護堂先生と神様のごはん あやかし子狐と三日月オムライス

第3章 卵焼きと仲良しキャンプカレー

17.はじめてのカレー

　その後、カレーが出来上がった班から順に食事を摂ってもらい、私も休憩を貰うとカレーを持って、一度自分のテントに引き揚げる事が出来た。

『ごめんなこむぎ、お腹すいただろう？』

『ごー？』

　私はリュックの中からこむぎを取り出して抱き上げた。ご飯だと分かったのか、きらきらと期待のこもった眼差しをしている。
　カレーは生徒達にも食べさせるかもしれないので、さほど辛くはしていないが、こむぎにも食べられるだろうか。

『口にあうかな？』

　私はカレーをスプーンですくって、こむぎの口元まで運んだ。こむぎはすんすんとそれを嗅ぐと、少し止まって不思議そうな顔をした。

『まあ、これまでの食べ物とはちょっと違う香りだろうから警戒するよなぁ……』

　私はそのまま自分が一口食べて、微笑んで見せた。食材は殆ど変わらないのに、何故か外で作って食べるカレーは美味しい。
　すると、こむぎも興味を持ったらしく、小さな手をいっぱいに伸ばしてくる。

『ほい、はじめてのカレー』

　私はもう一度カレーを運ぶ。こむぎは大きく口を開けて、今度はぱくりと食べた。

『！？』

　もぐもぐしながら、始めは此方を見上げて、何だこれはという顔をしていたものの、こむぎは直ぐにまた大きく口を開けた。

『あはは、気にいった？　雛鳥みたいだな』

　そんな和やかな空気も束の間、私はふとテントの入り口の方に何者かの気配を感じて思わず息を殺した。

（何か……居る……）

　先程ののっぺらぼうを思い出す。私はこむぎを自分の後ろに隠して、何か武器になりそうな物を探したが、折り畳み傘くらいしかない。