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第4章 河童の里と黒い怪物
7.鬼の一撃
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何かが床に倒れていた。俺はゆっくりと近づき、鬼火でそれを照らす。
『クプー!!』
亀のような甲羅。皿の乗った頭。床に倒れていたのは、サブローより少し大きな河童だった。サブローはそれにすがるようにして叫んでいる。恐らく彼がドンなのであろう。
『生きているのか……?』
俺も隣にしゃがみ込む。ドンは瞳を閉じてぐったりしていた。河童に呼吸や脈があるのかは分からないが、身体は所々が濡れて光っていた。
(これは、水ではないな……血を流しているのか……?)
光源が青いので色が判然としないが、床にも点々と血の跡がついていた。俺は鬼火をかざしながら、床に続く血痕を追って目を見張った。
『開いている……』
玄室へと続く扉が開いていたのだ。正確には「崩れて」いた。俺はその穴に近づいて鬼火をかざす。
『お前さんが最後に見た時は開いておらんかったのか?』
『ああ。あれから調査を進めていたとしても、こんな強引な開け方はしない……』
近頃頻発した大きな台風せいで崩れたのであろうか。山の方では土砂崩れもあったそうだ。しかし、ピンポイントでこんな所だけ崩れるなんて不自然だ。
血の跡は穴の奥から続いているようだった。ドンはここから這い出てきたのだろうか。
『ドンは生きてるのか?』
俺は振り返って、河童の側に屈み込む神様に尋ねた。
『ああ。怪我もあるし衰弱して虫の息じゃがの……』
その時、穴の奥に何か嫌なものが潜んでいる気配を感じて、俺は咄嗟にその場を離れた。
次の瞬間、ついさっきまで俺が立っていた場所めがけて、何か黒いものが飛び出してきた。
黒々とした大きな腕のようなものが、穴から伸びていた。その掌が空を掴む。
『出たな!』
俺は後ろに飛び下がり、間合いを取って鎌を振り上げた。だが、すかさず神様が叫んだ。
『いかん! 友和、鈴を鳴らせ!』
突然の指示に混乱しかけたが、俺は一旦攻撃を辞めて、ポケットから鈴を取り出し、その場で思い切り振った。
リン!
清く涼しげな音が通路に響いた。続いて閃光が暗闇を切り裂き、金棒を振りかぶった美しい鬼が白煙と共に現れる。
『蓮雫! 正面の穴だ!』
『喰らえ!』
蓮雫は直ぐに標的を捕えると、金棒を黒い腕に向かって振り下ろした。
しかし、腕は素早く穴の中に引き込まれ、金棒は激しく床を叩きつけた。床には衝撃で亀裂が入る。
(さすが元地獄の獄卒。やはり凄い力だ……)
蓮雫の一撃には、人間界の物質に影響する程のパワーがあった。霊体や妖怪にクリーンヒット出来れば、かなりのダメージになりそうだ。
だが、蓮雫の金棒の攻撃を受けても黒い霧はいつも溶けるように消えてしまい、これまで手応えの無い事ばかりであった。
(さっきの腕は、これまでの霧と違って、存在感というか、実態がある感じだった。今度こそ奴を追い詰められるかもしれない……)
しかし、俺の予想とは裏腹に神様が叫んだ。
『コイツは無理じゃ! 友和はサブローとドンを連れて一旦里に帰るんじゃ!』
『え?』
俺が呆気に取られていると、壁の向こうで、何者かの咆哮が聞こえた
『ウ……ウォォォオ!!』
『クプー!!』
亀のような甲羅。皿の乗った頭。床に倒れていたのは、サブローより少し大きな河童だった。サブローはそれにすがるようにして叫んでいる。恐らく彼がドンなのであろう。
『生きているのか……?』
俺も隣にしゃがみ込む。ドンは瞳を閉じてぐったりしていた。河童に呼吸や脈があるのかは分からないが、身体は所々が濡れて光っていた。
(これは、水ではないな……血を流しているのか……?)
光源が青いので色が判然としないが、床にも点々と血の跡がついていた。俺は鬼火をかざしながら、床に続く血痕を追って目を見張った。
『開いている……』
玄室へと続く扉が開いていたのだ。正確には「崩れて」いた。俺はその穴に近づいて鬼火をかざす。
『お前さんが最後に見た時は開いておらんかったのか?』
『ああ。あれから調査を進めていたとしても、こんな強引な開け方はしない……』
近頃頻発した大きな台風せいで崩れたのであろうか。山の方では土砂崩れもあったそうだ。しかし、ピンポイントでこんな所だけ崩れるなんて不自然だ。
血の跡は穴の奥から続いているようだった。ドンはここから這い出てきたのだろうか。
『ドンは生きてるのか?』
俺は振り返って、河童の側に屈み込む神様に尋ねた。
『ああ。怪我もあるし衰弱して虫の息じゃがの……』
その時、穴の奥に何か嫌なものが潜んでいる気配を感じて、俺は咄嗟にその場を離れた。
次の瞬間、ついさっきまで俺が立っていた場所めがけて、何か黒いものが飛び出してきた。
黒々とした大きな腕のようなものが、穴から伸びていた。その掌が空を掴む。
『出たな!』
俺は後ろに飛び下がり、間合いを取って鎌を振り上げた。だが、すかさず神様が叫んだ。
『いかん! 友和、鈴を鳴らせ!』
突然の指示に混乱しかけたが、俺は一旦攻撃を辞めて、ポケットから鈴を取り出し、その場で思い切り振った。
リン!
清く涼しげな音が通路に響いた。続いて閃光が暗闇を切り裂き、金棒を振りかぶった美しい鬼が白煙と共に現れる。
『蓮雫! 正面の穴だ!』
『喰らえ!』
蓮雫は直ぐに標的を捕えると、金棒を黒い腕に向かって振り下ろした。
しかし、腕は素早く穴の中に引き込まれ、金棒は激しく床を叩きつけた。床には衝撃で亀裂が入る。
(さすが元地獄の獄卒。やはり凄い力だ……)
蓮雫の一撃には、人間界の物質に影響する程のパワーがあった。霊体や妖怪にクリーンヒット出来れば、かなりのダメージになりそうだ。
だが、蓮雫の金棒の攻撃を受けても黒い霧はいつも溶けるように消えてしまい、これまで手応えの無い事ばかりであった。
(さっきの腕は、これまでの霧と違って、存在感というか、実態がある感じだった。今度こそ奴を追い詰められるかもしれない……)
しかし、俺の予想とは裏腹に神様が叫んだ。
『コイツは無理じゃ! 友和はサブローとドンを連れて一旦里に帰るんじゃ!』
『え?』
俺が呆気に取られていると、壁の向こうで、何者かの咆哮が聞こえた
『ウ……ウォォォオ!!』
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