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金曜日
しおりを挟む「山科先生」
廊下を歩いていると突然呼び止められて振り返る。そこには伊藤先生がいた。伊藤先生は俺と同年代くらいで科学を担当している先生だ。ひょろっと細長くふわふわとした天然パーマ、太い黒縁メガネに猫背。なよなよしているという言葉がよく似合う。
女子からは嫌煙されそうな雰囲気が漂う男だが隠キャの俺と似たような空気を感じて勝手に親近感を覚えている。
「今日って残業ありますか?」
伊藤先生は目線の少し下に下がったメガネを指先でクイっとあげながら尋ねてくる。
「残業ですか?ないですよ
今日は定時で上がりです」
「では、よかったら久々に飲みにでも行きませんか?金曜日ですし」
「お!!いいですね!行きましょう!」
「では、仕事が終わったら校門前で待ち合わせしましょう。」
そうして、俺たちは仕事終わりに飲みに行くことになった。校門前で部活終わりに帰宅の生徒たちを見送っていると、突然後ろから腰に腕が回る。そして、爽やかな香りが鼻にふわっと舞う。
「けーんちゃん、お疲れ」
「樹、離れろ」
いつものことなので俺はそれほどこいつの行動に言及はしない。
「何で離れないといけないの?
俺たちの仲でしょ?」
樹は俺の方にぐりぐりと額を押し付けてくる。
「んー!あっちぃ!!離れろ!」
「無理」
「山科先生」
「あっ、伊藤先生!」
俺は隙をついて樹の腕から抜け出し、伊藤先生の元に駆け寄る。さりげなく背後に隠れるが伊藤先生は細いため、俺の体が隠れる気がしない。
「けんちゃん~」
樹は拗ねた顔で俺の方を見つめるが、樹の元に可愛らしい男子生徒が近づいてきて甘えるように樹の腕に触れた。
「樹、一緒に帰ろっ」
その声を聞いて、俺は口角を上げ笑みを浮かべて樹に向かって大きく両手を振る。
「青春しろよ!青少年!!」
樹の睨まれていることを感じながら、伊藤先生の腕を引いて俺はその場を離れた。
2人で駅まで向かって歩いていお互いの最寄りの中間くらいの場所で飲むことになった。普段、あまり行かないギラギラした繁華街だ。
決してヤンチャなタイプとは言えない俺たちは、鴨を見つけ出そうと鋭い眼光を向けるキャッチ達に怯えながら歩く。
「山科先生は何食べたい気分ですか?」
「えーっと魚系とかどうです?
たまには日本酒でくいっと」
俺がお猪口を飲むようなジェスチャーを送ると、伊東先生が口元に笑みを浮かべて首を縦に振る。
たまたま通りかかった居酒屋ののれんをくぐり、俺たちの飲み会は始まった。
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