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再会
しおりを挟む「姉さん、どうしたの?!」
180cm後半の整った顔立ちをした男がオレンジ色の髪を揺らしながら駆け寄っていく。
電話をかけた先は弟の苑だった。
姉からの突然の連絡にいつもは手を抜きながら終わらせる任務も秒速で終わらせ、額に汗を浮かべながら慌てて姉を迎えに来た。
「えへ、離婚しちゃった」
「は?!?!離婚?!?!」
冗談じみた口調で言う恵麻に対して、苑は目を見開いた。
苑の大きな声に周りの人は何事かと振り返る。
「ちょっとそんな大きな声で言わないで
恥ずかしいじゃない」
恵麻は頬を膨らませながら、苑の腕を叩くもその腕はすぐに苑の手によって捉えられる。
「なんで離婚なんてしたの?」
真剣な目で見つめられ、恵麻は言葉に詰まらしてしまう。
「それはまた後で話すから…お説教は後にして」
恵麻は苑から目を逸らし、地面へと視線を落とした。
それと同時に苑の手が恵麻の白くか細い腕をほどく。
「説教なんてしないよ
とりあえず、あそこの喫茶店にでも入ろう」
苑は恵麻の片手に握られていた鞄を取り上げて、片手に下げる。
苑に連れてこられた洒落た喫茶店に恵麻は緊張を覚え、苑の服の裾を片手でギュッと掴み恐る恐る店内に足を踏み入れていく。
家の外に出ることは少なく、家の中ばかりで過ごしてきた恵麻にとって外の世界は目新しいものばかりで、不安と好奇心で溢れる。
苑はその姿に眉をハの字にして笑みを浮かべた。
「苑、ここは若い人が多いのね」
「姉さんも充分若いでしょ
ほら早く入って」
苑に背中を押されながら、カフェへと入店をする。
周りは突然入ってきた美男美女に視線を奪われた。
「苑…私たちなんか見られてない?
危ない人たちとか思われてるのかしら…
それとも見窄らしいとか…??着物を着ているから浮いているのかしら…」
「姉さん、心配しすぎ
大丈夫だから」
一人でいる時でさえも目立った存在となってしまう苑は視線を集めることに慣れているため、そこまで気にすることもない。
しかし、普段あまり外に出ない恵麻はそんなことに慣れていない。
店員に席を案内され、席に座っても周りからの視線は止まず恵麻の心はソワソワして落ち着かない。
「姉さん、お腹はすいてる?」
「いえ、大丈夫!」
落ち着きを取り戻さない姉を見かねて苑が注文を行い、すぐに飲み物が運ばれてくる
「で、姉さん
何で離婚なんてしたの?
あんなに伊織さんのことが好きだって言ってたのに」
「伊織様のことは今でも好きよ?
大好き」
その言葉に苑は眉を顰めた。
「じゃあ余計に何で?」
「金剛家の足手まといだったから…」
噂であるため信憑性はなかったが、人づてに金剛家の人間が恵麻をどう扱っているかなどを耳にしていたため、表情を曇らせた恵麻を見て苑は何があったのかを察した。
「あそこの家は厳しすぎるんだよ
姉さんが悪いんじゃない」
「苑はやっぱり優しい」
恵麻は落ち込んでいた顔を上げると、苑へと視線を向けて花が咲くようにふんわりと笑う
それを見た苑も眉を曲げて微笑み、恵麻の頬を手のひらでそっと撫でた。恵麻もその手に擦り寄る。久々に触れる人の温もりに心地よい安心感が生まれる。
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