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第二章 財政対策
第十三話
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ヘアピンを買って店から出た徹也は、店の外で待っていた真未の元まで来ていた。徹也は真未の元にたどり着いてから、真未に買ったヘアピンの内二つを差し出す。
「ありがとー!……ん?何で二つも?」
真未の疑問はもっともだろう。真未は徹也にヘアピンを一つしか渡していないのだ。なぜ二つも渡されたのか分からないはずだ。
「ああ。一つは真理の分だ。お前だけに買うっていうのは、ちょっとな」
徹也のその言葉に、真未は少し不機嫌になった。自分だけではなかったのか、と思ったからだ。だが、真未の分と言われれば文句は言えない。
実際は、徹也がヘアピンをもっと買っていることなど、真未は知る由もなかった。
「……ふーん。ま、いいけど。でも、真理のは返す」
真未はそう言って、ヘアピンを一つ徹也に返した。それに対して、徹也はなぜ返したのかを問いただす。
「いや何でだよ?真未から渡してくれればいいだろ?」
「その必要はないって」
「だから何で!?」
徹也は真未から真理に渡せばいいのに、なぜ真未がここまで言うのか分からなかった。すると真未が、その理由を話す。
「だって、今から真理に会いに行くから」
「……は?え?今から?」
徹也は真未が何を言っているのか、一瞬分からなかった。確かに絶対行きたいところがあるとは言っていたが、まさか真理のところだとは思ってもみなかったのである。
「ん。そ。絶対行きたいって言ったでしょ。ほら、行くよ」
「ち、ちょっと待て。なんで真理のところに行きたいんだよ?何かあるのか?」
真未が徹也を急かすが、徹也はなぜ真理の元へと行くのか問いただした。今までも真未と二人で出かけたことは地球にいた頃に何度かあったが、そのいつであっても真理の名前を出すと怒られたからだ。
そんな真未が、二人で出かけているのにも関わらず、自分から真理の名前を出すことを、徹也は信じられなかった。あまつさえ、これから会いに行くというのだから徹也が驚くのも仕方がないといえる。
「別に何も?ただ、久しぶりに幼馴染達で話したいって思っただけ。悪い?」
「い、いや……。別に悪くないが、珍しいなと……」
「そう?まあ、いいじゃん」
徹也のその言葉に、真未は軽くそう返した。そして真未は、徹也の手を引いて歩き始める。
徹也は歩きながら、真未に尋ねた。まだまだ聞きたいことがあったからだ。
「真理は知ってるのか?俺達が行くこと」
「知らない。電撃訪問ってやつ?」
徹也の問に、真未はひょうひょうとそう答えた。その答えにまたしても、徹也は驚く。
(あれだけ言うなら、てっきりすでに伝えているもんだと思ったんだが……。まさかのアポ無しかよ……)
徹也はそう思い、ため息を吐いた。真理に伝えていれば、そもそも最初から呼べばよかったじゃないかと徹也は考えたのだ。
だが真未からすれば、徹也と二人で出かけるということ自体に価値があるのだ。だからこそ、真未は真理に徹也とのデートを伝えなかったのである。
「もういいでしょ?早く行くし」
「……分かったよ」
真未のその言葉に、徹也は渋々ながらも頷いた。するとその後、真未が歩くペースを上げた。それを追って、徹也も歩くペースをあげたのだった。
「ありがとー!……ん?何で二つも?」
真未の疑問はもっともだろう。真未は徹也にヘアピンを一つしか渡していないのだ。なぜ二つも渡されたのか分からないはずだ。
「ああ。一つは真理の分だ。お前だけに買うっていうのは、ちょっとな」
徹也のその言葉に、真未は少し不機嫌になった。自分だけではなかったのか、と思ったからだ。だが、真未の分と言われれば文句は言えない。
実際は、徹也がヘアピンをもっと買っていることなど、真未は知る由もなかった。
「……ふーん。ま、いいけど。でも、真理のは返す」
真未はそう言って、ヘアピンを一つ徹也に返した。それに対して、徹也はなぜ返したのかを問いただす。
「いや何でだよ?真未から渡してくれればいいだろ?」
「その必要はないって」
「だから何で!?」
徹也は真未から真理に渡せばいいのに、なぜ真未がここまで言うのか分からなかった。すると真未が、その理由を話す。
「だって、今から真理に会いに行くから」
「……は?え?今から?」
徹也は真未が何を言っているのか、一瞬分からなかった。確かに絶対行きたいところがあるとは言っていたが、まさか真理のところだとは思ってもみなかったのである。
「ん。そ。絶対行きたいって言ったでしょ。ほら、行くよ」
「ち、ちょっと待て。なんで真理のところに行きたいんだよ?何かあるのか?」
真未が徹也を急かすが、徹也はなぜ真理の元へと行くのか問いただした。今までも真未と二人で出かけたことは地球にいた頃に何度かあったが、そのいつであっても真理の名前を出すと怒られたからだ。
そんな真未が、二人で出かけているのにも関わらず、自分から真理の名前を出すことを、徹也は信じられなかった。あまつさえ、これから会いに行くというのだから徹也が驚くのも仕方がないといえる。
「別に何も?ただ、久しぶりに幼馴染達で話したいって思っただけ。悪い?」
「い、いや……。別に悪くないが、珍しいなと……」
「そう?まあ、いいじゃん」
徹也のその言葉に、真未は軽くそう返した。そして真未は、徹也の手を引いて歩き始める。
徹也は歩きながら、真未に尋ねた。まだまだ聞きたいことがあったからだ。
「真理は知ってるのか?俺達が行くこと」
「知らない。電撃訪問ってやつ?」
徹也の問に、真未はひょうひょうとそう答えた。その答えにまたしても、徹也は驚く。
(あれだけ言うなら、てっきりすでに伝えているもんだと思ったんだが……。まさかのアポ無しかよ……)
徹也はそう思い、ため息を吐いた。真理に伝えていれば、そもそも最初から呼べばよかったじゃないかと徹也は考えたのだ。
だが真未からすれば、徹也と二人で出かけるということ自体に価値があるのだ。だからこそ、真未は真理に徹也とのデートを伝えなかったのである。
「もういいでしょ?早く行くし」
「……分かったよ」
真未のその言葉に、徹也は渋々ながらも頷いた。するとその後、真未が歩くペースを上げた。それを追って、徹也も歩くペースをあげたのだった。
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