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第4章 欲望の悪魔と煌めきのカーニバル

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 次のまどろみのバイトの日、俺は客足が引いたのを見計らって、マスターに声を掛けた。

「あの……この間のカーニバルに出演するお友達ってどうされました?」

 すると、森田さんはカップを磨く手を止めて肩を竦める。

「今、出来る限り元のアレゴリアに近づけられないか、一から作り直しているみたいなんだけど、元々の予算もほぼ使い切ってたし、時間的にも予算的にも厳しいみたいなのよね……」

「それはそうですよね……。あの、実は俺の知り合いにものづくりに精通している知り合いが居るんですけど、良かったら協力出来ないかって言ってて……」

 俺がそう言うと、マスターは目を輝かせ、奥で皿を洗っていたマオが驚いたように顔を上げた。
 マオにはメレクとの契約についてまだ話をしていなかった。

「幸也ちゃん、それ本当!? 現場は猫の手も借りたいくらいだから、心得のある人なら一層喜んで貰えると思うわ! 是非紹介したいんだけど……?」

「あっ、はい。そのつもりだったので是非」

「嬉しいわ! 早速電話してくるわね! ちょっと離れるけどいいかしら?」

「ええ、大丈夫ですよ」

 マスターは興奮気味に携帯を持ってバックヤードへ向かった。

「どう言う事だ?」

 扉が閉まると、マオが心配そうにこちらにやって来て尋ねる。

「……いやね、ちょっと悪魔と取り引きを」

 俺はマオにニヤリと笑って見せた。その時、ポケットに入れておいた携帯がバイブした。メッセージのようだったので、保育園からではなさそうだがちょっとだけ開いて確認する。

 送り主はフミだった。ライブ当日のバンド順らしい。後で確認しようと思ったが、トリバンの名前がふと目に入ってしまい、俺は凍りついた。

「スーパーラッキームーンって……」

 くそダサいネーミングセンス、そしてムーン、つまり「月」というワード。
 勘違いであってくれと、俺は心の底から願った。

 嫌な予感に打ち震える俺を、マオはただきょとんと見つめていた。
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