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第5章 愉悦する道化師
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悪魔達の居る世界観に慣れつつある自分に気付いて、俺は少し動揺する。
「……とはいえ、メフィストのおかげでいよいよマズイ状況になってきたね……」
「マズイって……?」
「さっきも言ったけど、多分今回の一件でフィーニス派にもクラースが人間界で暮らしている事がバレちゃうと思うんだ」
「……そーすると、どーなるんだ?」
俺の質問に、マオは暗い顔で俯向いている。
「いよいよ人間界に留まっていられない状況になるかもね……。メフィストが今回騒ぎを起こした本当の理由も、我々の対立を激しくさせるのが目的だったりして……まあ、そこは詮索しても仕方ないや、サマエルの報告を待とうか」
マオを魔界に返さないと、魔王としての彼の立場が危うくなる。俺の願いをさっさと叶えさせて、やりたくもない魔王の仕事の為に魔界に帰らせる。
どこか腑に落ちない気はしたが、それがマオの為ならば、俺は急いで願いを考えなければならない。
(でも……俺が願いを叶えたら、マオもサマエルもメレクも魔界に帰っちまうんだよな……)
チラとマオを見ると、彼はまだ下を向いていたが、何事か思案するような表情に変わっていた。
「さ、黙っててもつまんないや! 双子ちゃん達も一緒に、ゲームでもしてサマエルを待ってようよ! おやつも持って行く約束でしょう?」
メレクがその場の空気を変えるように、明るい声で提案した。
「……ああ、そうだな。マオ、行こうぜ」
「ああ……」
マオはやっと顔を上げると、俺に向かって頷いた。
✳︎ ✳︎ ✳︎
雷鳴轟く魔界の空の下、魔王城の大広間でもまた嵐が巻き起こっていた。
「魔王様が秘密裏に人間界に長期間滞在して城を空けていただなんて言語道断! 今すぐ罷免してフィーニス様が王位に就くべきである!」
「そうだそうだ! 魔界の最高責任者として身勝手甚だしい!」
「黙れ! クラース様には事情が在られるのだ!」
フィーニス派の猛反発に、サマエルは一人応戦していた。
「事情と言うのは、人間如きに召喚されたという事か? たかが人間の魂等、さっさとかっ喰らってお戻りになれば良いであろう!」
群れを成したフィーニス派は、ここぞとばかりにサマエルに詰め寄った。
「悪魔の契約を軽んじるのは下等な悪魔の証、非力な人間相手にも礼節を持って契約に応ずるのが真の悪魔だ!」
「くだらん! 人間なんぞと対等である必要は無い! 奴等は我々の家畜に過ぎないのだ!」
「彼等が滅びれば我々も滅びる。お前達のような後先考えない破壊思想の持ち主に魔界を維持する事は出来ない! 魔界にも秩序が必要だ!」
血気盛んな悪魔達は、サマエルの冷静な意見などまともに聞いてはいない。
やっと自分達が台頭する機会を得て、何が何でも引き摺り下ろしてやろうと必死であった。
「しかも、宰相である貴様までも人間界に入り浸っていたと言うではないか? この際、魔王と一緒に退いて貰おうか!」
「そうだそうだー!」
「私は魔王様の指示を仰ぎ伝える為に、行き来する必要があった。魔王様の不在中も職務は滞りなく進行させていた筈だ!」
「魔王と宰相を罷免しろー!」
「おぉー!」
サマエルの弁明は届かない。暴徒と化した群衆の勢いは増すばかりだ。
「軍法会議を開け! 此奴らを裁きに掛けろ!」
(……クラース様、不味い事になってきました……)
サマエルは心中祈るような気持ちで大広間に立ち続け、悪魔らの集中砲火を受け止めていた。
「……とはいえ、メフィストのおかげでいよいよマズイ状況になってきたね……」
「マズイって……?」
「さっきも言ったけど、多分今回の一件でフィーニス派にもクラースが人間界で暮らしている事がバレちゃうと思うんだ」
「……そーすると、どーなるんだ?」
俺の質問に、マオは暗い顔で俯向いている。
「いよいよ人間界に留まっていられない状況になるかもね……。メフィストが今回騒ぎを起こした本当の理由も、我々の対立を激しくさせるのが目的だったりして……まあ、そこは詮索しても仕方ないや、サマエルの報告を待とうか」
マオを魔界に返さないと、魔王としての彼の立場が危うくなる。俺の願いをさっさと叶えさせて、やりたくもない魔王の仕事の為に魔界に帰らせる。
どこか腑に落ちない気はしたが、それがマオの為ならば、俺は急いで願いを考えなければならない。
(でも……俺が願いを叶えたら、マオもサマエルもメレクも魔界に帰っちまうんだよな……)
チラとマオを見ると、彼はまだ下を向いていたが、何事か思案するような表情に変わっていた。
「さ、黙っててもつまんないや! 双子ちゃん達も一緒に、ゲームでもしてサマエルを待ってようよ! おやつも持って行く約束でしょう?」
メレクがその場の空気を変えるように、明るい声で提案した。
「……ああ、そうだな。マオ、行こうぜ」
「ああ……」
マオはやっと顔を上げると、俺に向かって頷いた。
✳︎ ✳︎ ✳︎
雷鳴轟く魔界の空の下、魔王城の大広間でもまた嵐が巻き起こっていた。
「魔王様が秘密裏に人間界に長期間滞在して城を空けていただなんて言語道断! 今すぐ罷免してフィーニス様が王位に就くべきである!」
「そうだそうだ! 魔界の最高責任者として身勝手甚だしい!」
「黙れ! クラース様には事情が在られるのだ!」
フィーニス派の猛反発に、サマエルは一人応戦していた。
「事情と言うのは、人間如きに召喚されたという事か? たかが人間の魂等、さっさとかっ喰らってお戻りになれば良いであろう!」
群れを成したフィーニス派は、ここぞとばかりにサマエルに詰め寄った。
「悪魔の契約を軽んじるのは下等な悪魔の証、非力な人間相手にも礼節を持って契約に応ずるのが真の悪魔だ!」
「くだらん! 人間なんぞと対等である必要は無い! 奴等は我々の家畜に過ぎないのだ!」
「彼等が滅びれば我々も滅びる。お前達のような後先考えない破壊思想の持ち主に魔界を維持する事は出来ない! 魔界にも秩序が必要だ!」
血気盛んな悪魔達は、サマエルの冷静な意見などまともに聞いてはいない。
やっと自分達が台頭する機会を得て、何が何でも引き摺り下ろしてやろうと必死であった。
「しかも、宰相である貴様までも人間界に入り浸っていたと言うではないか? この際、魔王と一緒に退いて貰おうか!」
「そうだそうだー!」
「私は魔王様の指示を仰ぎ伝える為に、行き来する必要があった。魔王様の不在中も職務は滞りなく進行させていた筈だ!」
「魔王と宰相を罷免しろー!」
「おぉー!」
サマエルの弁明は届かない。暴徒と化した群衆の勢いは増すばかりだ。
「軍法会議を開け! 此奴らを裁きに掛けろ!」
(……クラース様、不味い事になってきました……)
サマエルは心中祈るような気持ちで大広間に立ち続け、悪魔らの集中砲火を受け止めていた。
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