまっすぐ立てる。
「でも、本気でそう思ってるのは事実よ。先生もね、現役の頃は結構夜の八神街道で遊んでたくちだから」
「うわぁ、それって衝撃の事実じゃないですか。あの河合先生が、学生時代、実は不良の一角だったなんて」
「あら、先生ひょっとして、野々村さんの期待を裏切っちゃったのかしら」
「とんでもない。機会があったら、ぜひその頃のこと取材させてください」
「機会があったら、ね」
保健室の扉がコンコンと二度ほどノックされたのは、ふたりの会話がちょうどひと段落した、そんなおりでのことだった。
はぁい、と理恵が温い声で返事をするのと前後して引き戸が開き、ひとりの男子生徒がその向こう側から姿を見せた。
上下ともジャージ姿の長身だ。
高山正彦だった。
「すいません、河合先生」
高山は、申し訳なさそうに会釈して敷居をまたいだ。
「こちらに三年二組の野々村さんがうかがっていると聞いたのですが」
「野々村はアタシだけど?」
若干の驚きを含んで早苗が答えた。
それはそうだろう。
彼女と高山との接点など、これまでの学生生活において寸分たりとも存在していないのであるから。
思い返せば、まともに言葉を交わしたことすらなかったような気がする。
もちろん、早苗は高山という男子生徒を知っていた。
ことパーソナリティーに関してなら、下手な高山ファンよりも詳しい可能性すらあった。
ただしそれは、「高山正彦」という個人に対するいわば「データ」の類であって、早苗自身が体感した彼という人間の「キャラクター」というわけではなかった。
だから、早苗は変な誤解をしなかった。
高山が自分を訪ねてくるということは、明確に何かしらの目的があるからだ。
そしてそれは、はなはだ残念なことながら、自分に対する好意を表明するためのものではあるまい。
サワタリ関係だな。
ピンときた早苗であったが、それを自分の口から言い出したりはしなかった。
未来のジャーナリストを目指す彼女にとっての、それはいわば本能であった。
「ちょっと聞きたいことがあるんだ。君と同じクラスの猿渡さんのことなんだけど」
ビンゴ! いきなりきたか。
ど真ん中の直球勝負を好むアスリートらしい物言いに、早苗はにっと口の端を綻ばせた。
「ここじゃあ言いにくそうね。場所変えようか」
早苗はそう高山を促すと、理恵に一礼したのち保健室をあとにした。
ふたりがのこのことやってきたのは、校舎裏にある非常階段のあたりだった。
確かに、夏休み中のこの時期、わざわざこんな人気のないところを居場所とする学生はいないだろう。
密談を交わすには、まず絶好の場所と言えた。
「サワタリとの間を取り持てってんなら、お門違いよ」
開口一番、早苗は言った。
「他人の恋愛沙汰に首突っ込むほど、アタシ、野暮じゃないから」
「そんなことは言わない」
逆に、驚いたような声をあげたのは高山のほうだった。
ただ内心での後ろめたさがあるのだろうか、台詞のあとに力なく「けど……」を付け加えた。
「俺が知りたいのは、猿渡が付き合ってる奴のことなんだ」
早苗とまともに視線を合わせられず、俯きながら彼は尋ねる。
「クルマ持ってる年上のオトコって聞いたんだ。君なら何か知っていると思って」
翔一郎のことだな、と早苗は察した。
おそらくは、眞琴が翔一郎のクルマに乗っている光景を誰かが目撃して誤解したのだろう。
そう言えば、たまに学校まで送ってもらってきてたこともあったような。
だとしたら、とんだ勘違いだ。
壬生翔一郎は、いわば眞琴の保護者と同義語である人物だし、少なくとも早苗の知る限りにおいて、ふたりがそういう関係を築こうとした過去は一度もない。
むしろ翔一郎のほうが馴れ馴れしい妹分と距離を置こうとしている事実を、彼女はしっかりと認識していた。
「聞いてどうすんの?」
しかし、早苗はそのことを伝えなかった。
私的に知り得た情報をわざわざ他人に教えてやる必要もないし、大体において、個人の交友関係を知りたいのなら直接本人に聞くのが筋ってものだ。
こんなところだけ変化球投げてどうするのよ、と小一時間ほど高山を問い詰めたくなる。
早苗は毅然として言い切った。
「アタシ、親友のプライベートネタは売らないわよ」
だよな、と自嘲して高山は顔を上げた。
なんだか憑きものが落ちたような表情をしている。
おそらくは、自分がいかに恥ずかしい真似をしてしまったのかを、いまになって察したのだろう。
素直に謝罪を口にする。
「莫迦なこと聞いて済まなかった。忘れてくれたら嬉しい」
へぇ、と早苗は感心した。
随分と素直じゃない。こりゃ、ミーハー相手に人気が出るはずだわ、と納得する。
いたずら心半分の親切心が鎌首をもたげてきた。
悪い癖だと自覚しながら、早苗は高山に声をかける。
「アンタ、サワタリのこと諦められないの? 一回ちゃんと振られたんでしょ?」
「簡単に吹っ切れるほど俺は単純じゃないんだよ」
怒ったように高山は答えた。
「女々しくないと言えば嘘になるけど……」
「でもアンタ、モテモテじゃない?」
早苗が言った。
「サワタリ以外にも女の子はたくさんいるでしょうに」
たとえばアタシとか、と冗談っぽくしなを作ってみせる。
高山がそれを無視して話を続けた時に早苗がちょっとショックを受けたのは、この際秘密にしておこう。
「何かさ、猿渡は違うんだよ」
熱っぽく高山は言った。
「あいつは俺の上辺以外をちゃんと見たうえで好きになってくれる気がする。何て言うか、きちんと俺というオトコの本質を納得ずくで受け止めてくれると思うんだ。確かに俺の周りに女の子はたくさんいる。でも、あの子たちにとって『俺』っていう存在はなんなんだろうかって考えたら、たぶん簡単に換えの効くものなんじゃないかなって思う。俺は、そんなのは嫌なんだ。うまく説明できないけど、とにかく嫌なんだ」
「要するに、サワタリならアンタを独り占めしてくれるって思ったわけだ」
腕組みして、早苗は何度も頷いた。
態度がかなり芝居がかっている。
「わかったわ」
彼女は告げた。
「アンタの熱意に応えて、ヒントだけあげましょう。いまはそれで満足することね」
「ゴメンね、サワタリ」と内心で謝罪しながら早苗は言った。
「たぶん、アンタが思っているオトコのひとってのは、アタシの知ってるひとよ」
早苗の言葉に高山が目を輝かせた。
身を乗り出すようにして彼は問う。
「どんな奴なんだ?」
慌てるな、とばかりに右手の人差し指をチッチッチと左右に幾度か振ったあと、彼女は高山に向かってこんな風に答えた。
「そのひとは、八神街道の走り屋でね――」
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