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第一章 追放対策
第三十八話
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刀を鞘に納めた刀夜は、徹也の方に歩いてきて徹也に手を差し出す。
「立てる?才無佐君」
「はい。大丈夫です。ありがとうございます。先生」
徹也は刀夜の問にそう答え、刀夜の手を取り立ち上がる。徹也の答えを聞いた刀夜は、小さく笑って徹也に言葉を返す。
「大丈夫よ。約束したでしょう?」
「……はい。それより、ヴァン・ルーカスは……」
「……そうね」
徹也と刀夜はヴァンの方を見る。その方には、土煙が止んでヴァンが倒れていた。徹也と刀夜がヴァンの方に向かうと、ヴァンがその場で立ち上がろうとしていた。
それを見た刀夜は、鞘から刀を抜いてヴァンの首筋にその刀を突きつける。それによって、ヴァンは立ち上がれなかった。
「……動かないでください。動いたら、切りますよ」
「っ……!」
刀夜がそう言うと、ヴァンは苦い顔をして刀夜と徹也を睨みつける。それを見た徹也は、チラリと真横を見る。
すると、徹也が見た方向から一人の男が現れた。それに気付いたヴァンは、苦しみながらその方を見る。そしてその人物を見たヴァンは、目を見開いて驚愕した。そこにいるとは思わなかった人物が、目に入ったからである。
「……これは、どういう状況かな?」
「……なぜ、お前がここにいるっ……!ヘンリー・スカーレット!」
現れたのは、財務大臣のヘンリー・スカーレットであった。だが、その登場に驚いていたのはヴァンだけであった。
「……才無佐君が、ヴァン・ルーカス団長に襲われました。殺されかけたんです」
「なんと……!それは問題だ。ヴァン・ルーカス団長の身柄はこちらで預かろう。クリス」
「はい。兄様」
刀夜の説明に、ヘンリーがそうわざとらしくそう答えた。そして、ヘンリーがクリスの名を呼ぶと、ヘンリーが現れた方向からクリスが現れた。その側には、スカーレット派の騎士達に加え、治伽達もいた。
クリスらスカーレット派の騎士に取り押さえられたヴァンは、徹也を睨んで言葉を発する。
「ここまでっ……全て想定通りとでも言うのかっ……!」
「……さあ?なんのことやら」
「とぼけるな!……っ!?」
ヴァンがそう叫び徹也に近づこうとしたが、クリスに止められる。クリスはヴァンの肩を掴みその動きを止め、ヴァンに声をかけた。
「動かないでください。今のあなたは罪人です。勝手な行動は許しません」
「クリス……!貴様ぁ……!」
「行きましょう。ヴァン団長。兄様。才無佐君の方は頼みます」
「ああ。任された」
クリスはヘンリーにそう伝えると、他のスカーレット派の騎士達と共にヴァンを連行していった。それを見送ったヘンリーは、徹也の方に向き直る。
「……さて。上手くいったな。いやはや、恐れ入ったよ。まさか、ここまで君の言う通りになるとは」
「……偶然ですよ。まあ、備えもしてあったので、死ぬことはなかったでしょうけど」
そう淡々と返した徹也に対して、ヘンリーは衝撃を受けた。怪我をしているにも関わらず、何事もなかったかのような淡々とした返し。ヘンリーは全く恐れていない徹也に感服したのである。
「……末恐ろしいな。君は」
「……はい?何を言って――」
「徹也君!」
徹也はヘンリーの言葉の真意を問おうとしたが、優愛の言葉に遮られてしまった。徹也が優愛の方を向くと、優愛が徹也の肩を掴んできた。
「うおっ!な、なんだよ優愛?」
「なんだじゃないでしょ!また、怪我して……!無理してほしくないって言ったよね!?」
「そ、それは……。すまん……」
「治すから動かないで!もう……。徹也君になにかあったら、私……」
優愛はブツブツと呟きながら、徹也の傷を治していく。そんな優愛の様子に、徹也は少し恐怖を感じてしまう。
すると、優愛と徹也の側に治伽と舞、それに将希に洋助、忠克が近づいてきた。そして、次々と徹也に話しかけてくる。
「て、徹也君!大丈夫!?」
「……ああ。ちょっと痛むが、問題ない。今、優愛に治してもらってるしな」
「そ、そっか。なら、いいんだけど……」
舞は徹也の返事に、ひどく安堵した。徹也の様子を見て、舞は本当に心配していたのである。舞が安堵すると、続けて忠克もまた安堵していた。
「本当に良かったぜ……。才無佐に大した怪我がなくてよ」
「心配かけて悪かったな。友居」
徹也が忠克にそう返すと、将希と洋助も徹也に話しかけてきた。クラスメートが襲われたのだ。誰でも心配になる。
「……よく死ななかったな、才無佐。てっきり、戦えないんだと思ってたんだが……」
「まあ、な。なんとか耐えれたよ。先生がいなかったら、死んでたと思う」
将希の疑問に、徹也はそう答えた。将希は徹也の答えを聞いて、顔を固くする。
「……そうか。姉さん、いや、先生に感謝しろよ」
「……ああ。感謝してるよ。本当に」
洋助の言葉に、徹也は真剣な言葉で答えた。そんな徹也の言葉を聞いた洋介は、少し眉をひそめたが、すぐに表情を戻した。
そして最後に、治伽が徹也と目を合わせる。そして、治伽が微笑んで徹也にこう伝えた。
「……お疲れ様。徹也君」
治伽のその言葉に、徹也少し照れて頬を掻いてから、治伽に言葉を返す。
「……ああ。ありがとう」
一体、徹也は魔物狩りが終わってから約一週間の間に、どのような傾向と対策をしたのだろうか。時はまた、一週間前の時へと遡る――。
「立てる?才無佐君」
「はい。大丈夫です。ありがとうございます。先生」
徹也は刀夜の問にそう答え、刀夜の手を取り立ち上がる。徹也の答えを聞いた刀夜は、小さく笑って徹也に言葉を返す。
「大丈夫よ。約束したでしょう?」
「……はい。それより、ヴァン・ルーカスは……」
「……そうね」
徹也と刀夜はヴァンの方を見る。その方には、土煙が止んでヴァンが倒れていた。徹也と刀夜がヴァンの方に向かうと、ヴァンがその場で立ち上がろうとしていた。
それを見た刀夜は、鞘から刀を抜いてヴァンの首筋にその刀を突きつける。それによって、ヴァンは立ち上がれなかった。
「……動かないでください。動いたら、切りますよ」
「っ……!」
刀夜がそう言うと、ヴァンは苦い顔をして刀夜と徹也を睨みつける。それを見た徹也は、チラリと真横を見る。
すると、徹也が見た方向から一人の男が現れた。それに気付いたヴァンは、苦しみながらその方を見る。そしてその人物を見たヴァンは、目を見開いて驚愕した。そこにいるとは思わなかった人物が、目に入ったからである。
「……これは、どういう状況かな?」
「……なぜ、お前がここにいるっ……!ヘンリー・スカーレット!」
現れたのは、財務大臣のヘンリー・スカーレットであった。だが、その登場に驚いていたのはヴァンだけであった。
「……才無佐君が、ヴァン・ルーカス団長に襲われました。殺されかけたんです」
「なんと……!それは問題だ。ヴァン・ルーカス団長の身柄はこちらで預かろう。クリス」
「はい。兄様」
刀夜の説明に、ヘンリーがそうわざとらしくそう答えた。そして、ヘンリーがクリスの名を呼ぶと、ヘンリーが現れた方向からクリスが現れた。その側には、スカーレット派の騎士達に加え、治伽達もいた。
クリスらスカーレット派の騎士に取り押さえられたヴァンは、徹也を睨んで言葉を発する。
「ここまでっ……全て想定通りとでも言うのかっ……!」
「……さあ?なんのことやら」
「とぼけるな!……っ!?」
ヴァンがそう叫び徹也に近づこうとしたが、クリスに止められる。クリスはヴァンの肩を掴みその動きを止め、ヴァンに声をかけた。
「動かないでください。今のあなたは罪人です。勝手な行動は許しません」
「クリス……!貴様ぁ……!」
「行きましょう。ヴァン団長。兄様。才無佐君の方は頼みます」
「ああ。任された」
クリスはヘンリーにそう伝えると、他のスカーレット派の騎士達と共にヴァンを連行していった。それを見送ったヘンリーは、徹也の方に向き直る。
「……さて。上手くいったな。いやはや、恐れ入ったよ。まさか、ここまで君の言う通りになるとは」
「……偶然ですよ。まあ、備えもしてあったので、死ぬことはなかったでしょうけど」
そう淡々と返した徹也に対して、ヘンリーは衝撃を受けた。怪我をしているにも関わらず、何事もなかったかのような淡々とした返し。ヘンリーは全く恐れていない徹也に感服したのである。
「……末恐ろしいな。君は」
「……はい?何を言って――」
「徹也君!」
徹也はヘンリーの言葉の真意を問おうとしたが、優愛の言葉に遮られてしまった。徹也が優愛の方を向くと、優愛が徹也の肩を掴んできた。
「うおっ!な、なんだよ優愛?」
「なんだじゃないでしょ!また、怪我して……!無理してほしくないって言ったよね!?」
「そ、それは……。すまん……」
「治すから動かないで!もう……。徹也君になにかあったら、私……」
優愛はブツブツと呟きながら、徹也の傷を治していく。そんな優愛の様子に、徹也は少し恐怖を感じてしまう。
すると、優愛と徹也の側に治伽と舞、それに将希に洋助、忠克が近づいてきた。そして、次々と徹也に話しかけてくる。
「て、徹也君!大丈夫!?」
「……ああ。ちょっと痛むが、問題ない。今、優愛に治してもらってるしな」
「そ、そっか。なら、いいんだけど……」
舞は徹也の返事に、ひどく安堵した。徹也の様子を見て、舞は本当に心配していたのである。舞が安堵すると、続けて忠克もまた安堵していた。
「本当に良かったぜ……。才無佐に大した怪我がなくてよ」
「心配かけて悪かったな。友居」
徹也が忠克にそう返すと、将希と洋助も徹也に話しかけてきた。クラスメートが襲われたのだ。誰でも心配になる。
「……よく死ななかったな、才無佐。てっきり、戦えないんだと思ってたんだが……」
「まあ、な。なんとか耐えれたよ。先生がいなかったら、死んでたと思う」
将希の疑問に、徹也はそう答えた。将希は徹也の答えを聞いて、顔を固くする。
「……そうか。姉さん、いや、先生に感謝しろよ」
「……ああ。感謝してるよ。本当に」
洋助の言葉に、徹也は真剣な言葉で答えた。そんな徹也の言葉を聞いた洋介は、少し眉をひそめたが、すぐに表情を戻した。
そして最後に、治伽が徹也と目を合わせる。そして、治伽が微笑んで徹也にこう伝えた。
「……お疲れ様。徹也君」
治伽のその言葉に、徹也少し照れて頬を掻いてから、治伽に言葉を返す。
「……ああ。ありがとう」
一体、徹也は魔物狩りが終わってから約一週間の間に、どのような傾向と対策をしたのだろうか。時はまた、一週間前の時へと遡る――。
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