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第6章 真夜中の遊園地と魔王の帰還

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「その方がお前達の新鮮な反応が見られて面白いだろ?」

 俺はポテトを噛み締めてニヤリと笑う。

「……君、考え方がすっかり悪魔っぽくなってきたねぇ」

 俺達が盛り上がっていると、サラダを突いていたマオがぽつりと口を開いた。

「……幸也は本当に不幸体質なのだろうか? 確かに厄介事もしょっちゅう引き付けてはいるが、いつも上手く片付けてしまうしな……」

 確かに、これまで自分は不運なタイプだと思って生きてきたが、それによって毎日が我慢ならないくらい辛く苦しいという訳でもない。

「そーいうのは大体、気の持ちようだからねぇ? 君は不幸体質と言うより、逆境に強いのかもしれないねぇ。案外困難を乗り越えて、周りをも楽しませる才能があるのかもしれませんよ?」

 エレボスは枝豆に手を伸ばしながら笑う。

「確かにそうかもしれないな……」

 マオも頷く。

「お前と出会えたのは不幸なんかじゃねーしな?」

 俺はニヤリとしながら、マオを見つめた。

「……ああ」

 マオは深く頷いた。この笑顔であれば、出会わなければ良かったなんて、もう二度と言わないだろう。

「まあ今回の件は、偶然にしては出来過ぎな部分もあるし、どこかの悪戯好きな悪魔が一枚噛んでる可能性もあるけどね……で、クラースは今後どうするの?」

 メレクが唐揚げを頬張りながら尋ねると、皆んなは一瞬沈黙した。

「立場としては魔界の王子に戻って、幸也との契約も続いている以上、急いで帰らなくても良くなった訳だけど……?」

 マオがどう返答したものかと悩んでいる間に、俺が先に口を開いた。

「あ~……それなんだけどさ、俺、願い決まったわ」

『え!?』

 サマエルとメレクが同時に声を上げる。マオも驚きと緊張の混じったような顔で俺を見つめた。サマエルは心配そうに言葉を続ける。

「しかし……クラース様が幸也様の願いを叶えてしまったら……」

 マオ達と関わった人間の、悪魔に関する記憶が全部消えてしまう。

「うん。だからさ……」

「俺の願いは、マオとこれまで出会った人間の友達関係がこの先もずーっと続く事。どーせ部屋は余ってるから、このまま住んで貰ってもいいし、たまに遊びに来てくれるんでもいい。さすがに友達の事なら忘れねーだろ? えーと……この場合、代償はどうなるんだ?」

 俺が今、魔法の力で叶えたい事はそれしかなかった。他の大抵の事は自分でなんとかすれば良い。

「幸也……」

 そう呼ばれて、俺がマオの方を見ると、彼は俯向いて少し肩を震わせていた。

 周りの悪魔達は、優しい笑みを浮かべて見守っている。
 彼が再び顔を上げると、その瞳は喜びを湛えてキラキラと輝いていた。

「……では、お前も魔界に遊びに来て貰おうか?」

「交渉成立だな」

 マオの笑顔に、俺も目頭が熱くなるのを堪えて笑って見せる。

「……魔界の瘴気は人間には毒では?」

「無粋だねぇ、水を刺さないの! 防衛魔法でもなんでも掛けりゃいーでしょ?」

 メレクがサマエルの肩を叩いた。

「やはりお前は、困難を乗り越える才能があるのだな」

「あんま褒めんなよ。照れるだろ~?」

「ゆきにすごいの?」

「ゆきにーすごーい!」

「顔は怖いけどねぇ」

「今それ関係ねーから!」

「そうそう、この怖い顔で思い出したんですけど、貴方、ご家族かご先祖さんに吉生さんて人居ませんでした?」

 メレクに茶化されていると、エレボスからの急な質問が飛んだ。

「え、吉生は俺の爺さんだけど……?」

「ああ、やっぱり! 実は吉生さんは私の将棋仲間でしてね! 貴方どこかで見た事ある顔だな~と思ってたんですよ!」

『ええぇ!?』

 俺は慌てて押入れの奥から古いアルバムを引っ張り出して来た。

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