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第5章 愉悦する道化師
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翌朝、双子達も起きだし布団を畳んでいると、コツコツと窓を叩く音がした。
「なんだ?」
俺が不思議に思いながら窓を開けると、ベランダの柵に大きなカラスが留まっている。
「サマエルだな」
マオはそれに気付くと、こちらに近づいて来て窓を開けた。
「お、おい?」
カラスはその瞬間に飛び上がり、マオの肩に乗ると、何やらアワアワと鳴きだした。
「そうか……ご苦労」
マオがそう言うと、カラスはバサバサと遠くへ飛び去って行く。
「マオー、カラスさんとお話ししてたの?」
「なんていってたのー?」
双子が興味津々にマオの足元に駆け寄って行く。マオは双子に微笑み掛け、俺に向き直ると少し曇った顔をして言った。
「月斗がマンションから出たそうだ。車に乗り込んだようだが、やはり結界で守られていて魔法が効かないそうだ。メフィストも一緒なのかもしれない。私も様子を見て来る」
「……ああ」
そらとうみは顔を見合わせるときょとんとして首を傾げた。
「心配するな。大事にならないようにするさ」
マオはそう言い残すと、翼を広げて颯爽と飛び立って行った。人目につかないと良いが。
カーニバルのスタートは午後一時からだった。
俺と双子は家で大人しく過ごしていたが、開始時間が近づくにつれ、やはり落ち着かない気持ちになってきていた。
「マオとサマエルはー?」
昼食のうどんをちゅるちゅるすすると、そらが不思議そうに尋ねた。
「カーニバルに行ってるんだ……俺達も……行くか?」
「いくー!」
双子は飛び上がった。
何か起きたらすぐさま二人を連れて逃げる。周りの観客にも注意を促し、俺が誘導役になればいい。逆に人間の俺だからこそ、安全な道に観衆を導けるかもしれない。
俺は腹を括った。
「俺は俺なりに参加させて貰うぜ」
昼食の片付けを済ませ、俺は双子を連れてカーニバルの会場に向かった。会場とは言っても、参加者達は大通り沿いに長い道のりを練り歩いて来るので、マオ達が今どの辺りに居るのかは見当が付かない。
「ひとがいっぱいだねー!」
「迷子になるから、手ぇ離すなよ?」
既にカーニバルはスタートしており、雷門周辺は黒山の人だかりが出来ていた。
「めーないねー?」
「ねー?」
既に軽快なリズムとカラフルな羽衣装が目の前を横切っているのだが、俺の背丈があっても、通りは見づらい状態だった。
実は、カーニバルをしっかり見ようと思って来るのは初めてだったので、実際こんなに混雑しているとは予想していなかった。
(やべーなコレ、いざなんか起きても俺の言う事なんて誰も聞いてくれずに集団パニックになるんじゃないか……?)
「幸也ちゃん!」
急に不安になってきたところで、俺は知った声に呼ばれた。
声のした方に顔を向けると、マスターが人混みの間からにこにこと手招きしている。
「こっちこっち!」
俺は双子を庇いながら前へ進み、なんとかマスターの居る最前列辺りまで辿り着いた。
「来てくれたのね! この辺、早くからアタシ達で場所取りしてたのよ。一緒に観ましょ♪」
「わー! おどてる!」
「きらきらかわいい!」
視界が開けて、双子達もようやくカーニバルを楽しめそうだ。
「ありがとうございます。じゃあ、お言葉に甘えさせていただきます」
双子を交代で肩車せずに済んで助かった。俺達はかなり前の方でパレードを観る事が出来た。
「お友達の出番はまだですか?」
「ええ、このチームの次の次ね! そうそう、紹介してくれた子、すごいセンスの持ち主だって彼絶賛してたわよ! アレゴリアだけじゃなくて、衣装もアレンジしてくれて、見違えるようだって喜んでたわ! 本当、ありがとうね」
「そ、そうですか……」
どうやらメレクの奴、だいぶ張り切ってしまったらしい。おかしな事になっていないと良いが。
「なんだ?」
俺が不思議に思いながら窓を開けると、ベランダの柵に大きなカラスが留まっている。
「サマエルだな」
マオはそれに気付くと、こちらに近づいて来て窓を開けた。
「お、おい?」
カラスはその瞬間に飛び上がり、マオの肩に乗ると、何やらアワアワと鳴きだした。
「そうか……ご苦労」
マオがそう言うと、カラスはバサバサと遠くへ飛び去って行く。
「マオー、カラスさんとお話ししてたの?」
「なんていってたのー?」
双子が興味津々にマオの足元に駆け寄って行く。マオは双子に微笑み掛け、俺に向き直ると少し曇った顔をして言った。
「月斗がマンションから出たそうだ。車に乗り込んだようだが、やはり結界で守られていて魔法が効かないそうだ。メフィストも一緒なのかもしれない。私も様子を見て来る」
「……ああ」
そらとうみは顔を見合わせるときょとんとして首を傾げた。
「心配するな。大事にならないようにするさ」
マオはそう言い残すと、翼を広げて颯爽と飛び立って行った。人目につかないと良いが。
カーニバルのスタートは午後一時からだった。
俺と双子は家で大人しく過ごしていたが、開始時間が近づくにつれ、やはり落ち着かない気持ちになってきていた。
「マオとサマエルはー?」
昼食のうどんをちゅるちゅるすすると、そらが不思議そうに尋ねた。
「カーニバルに行ってるんだ……俺達も……行くか?」
「いくー!」
双子は飛び上がった。
何か起きたらすぐさま二人を連れて逃げる。周りの観客にも注意を促し、俺が誘導役になればいい。逆に人間の俺だからこそ、安全な道に観衆を導けるかもしれない。
俺は腹を括った。
「俺は俺なりに参加させて貰うぜ」
昼食の片付けを済ませ、俺は双子を連れてカーニバルの会場に向かった。会場とは言っても、参加者達は大通り沿いに長い道のりを練り歩いて来るので、マオ達が今どの辺りに居るのかは見当が付かない。
「ひとがいっぱいだねー!」
「迷子になるから、手ぇ離すなよ?」
既にカーニバルはスタートしており、雷門周辺は黒山の人だかりが出来ていた。
「めーないねー?」
「ねー?」
既に軽快なリズムとカラフルな羽衣装が目の前を横切っているのだが、俺の背丈があっても、通りは見づらい状態だった。
実は、カーニバルをしっかり見ようと思って来るのは初めてだったので、実際こんなに混雑しているとは予想していなかった。
(やべーなコレ、いざなんか起きても俺の言う事なんて誰も聞いてくれずに集団パニックになるんじゃないか……?)
「幸也ちゃん!」
急に不安になってきたところで、俺は知った声に呼ばれた。
声のした方に顔を向けると、マスターが人混みの間からにこにこと手招きしている。
「こっちこっち!」
俺は双子を庇いながら前へ進み、なんとかマスターの居る最前列辺りまで辿り着いた。
「来てくれたのね! この辺、早くからアタシ達で場所取りしてたのよ。一緒に観ましょ♪」
「わー! おどてる!」
「きらきらかわいい!」
視界が開けて、双子達もようやくカーニバルを楽しめそうだ。
「ありがとうございます。じゃあ、お言葉に甘えさせていただきます」
双子を交代で肩車せずに済んで助かった。俺達はかなり前の方でパレードを観る事が出来た。
「お友達の出番はまだですか?」
「ええ、このチームの次の次ね! そうそう、紹介してくれた子、すごいセンスの持ち主だって彼絶賛してたわよ! アレゴリアだけじゃなくて、衣装もアレンジしてくれて、見違えるようだって喜んでたわ! 本当、ありがとうね」
「そ、そうですか……」
どうやらメレクの奴、だいぶ張り切ってしまったらしい。おかしな事になっていないと良いが。
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