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第5章 神と天狗と月見うどん

26.疑惑

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『ええ!?』

 一緒に居た狐とは、多分真白さんの事だろう。あの時、まさかそんな事になっていたとは。

 私達が門前に到着した時、あの場に直ぐ銀胡が現れたのは、丁度これから盗みに入るところだったのだ。

『違います! 私達と一緒に居たのは御使の狐で、銀胡が現れたのは全くの偶然で……』

『そんな戯言を信じられるとでも?』

(まずいな……)

 場が険悪な雰囲気になってきた。その時、それまで黙っていた一ノ瀬さんが口を開いた。

『……あれは正真正銘、神界に属する狐だよ。宇迦之御魂神ウカノミタマノカミの眷属さ。それは証明出来る。まあ、あの狐やこの人間と銀胡の関係がどうあれ、君達は宝が返って来ればそれでいいんだろう? 今、この場で彼を殺しても宝は返って来ないと思うよ?  まあ、そんな事、僕がさせないんだけどね?』

 そう言って微笑む一ノ瀬さんは、多分もう一ノ瀬さんではない。例の神様が降りて来ている。

 一ノ瀬さんの放つ異様なオーラに、攻撃的になっていた天狗達の空気も変わった。

『……ふん、偉そうな事言うとるが、それじゃあお前達が宝を取り戻してくれるとでも言うのかね? 出来ないなら、大人しくあの子狐を此方に寄越すんだな』

『……だってさ』

 一ノ瀬さんに宿った神様は、私の方を向いて首を傾げた。「後はお前が決めろ」という事だろう。

 私は膝の上の拳をぎゅっと握った。
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