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樹の顔を見ると先ほどまでの笑顔は消えている。


「あのね、俺好きな子できたかも」

「え、まじ?!?!」

「ちょっと、けんちゃん
静かに」


樹は唇の前に人差し指を立てる。
まさか、恋愛相談をされるとは思わず、これは興奮で頭が沸騰しそうになった。
頭を縦に何度も振る。


「で、好きな人ってだれだ?!男?!男だよな?!」

「なんでそんなに男を推してくるわけー?
俺ってそんなにゲイに見える??」


見えるというかそうであってほしい!!
俺はひたすら希望を込める。


「いや、お前は男だろうが女だろうが、どうせモテモテだろ??」

「まあ、そうだけどさ」

「なんだよ、少しは否定しろよ」

「否定はできないよ、事実だもん」

「ああ、そうかよ
で、誰なんだ!早く教えてくれよ~!!」


俺は膝の上に置かれた樹の両手を握り、ブンブンと上下に振る。すると、樹は指を絡めるように俺の手を握り、端正な顔を近づけてくる。


「教えてほしい?」

「ほしいほしい!!」

「だーれだ?」

「もう樹ってばあ!早く教えて!!」

「ええ、どうしよっかなあ」

「早く、早くぅ!」

「けんちゃん、かわい~」

「誤魔化さないで教えてくれよー
なあなあ!」


すると、勢いよく扉が開く音が聞こえた。


「お前ら、外まで声聞こえてんぞ」


保健室に入ってきたのは大和だ。
鞄を背負っているということは昼休みである今来たのだろう。


「え?まじで??」


まさか樹の秘密の恋バナがバレてしまったのかと不安になる。


「健太の気色悪い声が外まで漏れてた」

「気色悪いってなんだよ!!失礼だぞ!!」


大和は微笑みを浮かべながら俺の頰を撫でると、近くから椅子を持ってきて3人で円になって座る。


「なんで、来るんだよ」

「あ?俺たち友達だろ??
冷たくすんなよ」


大和は樹の肩に手を置くと、樹はそれを払う。


「で、2人でなんの話してたんだ?」


大和が俺の方を向いて問いかけてくる。
だが、樹から恋愛相談をされてましたなんて素直に言えずに俺は口籠った。


「俺がけんちゃんに好きな人のことについて教えようとしてただけ」


え?!お前それ言っちゃっていいのかよ!
恋バナって秘密にコソコソ話すやつだろ?!
俺が学生の頃は好きな人をバラしたやつはリンチくらいの意気込みだったのに、今は違うのか。

それとも大和は仲のいい友達だから教えてあげるとかいうやつか?
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