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暴力的
しおりを挟むしばらくすると早乙女がのそのそと歩きながら戻ってきた。猫ちゃんのエプロンの真ん中あたりが少しだけ濡れている。
だいぶ雑な洗い方でもしたのだろう。なんとなく想像がつく。
「何見てんだよ
さっさとやれよ」
「はいはい、わかってますよ
ほら、指見せてみろ」
早乙女の手を掴んで俺の手のひらに乗せると、右ストレートが飛んできた。俺はそれを当たる直前にかわす。
「は、はあ?!何やっちゃってんの?!お前!
あぶねえだろうが!!保険医は1人しかいねえんだからな!!俺が怪我したらどうすんだよ!
それにそんな勢いで殴ったら俺のほっぺが腫れるだろうが!!」
「その顔じゃ頬が腫れようが、腫れまいが変わんねえだろ」
「はあ??お前自分がちょっときれ…」
綺麗といってしまいそうになり慌てて口を閉じる。
「あ"????」
「…ちょ、ちょっとキレやすいって言いたかったんだよ
カルシウム取れ、カルシウム、あとはタンパク質とかブドウ糖とかもいいんだぞ
ちゃんと、野菜も食ってるか?野菜は栄養満点で」
「いいからさっさとやれよ」
「わかってるっつうの」
俺は極力早乙女に触れないようにして、手当てをする。傷は深くなかったようで血はしばらくすると止まった。
「それにしてもどうして怪我したんだ??」
「包丁で指切った」
早乙女は俺から顔を背けつつも珍しく素直に答える。
「てか、指近くで見ないと深く切れてるかどうかわかんねえな。少しだけ触るぞ?今見とかないと手遅れになる可能性だってあんだからな」
俺は早乙女の許可を聞く前に、手を取りルーペで傷口を見るもすでに血は止まっていて傷もそこまで深くなさそうだ。
「俺が見る限りでは大丈夫そうだな
絆創膏はって様子見しよう。もし痛かったらご家族にでも話して病院連れてってもらえ」
俺はルーペを引き出しの中にしまい、顔を上げると早乙女はなぜかぷるぷると震えながら頬を赤く紅潮させていた。
「早乙女、ど、どうした…??」
動揺を隠せない俺の声。
「勝手に触んなっつっただろ!」
早乙女はが立った勢いで椅子が後ろに倒れ、顔を赤くさせながら俺を睨む。
今にも煮えたぎったマグマが噴火しそうと言うところか。
そんなに俺に触られるの嫌かよ!!悪かったな!保健室にいるこの俺をバイ菌みたいな扱いしやがって!!
「早乙女、悪かった
どうかセクハラで訴えるのはやめてくれよな
俺無職になるから」
俺はそういいながら救急箱から2枚ほど絆創膏を取り出して渡すと、俺の手元から目にも止まらぬ速さで奪い取り保健室を出て行かと思いきや、扉の前で俺の方を振り返る。
「うぜえブス!!」
真っ赤な顔をしたまま保健室を早歩きで去っていった。
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