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37.幸運の行方

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 朝っぱらから体を重ねたので意識が覚醒したのが昼前。
 寝落ちしかけているアルトにことわってお風呂を借り(スポンジがひつじ型だった)、着替えて昼飯でも作るかとキッチンに立つ。

 もちろんパンツは俺のに変えたよ!

 「僕もお風呂行ってくる~」と2度寝から覚めたアルトを見送り、パンを焼いて目玉焼きを載せただけの簡単昼ごはんの出来上がり。
 早くルーに教わってちゃんとご飯作れるようになりたいんだけど。

 いかん寂しくなってきた。


「お昼ご飯だ!ありがと~!」

 お風呂から上がったアルトがシャンプーのいい香りを漂わせて駆けてくる。
 俺も同じシャンプー使ったから同じ香りのはずだって?
 あるだろ、花の香りが似合う人種と似合わない人種って。人種っていうか羊だけど。

 アルトの私服はフリフリのシャツワンピースだ。うん可愛い!
 だが男だ。
 しかも結構でかい。ナニがとは言わないが。



「僕の幸運は数日くらい保つと思うよ。今日はルーのこと探しに行くの?」

 パンをもぐもぐさせながらアルトが尋ねる。

「うん、心配だし……早く会いたいしな」

「何事もないといいね。肉食獣は気性荒い人多いから気をつけてね」

「うん、ありがと」

 どこを探すかの検討も付かないけど、アルトがここまでしてくれたんだ。アルトの幸運は1度軽く体験したけどお墨付き。手がかりくらい見つけてみせる!



 華寮を抜けて、なんとなく学校の方に歩いてみる。やっぱり授業中は学校周り誰もいないな。

 「なんとなくこっち」の感覚に従い、今まで気にしたこと無かった校庭のプレハブ小屋に辿り着く。と、中から話し声が聞こえる。


「なあ、いいのかなあ~このままで」

「知らねえよ。仕方ねえだろ」

「でも花嫁のことガル一族に報告したの俺たちじゃん?やっぱ新しい人間のこと言っちゃダメだったんじゃないかな、あれもうルーさん死んじゃうよ~」

 ルーが死ぬ!?

 どういうことだ。もう少し話し声が聞こえないか、と扉に近付くと、突然扉を蹴るような大きな音がして思わず飛び退る。

「うるせえなグチグチと!報告なんて下っ端の俺達がいつもしてんだろ!今更……ん?なんか変な匂いしねえか」

「えー、あー本当だ。羊……?いやなにこれ」

「誰か居んのか、そこに」

 全力でプレハブから離れる。
 側の校舎の影に入り、プレハブ小屋から出てくる人達を観察する。

 小柄な黒髪の人と、ルーくらい大柄な灰色の髪の人。黒髪の方はツンツン髪を立てていていかにもヤンキーっぽい。灰色の人は、あれ前見えてるんだろうか。モサモサで長い前髪で完全に目が隠れている。
 あっ灰色の人背中蹴られた。
 そして小柄な人がなんか叫んでる。喧嘩だろうか。

 このままでは見つかる……とそっと離れて校舎内へ向かう。

 丁度授業が終わったようで、混んできた人波に加わることができた。
 どこかで一旦整理したいな。
 ルーは一族から監視されている……みたいな内容だったような。何でだ?死ぬってなんで?ルーは何をされている?
 分からないことだらけで頭がごちゃごちゃしてきた。

 一度寮に戻ろう。と振り返ったところで、知らない人にぶつかってしまう。

「ぶっ!ご、ごめんなさい」

 背の高いその人を慌てて見上げると、

「やっぱり、さっきの花嫁さんだ~。お話ちょっといい?」

 灰色の前髪の隙間から鋭い金の目がこちらを見据えていた。
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