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第二章

19.見つめるスライム

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「そうか」

『そうか……って、随分あっさりしてるなぁ! もうちょっとこう、何かあるでしょ?! みんなとお別れなんだよ?!』

「もう決めた事なのだろう? なら好きにすれば良い」

『んもー、これだからアインはっ!』

 ボクほどじゃないにしても、アインだってクリス達に馴染んでたのに!
 ちょっとぐらい驚いたり別れを惜しんだりしてもいいのにさ~。

 しょうがないから勝手に会話続けちゃうもんねっ!

『ティナがクレリックだって聞いた時、なんてナイスタイミングなんだろ~って思ったよ』

「お前が抜けた穴に丁度良いからな」

 アインの言い方がちょっとアレだけど、確かにその通りなんだよね。
 ボクがパーティーから抜ける不安要素は大きく二つだ。

 まず、ボクが抜けたらフェリのテイマーとしての価値が下がってしまうこと。
 そもそもフェリはポーターとしてパーティーに加入したからね……。
 収納が使えるボクが居なくなったら、ポーターとしての役目は果たせない。
 でもフェリは随分と頼もしくなった!
 戦力的にもパーティーのバランス的にも、今ならメンバーとして正式加入できると思うんだよね。

 次に、みんなの心配。
 このパーティー、回復役がボクしかいないんだもんなぁ。
 あとついでに言うと、荷物を収納するっていう旅の補助的な役目も担ってる。
 ボク自身が大きな戦力ってわけじゃないけど、抜ける穴はそれなりにあると思うんだよね。
 でもこれは、ティナが来てくれたことで解決したかな。
 回復はもちろん、クレリックには便利なスキルもいっぱいあるから、旅の負担も軽くできそうだしね。
 まぁこれはボクが勝手に考えてるだけだし、ティナが責任を感じるのもイヤだから黙っておこーっと。

『それに、新しいスキルのおかげっていうのもあるよ。これなら、いつでもフェリ達に会いに行けるからね!』

「影渡りか……多少時間はかかるが、あれは便利だからな」

 フェリ達が今どこにいるか分からなくても移動が出来るっていうのが大きいよね!
 距離が開くと移動に時間がかかるけど、確実に辿り着けるんだから良いスキルだよねぇ。

『アインも連れて行けたら一番なんだけど……ゴメンね?』

「別に良いさ。一生会えないというわけでもあるまい。本当に会いたいならば会いに行けば良い」

『うん……そうだよね!』

 ふふ、また会うつもりがあるってことだよね。
 やっぱりアインもクリス達のことは気に入ってたんだなぁ!

「しかし、あの竜人の子は良いのか。従魔だかペットだか知らんが、そういうつもりで一緒にいたんだろう?」

『ちょっと、誰がペットだよっ!』

 従魔は世間をあざむく仮の姿!
 本当は……お父さんなんだいっ!

 って、話がれちゃうじゃないか!

『んー、まぁね、フェリの気持ちも考えたんだけどさ……。でもクリス達もいるし、今なら離れても大丈夫かなー、一人立ちするには良い機会かなー、ってね』

 最初の頃は不安な顔をして怯えていることも多かったフェリ。
 でも今は、信頼できる仲間……クリス達がいる。
 まだまだ引っ込み思案だし、心配が無くなったわけじゃないけどね。
 でも冒険者として身を立てる目処めども立ったことだし、大丈夫だと思う。

 せめて双剣術士のクラスについてからとか、成人するまでとか、お嫁さんが見つかるまでとか……色々と理由をつけることもできたけどね!
 でも、ずるずると先延ばしにしたら、ホントに離れられなくなっちゃいそうだし……。

 って、これじゃあ誰の『一人立ち』か分かったもんじゃないねぇ……。
 でも、ボクだって寂しいものは寂しいんだいっ!

『パーティーメンバーとして、フェリのお父さんとして、今が一番良いタイミングだと思うんだ。だから、明日になったらフェリに言うよ』

「そうか……」

 心なしか、アインも寂しげに見える。
 ボクが寂しいと思ってるから、そう見えるだけかな?

『アインはホントに良いの? ボクについて行くって言ってたけど』

「ああ……俺にこれといった目的は無いからな。元々言っていた通り、お前と一緒に世界を旅するのも悪くない」

 まだボクが二ノ神だった時に交わした言葉だ。
 ちゃんと覚えてくれてたんだね!

『そうだね! 色んなところを旅して、フェリ達にいっぱいおみやげ話をしてあげよーっと♪』

「……そうすると良い」

『楽しみだね、アイン!』

「……ああ、そうだな」


 一通り話し終えたボク達は、部屋に戻って休むことにした。

 眠れないボクは、すやすやと眠るフェリの顔を見つめていた。
 しばらく見納めになるだろう――次に会う時は変わっているだろう、あどけない顔を。
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