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第二章

12.スライムの想い

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 えっ、普通はブラックスライムの間しか収納は使えないの?

 クリスは勉強家だから、モンスターにもわりと詳しいんだよね。
 クリスが知らないって言うんなら、ホントに使えないのかもしれない……。

「コイツは規格外だからな。普通のモンスターの常識は当てはまらんぞ」

『ちょっとアイン! それ、褒めてるの? 貶《けな》してるの?』

 ――ぽいんっぽいんっ!

「事実を言ったまでだ」

 んもー、それならもうちょっとカッコ良く言ってよね!
 スーパーウルトラすごいスライムだから特別に使えるんだー、とかさ!

「ねぇ、ニイムちゃんってそんなに変わってるの?」

「傷治したりモンスター食ったり、まぁ普通じゃねえわな」

「言われてみればそうか……。食べるのはまだしも、スライムの細胞で傷を治すなんていうのは初耳だったしな」

 おや、そういえばそうか。
 聞けば何でもリーリオが教えてくれるから深く考えなかったけど、ボクも聞いたことないスキル名だ。

『まー世界で唯一のニイムちゃんですし~? 特別でサイコーなボクですし~?』

「あはは……」

「……」

『その通りですニイムさん~♪ える・おー・ぶい・いー! に・い・むっ!』

 ダメだ。
 ボクの声が聞こえるメンバー、ツッコミ不在だった。
 とりあえずリーリオ。君はまた後でね。

 ボクのボケはスルーされたまま、話は進んでいく。

「ところでよ。進化っつっても、次はどんなスライムになるんだ?」

「スライムの進化っていっぱいあるからなぁ……俺も全部は覚えてないよ」

「ニイムちゃんスゴイし、いっそスライムじゃなくなったりして!」

「オメーなぁ……」

 シーロは呆れ顔だけど、セシリアの言うことも有り得なくはない? かも……。
 だってボクだし……。

「ニイムは、こうなりたい……とか、あるの?」

『うーん、強くなりたいなぁとは思ってるけど、具体的にこうっていうのは無いかな~?』

 そもそも、強くなりたい理由もそんな大したものじゃないしね。
 死にたくないとか、フェリ達を守りたいとか、そういう普通の理由。
 だから力さえあれば、形は何でも良いんだ~。

「……それ・・は、本当の望みか?」

『え?』

「本当に強くなりたいと思っているのなら、具体的に考えるのが普通だろう。お前の本当の望みは他にあるんじゃないのか」

 ……。

 そう、なのかな……。

 アインに言われて気づいた。
 確かに「強くなれたらいいな~」とは思ってるけど、絶対に何が何でもっていう強い意思があるわけじゃないもんね……。
 でも、他に何かあったっけ……?

 最初一人で居た頃は、とにかくスライム生を楽しみたいと思ってたんだよね。
 だってそのために転生までしたんだもん!

 今も、楽しんでるとは思うよ?
 フェリやクリス達と一緒にいるのは楽しいし、レベル上げたりダンジョンに潜るのも楽しい。
 でも、これがボクのやりたかったスライム生なのかっていうと……どうなんだろう。
 
 『前のボク』だったら、何て言うかな……?

「オメー、スライム相手によくそんなクソマジメなこと言えんなぁ」

「……古い仲だからな」

「スライムと古い仲ってだけでも十分変わってら」

「んもー、シーロってば、またそういう言い方する~! ごめんね、アイン」

「なんでオメーが謝るんだよ」

「あんたが謝らないからでしょっ!」

 ……ふふっ、みんなと一緒にいると楽しいってのは間違い無いね!
 
 そうだ、ボクはみんなと離れたくない。
 前のボクが考えてたことは思い出せないけど……今はこの想いだけでも良いよね!
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