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添い寝
しおりを挟む一旦、体を動かすことを諦めて、隣で眠る伊織の顔を眺めた。
「綺麗な顔」
目を閉じると、伊織の長いまつ毛が目立つ。
薄い唇に高い鼻。
「色んな女性が寄ってくるはずだわ」
こんな近くで眠っているなら許してくれるかもしれない。
そんな気持ちで、伊織のはだけそうになっている胸元に頭を預ける。
トクトクと静かで規則正しい心臓の音が聞こえてくる。
伊織が起きてしまったらどうしようなんて考えつつもそこから離れられない。
ずっと音を聞いていると、後頭部に何かが当たった。
驚いて後ろを振り向くとそれは伊織の手のひらだった。
恵麻の髪をゆっくりとすく
伊織が起きてしまったのではないかと思い、伊織の方を見るも、まだ目を閉じたままで起きているような様子もない。
恵麻だとわかっていれば伊織がこんな行動をするはずがない。
もしかして別の女と間違えて頭を撫でているんじゃないか。
そんな考えが恵麻の頭の中を支配した。
撫でてもらえてうれしいという気持ちと嫉妬心のような感情が対立する。
「……伊織様なんて嫌い」
思ってもないことだが、寝ているなら相手に聞こえるわけじゃない。
少しくらい文句を言っても許される、そんな軽い気持ちで呟いた。
すると、後頭部を撫でていた手の動きが止まる。
まさか起きてしまったのかと思い、伊織の顔を確認するもまだ目は閉じたままだ。
でも、さっきまで気持ちよさそうな顔で寝ていたはずが、眉を寄せて不機嫌そうな顔をした。
その姿に恵麻は堪えきれずに笑ってしまう。
「伊織様、夢の中でも私に怒られているんですか?」
眠っている相手に対して返ってこない質問を送る。
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