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常連
しおりを挟むそれ以来、東雲はよく保健室へと通ってくれるようになった。朝の登校時、休み時間、下校時と回数多すぎじゃね?ってくらい顔を見せてくれる。
昼休みになると東雲が片手に購買のパンを持って保健室にやってきた。
おそらく教室に居づらいのだろうと思うから、便所飯とかされるより全然いいけど。
「山科さんは今日弁当なんだ」
「そうだよ」
「料理得意なの?」
「まあ、毎日自炊してるからな
これでモテないとかおかしくね??
俺、家事全般いける口なんだけど」
「知ってる?世の中見た目が9割らしいよ」
東雲は表情を変えずに世の中の残酷な事実を伝えてくるが、今更そんなことでショックをうけるようなメンタルはしていない。
「知ってるわ!!こちとらそんな現実を小さい頃から何度も目の当たりにしてんだよ」
「知ってたなら良かった」
「何が良かっただよ、何もよくねえよ
このモテ男」
「そのモテ男って俺のこと?」
「そうだよ
ここにいるのは東雲くんと俺だけだろ」
「確かに
でも、別に俺モテないよ
確かに声かけられる比率は多いけど
こんな感じだからさ」
「ふうん」
「でも、最近気になる子できたから学校に来てるっていう理由も大きいかも」
「えっ!?」
今、こいつなんて言った!!
気になる人だと…???俺は箸の動きを止めて東雲の方を見る。
「気になる子ってもちろんこの学校だな…??」
「そういうのってやっぱり引く??
山科さんだからいいやと思って話しちゃった」
俺は首がぶっ飛ぶんじゃないかという勢いで横に振り、東雲の膝に置かれていた両手をグッと握る。そして、真っ直ぐとグレーの瞳を見つめる。
「ぜっっっんぜんおかしくないぞ!
愛に性別なんて関係ないさ!!素晴らしいぞ、東雲君!!」
「ん?うん。」
俺が熱を込めて言ったというのに、東雲は何言ってんのこの人というような目を向けてくる。
「で、その好きな子っていうのは…」
「まだ好きって決まった訳じゃなくて、気になるっていう程度だよ。」
「そんなの恋に発展するのは時間の問題だ」
「そういうもんなの?同性とか全く興味なかったからどう感情がわからない」
「そうだよな、同性に全く興味はないってことはその人のことしか見えないってことだよな?それ以外は恋愛対象外なんだもんな
そんなの運命の出会いだ、絶対に!!」
「なんで山科さんがそんなに熱く語ってんの?」
東雲はそう言いながら2個目のパンを頬張り始める。
それはこの前BLでそんな感じのストーリーを見たからですというのはもちろんだが言えない。
「…そりゃ生徒の恋愛は応援してあげないとな!」
東雲の肩をポンと手で叩く。
「その気になる人っていうのは…」
「言わないよ
山科さん口軽そうだもん」
「おまっ!!どんな偏見だよ!!
俺の口はな石より固いって言われてんだぞ!」
「誰に?」
「あ、えっと、それは昔の同級生とか…」
「信用なんない
じゃあ、俺飯食い終わったから行くね」
東雲はパンのゴミをまとめると椅子から立ち上がる。
いっそのことデザートでも奢ってやるから、気になるに至った経緯まで1から10の全てを話してほしい。
「はっ!えっ、もう??」
細い体をしていながらも流石男子校生だなんて感じてしまう。
「じゃあね
またくるね」
「えーー!!もう!!!意地悪!!」
保健室に樹のような口調になってしまった俺の悲痛な声が残された。
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