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招待
しおりを挟む放課後、リリアナは馬車に乗り、キースの城へと向かう。馬車に揺られている間、リリアナは心ここにあらずという表情で遠くを見つめる。
「お嬢様、どうされましたか?
いつもならキース様の城に行くとなるとうるさいほどなのに」
「主に向かってうるさいとは何よ…」
返す言葉にも全く覇気がない。
リリアナは外を遠い目で見つめながらぽつりとつぶやいた。
「キース様に捨てられてしまったらどうしよう…」
「突然どうしましたか?
何かあったのですか?」
向かい合わせで座っていたアレスカはリリアナの隣に移動する。
「もういい加減私に呆れてるわよね…」
「今更ですか?」
「今更とは何よ!!」
「僕がいいたいのはそれだったらとっくのとうに捨てられているということです。でも、お嬢様はキース様と婚約して何年目ですか?
お嬢様がいくらパーティーで粗相をしでかそうと、周りの令嬢にあたろうと婚約破棄の話は持ち出されていません」
「確かにそうね…」
「だからと言って安心できませんけどね」
「慰めてるのか慰めていないのかハッキリしなさいよ」
そんなことを言っている間にもキースの城へと到着した。リリアナはオドオドとしながら城の中に入る。メイドの案内の元、執務室に通された。
静かに扉を開けると、キースが険しい表情を浮かべながら机につまれた大量の書類に目を通していた。
「キース様」
「やあ、リリアナ
わざわざ足を運んでくれてありがとう」
最近、リリアナに対して厳しい目をすることが多かったキースだが、今日は雰囲気が和らいでいる。
「…いえ、暇だったので」
本当はキースから聞かされる話が気になって仕方がなかったのだが、いつものように可愛げのない言葉を言ってしまう。
「今、茶を運ばせる
座って待っていてくれ」
キースと2人きりでいれることが久しぶりすぎて、リリアナの心臓の鼓動がとまらない。
(もっとめかし込んでから来ればよかったわ…
話の内容が気になりすぎて、頭からすっかり抜けてしまって…髪の毛とか乱れてないかしら
こんな美しい人の前で醜態なんか晒せない)
手で少しだけ髪を整えようとした瞬間、ノックの音が聞こえる。
「入ってくれ」
「失礼致します」
キースの声と共に扉が開かれ、メイドの持ってきた紅茶が目の前に置かれる。心を落ち着かせるために一口飲むと、ハーブの香りが鼻腔に広がり精神をリラックスさせる。
「とっても美味しいわ…」
「気に入ってもらえて良かった。」
思わず感想を呟いてしまうと、キースが微笑みを浮かべる。
「私の家で作っている茶葉の味には負けますがね」
(ああ、もうどうしてこうなの!!
余計なことを言わなければいいのに…美味しいで終わらせればいいのに)
「そうか、もっと良い紅茶を出せるような努力が必要だな」
「い、いえ、そこまでしなくても十分…」
「なんだい?」
「いえ、何でもありません!!」
「ところで君に話したいことだけど」
ハーブティーでほんの少し緊張が解けたはずなのに、また緊張がぶり返してきた。
リリアナは膝の上に置かれた両手をギュッと握りしめる。
「どうした?急に怖い顔をして」
「え?そんな表情してましたか…??
そ、それに怖い顔なんて失礼じゃありませんか」
「悪かった
話だけど、今度舞踏会があるんだ
来てくれるかい?」
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