護堂先生と神様のごはん 幽霊屋台は薄暮を彷徨う

第2章 幽霊屋台を追いかけて

4.出発前に

『なるべく私達に話し掛けないで、大人しくしていてくださいね！』

　玄関を出る前に、私は彼の額にめり込むくらいに念を押して、仕方なく同行を承諾した。

『本来、神が旅に同行するというのはありがたい事なんじゃぞ』

　神様は私の念押しを押し返すかのように、ずいと前のめりに語った。

『そうですね。無事に取材が終わるように、ちゃんと護ってくださいね』

　私は言い争う事を諦め、溜息をついて、持って来たコートを羽織った。
　天気はイマイチで、外はかなり寒そうだ。マフラーをしっかりと巻いて、忘れ物が無いか確認する。

『しかし、夏也は地味な色ばっかり着るのう』

『ほっといてください。落ち着いた大人の色なんですっ』

　神様はいつも色々と茶々を入れてくるが、玄関を出てからは、もう彼の方を気にしないように努めた。

　寒空の下、ジャケット姿でマフラー無しといった出立の宵山が立っていた。彼はこちらに気付くと軽く手を上げて微笑む。

『身体の作りが違うと、寒さにも強くなれるもんじゃの』

『彼はきっと、小学生の時一年中タンクトップ着てたタイプの少年だったんですよ……』

　私は目を合わせず小声で神様に抗弁して、宵山のミニバンに乗り込んだのだった。