上 下
48 / 131
第3章 幽体離脱警官と妖怪の子

12.幽霊の知り合い

しおりを挟む
『紐はタブンまだ繋がってマスヨ。タダ、人間界に戻るノニ手続きが必要デス。記憶も消してモラワナキャ。ホント、メンドクサイデスネー』

『ヤダ、何それ怖い』

 俺は思わず後ずさる。

『その紐コレでぶった切って、本物の霊にしてあげてもいいデスケド?』

 死神は鎌を取り上げて見せた。

『だーーっ! 行きます! 行かせていただきますっ!』

 俺はしぶしぶ死神について門を潜った。

(何でこんな目に……。てか、残してきた俺の身体だいじょーぶかな……)

 そんな事を考えながら歩いて行くと、白装束を着た人や鬼のような姿の者達とすれ違った。
 異様な光景だが、今ひとつ実感が湧かない。テレビドラマの撮影でもしているかのようだ。

 死神は、キョロキョロとよそ見をしながら歩く俺を置いていかんばかりに、早足で奥へと向かった。垂れ幕を捲り大きな部屋に入ると、机に向かって巻物を読んだり、何か書き込んでいる鬼達が居た。
 死神は手近にいた大鬼に尋ねた。

『蓮雫様はドコデスカ?』

『今日は新メニューの提案日で白狐様がいらしているので、食堂で立ち会われていますよ』

(レンゲ? 新メニュー? 食堂って、霊界の奴も飯食う必要があるのか?)

 色々な疑問が湧くが、また鎌で脅されるのも嫌なので、大人しく死神について行くと、何だかいい香りがしてきた。

 赤い提灯が並ぶ通路を進むと、何やら町の定食屋のような雰囲気の入り口が見えてくる。暖簾を潜り中へ入ると、数人の鬼達が食事をしていた。
 そっと覗き込むと、生姜焼き定食やサバの味噌煮定食を食っている。壁には本日のメニューが掲示されていた。三種類あり、もう一つは月見そばだった。

(てか、めちゃめちゃ美味そうなんだけど……)

 さっきカツカレーを食ったばかりだが、俺はちょっと羨ましくなった。

『天太? 何でここに居るんだ?』

 聞き覚えのある声がして、部屋の奥を見ると、昨夜出会った眼鏡少年(本当は中年らしいが)友和が居た。

 その近くには、長身の青年が立っており、前の席には着物姿で角の生えた男性と、白い着物にふわふわの耳を生やした色っぽい女の人が座っていた。

『まさかあの後、また死んだのか?』

 相変わらず、はっきりした物言いである。

『またって、昨日も死んでねーし! 今もまだ死んでない……と思う』

 俺が友和と話していると、角を生やした男が口を開いた。

『友和、知り合いか?』
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

お父様の相手をしなさいよ・・・亡き夫の姉の指示を受け入れる私が学ぶしきたりとは・・・

マッキーの世界
大衆娯楽
「あなた、この家にいたいなら、お父様の相手をしてみなさいよ」 義姉にそう言われてしまい、困っている。 「義父と寝るだなんて、そんなことは

護堂先生と神様のごはん あやかし子狐と三日月オムライス

栗槙ひので
キャラ文芸
中学校教師の護堂夏也は、独り身で亡くなった叔父の古屋敷に住む事になり、食いしん坊の神様と、ちょっと大人びた座敷童子の少年と一緒に山間の田舎町で暮らしている。 神様や妖怪達と暮らす奇妙な日常にも慣れつつあった夏也だが、ある日雑木林の藪の中から呻き声がする事に気が付く。心配して近寄ってみると、小さな子どもが倒れていた。その子には狐の耳と尻尾が生えていて……。 保護した子狐を狙って次々現れるあやかし達。霊感のある警察官やオカルト好きの生徒、はた迷惑な英語教師に近所のお稲荷さんまで、人間も神様もクセ者ばかり。夏也の毎日はやっぱり落ち着かない。 護堂先生と神様のごはんシリーズ 長編3作目

ロリっ子がおじさんに種付けされる話

オニオン太郎
大衆娯楽
なろうにも投稿した奴です

俺達は愛し合ってるんだよ!再婚夫が娘とベッドで抱き合っていたので離婚してやると・・・

白崎アイド
大衆娯楽
20歳の娘を連れて、10歳年下の男性と再婚した。 その娘が、再婚相手とベッドの上で抱き合っている姿を目撃。 そこで、娘に再婚相手を託し、私は離婚してやることにした。

妻がエロくて死にそうです

菅野鵜野
大衆娯楽
うだつの上がらないサラリーマンの士郎。だが、一つだけ自慢がある。 美しい妻、美佐子だ。同じ会社の上司にして、できる女で、日本人離れしたプロポーションを持つ。 こんな素敵な人が自分のようなフツーの男を選んだのには訳がある。 それは…… 限度を知らない性欲モンスターを妻に持つ男の日常

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

下宿屋 東風荘 4

浅井 ことは
キャラ文芸
下宿屋 東風荘4 ☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆*:.. 大きくなった下宿に総勢20人の高校生と大学生が入ることになり、それを手伝いながら夜間の学校に通うようになった雪翔。 天狐の義父に社狐の継母、叔父の社狐の那智に祖父母の溺愛を受け、どんどん甘やかされていくがついに反抗期____!? ほのぼの美味しいファンタジー。 ☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆*:.. 表紙・挿絵:深月くるみ様 イラストの無断転用は固くお断りさせて頂いております。 ☆マークの話は挿絵入りです。

私の食卓には、愚痴を聞いてくれる神様がいる。

柚木ゆず
キャラ文芸
 人間関係や仕事のアレコレで悩む、新人OLの月島梨奈。そんな彼女の前に産土神である七坂が現れ、不思議な一時が幕を開けるのでした――。

処理中です...