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日常
しおりを挟む「はあ、今日も美しい」
俺、山科健太は保健室の窓から生徒たちが体育のサッカーの試合で汗を流す姿を眺めながら感嘆の息を漏らす。
「けんちゃん~!」
生徒の中の1人、斉藤樹が試合中、俺の姿に気づいてネット越しに大きく手を振る。
「樹ー!!前みろ!危ねえぞ!!」
窓からそう声をかけた直後に樹の頭にサッカーボールが直撃し地面に倒れた。ちょうどよすぎるタイミングに狙ったのではないかと思ってしまうほど。
樹の顔面は確かに恨みを買いたくなるような顔をしているし、実際に俺の恨みもほんのちょっと買っている。
186センチの無駄にでかい身長にブロンドの髪、少し垂れた幅広い二重の目、エメラルドグリーンの瞳、通った鼻筋、少し厚みのある形の良い唇
この顔なら全国半分以上の男に女の愛を独占するなと恨まれてもおかしくない。
「おい、樹大丈夫か?!」
慌てて椅子から立ち上がり窓を開けて様子を見に行く。俺が心配していると近くにいた男子生徒が樹の元へ駆け寄る。
「おい、樹
大丈夫かよ」
樹の幼馴染である高木翔也だ。
「別に大丈夫
けんちゃんにカッコ悪いとこ見られただけっ」
樹は片手でぶつけた箇所を撫でながら、拗ねたように唇を尖らせると、高木が樹に向かって手を伸ばす。
「大丈夫なら早く立て
ほら、手貸してやるから」
「う”っ!」
樹が高木の手を握った瞬間、俺は動悸を覚える。
だがこれは更年期だからではない。俺の年齢はまだ27歳のアラサーであるため、動悸を感じやすい年齢にはまだ達してない…はずなのに。
動悸を感じた理由は2人がまるで青春漫画でようやく分かち合った友のように手をギュッと握り合っているからだ。
2人の視線が俺の方へと向く。
「先生どうかしましたか?」
高木は俺に声をかけてくれる。
「俺のことは気にしないで…
それより高木、樹のこともっと心配してやってくれ
とにかく心配してやってくれ、頭だから打ちどころが悪かったら大変だ。腫れてるかどうか確かめるために樹の頭を撫でて確認するとかは…!!」
「こいつ元が馬鹿なんで大丈夫ですよ
これ以上馬鹿になることはないと思います」
「はあ??ちょっと頭がいいからってムカつく
それにたんこぶができてないか確認するのはけんちゃんの仕事じゃーん
なんで、翔也にやらせようとすんのぉ??」
「それはだな…」
"お前らが俺の頭の中のベストオブ幼馴染カップルの地位を気付いてるからだよ!!"
…なんてことは口が滑っても言えない。
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