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第3章 魔王の参謀と花火大会

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 マオの行方も気になったが、まずはとにかく保育園へ双子を迎えに行かねばならない。

「ゆきにおそいよー!」

「はなびはじまっちゃう!」

 門から園に入って行くと、待ちくたびれた様子のそらとうみが駆け寄って来た。

「悪かったな~。仕事忙しくなっちゃって……」

「マオはー?」

 うみがキョロキョロと辺りを見回す。

「アイツはちょっと用事があって後から来るよ。さあ、早く帰って花火を見に行こう!」

「うん!」

 俺は二人を家に連れ帰ると、急いで着替えさせて招待されたビルへと向かった。

 エントランスで招待券を見せると、屋上へと案内される。扉から外へ出ると、勢い良く風が吹き抜けていった。

 屋上のスペースには、赤い布が敷かれたベンチが沢山並んでいた。自由席なので川に近い方の座席は、既に埋まってしまっている。

「わーい!」

「はなびー!」

 サービスの飲み物をいただいて、はしゃぐ双子と席を探していると、お隣に住むおばあさんと目が合った。

「あらこんばんは、碓氷さん」

「ばーちゃだ!」

「ばーちゃ!」

 この小島さんというおばあさんは、うちの隣で駄菓子屋さんを営んでいる。俺も小さな頃から通っており、双子達ともしょっちゅうお店を覗いていた。

「こんばんは! あれ、お一人ですか?」

「ええ、今年は娘夫婦が忙しくて帰って来れなかったのよ……」

 小島さんは少し寂しそうに微笑んだ。

「……じゃあ、もし良かったらお隣良いですか?」

 俺が尋ねると、おばあさんは嬉しそうに胸の前で両手を合わせた。

「ええ、もちろんよ!」

「ばーちゃいっしょにみよー!」

 そらとうみがちょこんとおばあさんの隣に腰掛ける。

「ちょっとうちの居候も連れて来るので、申し訳ないんですが……少しの間この子達を見ていていただけますか?」

「ええ、ええ、いいですよ。ばあちゃんも可愛い子達と一緒に花火が見られて嬉しいわ」

 図々しくて申し訳ないが、実は隣の席を願い出たのには、双子を預かって欲しいという下心もあった。

(おばあさんも寂しそうだったし、ご迷惑ではないと思うんだけど……とにかく、早くマオを探しに行かなきゃ)

 そう思い、エレベーターに戻ろうとした瞬間、背後でドンという音が聞こえた。
 打ち上げられたそれが、ヒューと空を駆け上がる音が続き、音圧を肌で感じられる程の破裂音が響いた。

 ドン! バリバリバリ

 振り返ると、目の前に大輪の花火が花開いている。

「わーっ!」

 双子も周囲の人々も歓声をあげた。

(始まっちまった……)

 俺は屋上の手摺から地上を覗き込む。通りは人でいっぱいだ。
 この中からマオをどうやって探せば良いのだろう。

 その途方もなさに呆然としていると、暗くなってきた夜空を二羽のカラスが横切って行くのが目に入った。

(いや……)

 この距離であれはカラスにしては、デカすぎる。

(アイツまさか……飛んでんのか?)

 それは羽を広げたマオと、さっきの眼鏡の男のようだった。知り合いのようだったが、やはり彼も悪魔だったのだ。

 空を見上げている人間がこれだけ大勢居る中で、マオ達の姿が目に付く可能性は非常に高い。テレビカメラもあちこちで回っているはずだ。

(マオが悪魔だってバレたらとんでもない騒ぎになっちまう!)

 冷や汗をかきながら二人の姿を目で追っていると、彼等は厩橋うまやばしの方へ向かって飛んで行った。

(寄りによって一番混む方に飛んで行きやがった……)

 俺は後を追うべく直ぐにエレベーターに走って行った。
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