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第3章 墓場とラーメン

15.人間のラーメン

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『あっ、だ、大丈夫! ごめん、ぼーっとしちゃって……。あ、記事は大丈夫だから、写真撮ったらもう行こうか』

『おお、そうだな。いやー、腹も減ってきたし、ラーメン楽しみだな!』

『あっ……』

 そういえば、私と神様だけ先に食べてしまったが、宵山はまだラーメンを食べていないのだった。

『そ、そうだな……』
 
 彼だけ、はらぺこ状態のまま帰る訳にもいくまい。私は既に膨れてしまった腹をそっとさすりながらカメラを起動した。

『今度は塩か味噌が良いのう~』

 隣で神様が呑気に呟く。二杯目も食べる気満々だ。
 私は聞こえない振りをして、カメラを構えた。画面越しにも、写真映えなどまったくしない、ごく普通の道路とブロック塀が続いている。

(何だか夢でも見てたみたいだけど、しっかりお腹はいっぱいなんだよな……)

 その後駅前に向かった我々は、取材を快くOKしてくれた老舗のラーメン屋に入った。

 宵山はチャーシュー麺に餃子とチャーハンまでつけた上で、替え玉までしっかり堪能していた。

 一方で私はと言うと、車に酔ったという言い訳を拵えて、半ラーメンでその場を凌いでいた。

『だらしないのう……』

『神様は宵山のも貰ってるんだからいいじゃないですか』

 私は背後に立っている神様に小声で抗議する。彼はちゃっかり、宵山の餃子やチャーハンまで摘んでいた。

(本当に良く食うなあ……)

 大食漢の人間と神様を横目に、私はもう一度腹をさすった。
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