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第3章 幽体離脱警官と妖怪の子

3.眼鏡の少年

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 俺は少年を探して、暫く林の中を歩き回った。幹の裏や藪の影を覗いてウロウロしていると、少し離れた木影から白い物が飛び出しているのが見えた。多分、彼のスポーツバックだろう。

(あんな所に隠れていやがる……)

 俺はまた逃げられないよう、そっと近づこうとしたが、少年が隠れている少し後ろに、先程見かけた影が現れている事に気がついた。

 それは、まるで少年を取り込もうとするかのように、膨らみ、広がり始めている。

『危ねぇ!』

 影がまさに襲い掛かろうとした瞬間、俺は咄嗟に飛び出していた。
 それが何なのかは分からなかったが、さっきの少年の怯え方からして、何か良くないもののように思えたのだ。

 身体が少年と影との間に入ったと思った時、俺は何かに思い切り吹き飛ばされる感覚に襲われた。

『……っ!』

『兄ちゃん!』

 少年の叫び声が聞こえる。だがそれは、遠く離れた所からのようだ。

(なんだこれ……、俺は一体どうなって……?)

 身体の感覚が曖昧だった。痛みは無いが、視界と並行感覚が定まらない感じだ。

『おい、お前大丈夫か?』

 今度は直ぐ近くで声がした。だが、それもまた子どもの声のように聞こえる。

 ようやく物が見えるようになってきた。まだ霞む視界の中で、目の前に立っていたのは、黒縁眼鏡を掛けた少年だった。



 年はさっきの少年と同じ、中学生くらいに見える。

(あの子の友達か……? てか、アイツはどうなった!?)

 俺は慌てて周囲を見渡す。4~5メートル先で、トゲトゲ頭の少年は屈み込んでいた。

『黒い影は……?』

 俺が思わず呟くと、後ろに立っている眼鏡少年が答えた。

『霧散したよ。アンタらを捕まえ損なったって感じだったな……。無事で良かった……いや、お前さんはあまり無事でもないのかもしれないが……』

『え?』

 俺はそれを聞いて自分の身体を見回したが、別に変わった所はない。

『兄ちゃん! しっかりしろって!』

 今度はトゲトゲ頭の方が叫んだ。振り返ると、彼はまだ屈んだまま、こちらにではなく、地面に向かって話しかけている。

『おいおい、俺はこっち……』

 俺は笑いながら、少年の元へ数歩進む。そして、足元に転がるそれを見た。
 彼が呼び掛けていたのは、少し伸び過ぎた髪を縛り、警察官の服を着た二十歳前後の男性。

(……どーみても、俺……だよな)
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