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29.悪魔との約束とブラッシング
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「ふうー、ご馳走様でした。気持ちよかったあー。優希大丈夫?」
「だ、じょぶじゃ、ない」
四肢を投げ出し息も絶え絶えで答える。
「む、無理矢理しやがって……」
「はははー。人のことあそこまで興奮させたのはどこの誰だったかなあ?」
誰だそいつは!全く信じられん!人の興奮を煽るような真似はしてはいけません!
「ふー、あんなに理性飛んだの初体験ぶりかも……優希もお疲れ様。だいぶ魔力もらっちゃったねぇ」
「……ん?俺、魔力なんてないけど…」
「あるんだっての。向こうの世界ではまともに使えないだけだろお」
ベルクスは尻尾をフリフリ揺らしながら、キッチンから水の入ったペットボトルを取ってきてくれた。
「ほーらよっ」
どうにか起き上がろうとして断念して、寝転んだまま水を受け取る。
「あ、ありがと。あの、俺に魔力がもしあるなら何かできたりするのか?」
蜘蛛の糸を出したり。
馬鹿力が出たり。
あと翔んだり?
もしかして……魔法が使えたり?
「はは、無理じゃね?」
そしてあっさり打ち砕かれた。
「まあ人間が濃い魔力持ちなお陰で無事に世界間移動できてるわけだし、あと繁栄するって大事にされてるわけだし。それでいいんじゃないのお?」
そんなもんか……。人間の魔力の使い所、そんなもんか。宝の持ち腐れってやつでは?
「大事にされてるって、自分より大きな男相手にケツ掘られるばっかりじゃん……はー、俺の初体験がヤンデレな大蜘蛛とか」
しかも1週間で3人。
1週間前の俺、覚悟してくれ。お前の尻に威厳などない……いや初めから無いけど。
思わず手で顔を覆う。
「なーにー?そんなこと気にしてんだ?じゃ次は俺の尻使っていいよお。脱童貞オメデトー」
「んえ!?」
痛む尻なんて物ともせず思わず飛び上がってしまう。
「い、いいの……?」
「ははー、俺は気持ちよければなんでもオッケー」
今だけはこのにんまり笑う悪魔が天使に見える。悪魔だけど。
「ただしあんまり下手だと交代な」
やっぱり悪魔だけど。
ベルクスが魔力をだいぶ吸ったようで、もう淫夢は見なくて済むらしい。「淫夢見たらそれがサインだからいつでも抱かれにおいで。明日でもいいよお」とか抜かしていたが次がいつになるかは分からない。
抱かせてくれる約束はそのうちきっちりと守ってもらいたい所である。
その大きいおっぱいも揉ませてください。
ふらつく体でどうにか支度を終え、部屋を後にする。日が落ちるまではまだ時間がありそうだな……かと言って外に出る体力はない。俺のライフはもうゼロだ!
ルーの部屋に帰るか温室か迷って、そういえば読みたい本『火を噴く生き物たち』の存在を思い出して温室に行くことにする。
先日と同じくステンドグラスの扉を開け、煉瓦道を辿っていく。
思い切り息を吸うと、緑と土と、少しだけ埃っぽい匂いがする。癒される。
煉瓦道の先のテラスで、へスターは机に頭を置いて寝入っていた。机には木々と大きな葉の隙間から優しい木漏れ日が降り注いでいる。
──ああ、言ってた趣味の日光浴か。
起こさないようにそっと向かいに座り、散乱していた本の中から探していた題を見つけ頁を進める。
久々に穏やかで優しい時間が過ぎていた。
「……ん、ゆうき?」
太陽光がオレンジに変わる頃、へスターがモゾモゾと動いて起きた。
「おはようへスター。本借りてるよ」
「……ん」
ぬるりと体を伸ばすと、目を細めながらへスターが言う。
「明日……ここで育てる植物の……株分けがある」
「ふうん?株分けってことは誰かにあげるのか」
「ん……学校に寄付……。1人じゃ大変……」
そこでようやく言わんとしていることを理解する。
「ああ!人手が必要なら手伝うよ。俺一人で大丈夫なのか?誰か呼ぶ?」
「優希だけ……」
へスターは少し微笑んでこっくり頷いた。
日が完全に暮れる前に温室をお暇し、ルーの部屋に帰る。
ただいまーと扉を開けると、少しむくれた様子のルーが出向かてくれた。
「お帰り優希。そういう事だと思ったよ」
「え?なんだよ急に。何が?」
そこでハッと気付く。そういえばイトナに襲われた日もこんな様子だったような。もしかしなくてもベルクスとのことがバレている……?
「えっと、なんか、ごめん」
危機感を持てって何度も言われていたのにまたやらかしたのか?俺は。
「~~っ」
ルーが片手で頭をガシガシ掻きながら、
「俺が言うことじゃないって分かってんだよ。そもそも『花嫁が候補の男の部屋に行くのを邪魔してはいけない』って取り決めがあるのもそういうことだしな」
なんだそれ初めて聞いたんだけど!?
花嫁に対する取り決めを花嫁本人が知らないってそれはどうなの!?いいのか!?
ルーは大きく溜息を吐いた後、
「夕食後俺のブラッシングをしてくれ。それでいい」
と俺にとって大変ご褒美な条件を提案したのだった。
夕食はオムライスで、俺の分にはケチャップで大きくヒヨコの絵が描かれてあった。
これ絶対昨日の当て付けだろ!オムライス美味しかったけど!!
もう軽率にビックサイズには挑戦しません!
風呂から上がるルーを今か今かと待ち、その日俺はようやく念願の狼姿を拝むことができたのだった。
現代で狼はそうそう見る機会なんてなく、なんとなく「大きい犬なのかな」程度に思っていた俺は猛反した。
胸板は厚く、手足は長く、ルーの頭だけでも俺の頭の1.5倍程大きい。
こう見ると夢に出てきた狼より随分大きいな……やっぱりあれはベルクスだったのか。
目付きは鋭く、鋭い歯並びからは大きな牙が覗いている。そして……、
その歯に大きいブラシを咥え、尻尾を振りながらトテトテとやってきた。
……野生を忘れた狼なんてもう狼ではないのでは……?
俺の膝に前足を載せ、1度顔を舐めてから座り込む。
「いいぞ」
うっ…可愛い…こんなに格好良いのに……!
ブラッシングする前に思い切りそのもふもふの赤い体に抱き着いたのは言うまでもなかった。
「だ、じょぶじゃ、ない」
四肢を投げ出し息も絶え絶えで答える。
「む、無理矢理しやがって……」
「はははー。人のことあそこまで興奮させたのはどこの誰だったかなあ?」
誰だそいつは!全く信じられん!人の興奮を煽るような真似はしてはいけません!
「ふー、あんなに理性飛んだの初体験ぶりかも……優希もお疲れ様。だいぶ魔力もらっちゃったねぇ」
「……ん?俺、魔力なんてないけど…」
「あるんだっての。向こうの世界ではまともに使えないだけだろお」
ベルクスは尻尾をフリフリ揺らしながら、キッチンから水の入ったペットボトルを取ってきてくれた。
「ほーらよっ」
どうにか起き上がろうとして断念して、寝転んだまま水を受け取る。
「あ、ありがと。あの、俺に魔力がもしあるなら何かできたりするのか?」
蜘蛛の糸を出したり。
馬鹿力が出たり。
あと翔んだり?
もしかして……魔法が使えたり?
「はは、無理じゃね?」
そしてあっさり打ち砕かれた。
「まあ人間が濃い魔力持ちなお陰で無事に世界間移動できてるわけだし、あと繁栄するって大事にされてるわけだし。それでいいんじゃないのお?」
そんなもんか……。人間の魔力の使い所、そんなもんか。宝の持ち腐れってやつでは?
「大事にされてるって、自分より大きな男相手にケツ掘られるばっかりじゃん……はー、俺の初体験がヤンデレな大蜘蛛とか」
しかも1週間で3人。
1週間前の俺、覚悟してくれ。お前の尻に威厳などない……いや初めから無いけど。
思わず手で顔を覆う。
「なーにー?そんなこと気にしてんだ?じゃ次は俺の尻使っていいよお。脱童貞オメデトー」
「んえ!?」
痛む尻なんて物ともせず思わず飛び上がってしまう。
「い、いいの……?」
「ははー、俺は気持ちよければなんでもオッケー」
今だけはこのにんまり笑う悪魔が天使に見える。悪魔だけど。
「ただしあんまり下手だと交代な」
やっぱり悪魔だけど。
ベルクスが魔力をだいぶ吸ったようで、もう淫夢は見なくて済むらしい。「淫夢見たらそれがサインだからいつでも抱かれにおいで。明日でもいいよお」とか抜かしていたが次がいつになるかは分からない。
抱かせてくれる約束はそのうちきっちりと守ってもらいたい所である。
その大きいおっぱいも揉ませてください。
ふらつく体でどうにか支度を終え、部屋を後にする。日が落ちるまではまだ時間がありそうだな……かと言って外に出る体力はない。俺のライフはもうゼロだ!
ルーの部屋に帰るか温室か迷って、そういえば読みたい本『火を噴く生き物たち』の存在を思い出して温室に行くことにする。
先日と同じくステンドグラスの扉を開け、煉瓦道を辿っていく。
思い切り息を吸うと、緑と土と、少しだけ埃っぽい匂いがする。癒される。
煉瓦道の先のテラスで、へスターは机に頭を置いて寝入っていた。机には木々と大きな葉の隙間から優しい木漏れ日が降り注いでいる。
──ああ、言ってた趣味の日光浴か。
起こさないようにそっと向かいに座り、散乱していた本の中から探していた題を見つけ頁を進める。
久々に穏やかで優しい時間が過ぎていた。
「……ん、ゆうき?」
太陽光がオレンジに変わる頃、へスターがモゾモゾと動いて起きた。
「おはようへスター。本借りてるよ」
「……ん」
ぬるりと体を伸ばすと、目を細めながらへスターが言う。
「明日……ここで育てる植物の……株分けがある」
「ふうん?株分けってことは誰かにあげるのか」
「ん……学校に寄付……。1人じゃ大変……」
そこでようやく言わんとしていることを理解する。
「ああ!人手が必要なら手伝うよ。俺一人で大丈夫なのか?誰か呼ぶ?」
「優希だけ……」
へスターは少し微笑んでこっくり頷いた。
日が完全に暮れる前に温室をお暇し、ルーの部屋に帰る。
ただいまーと扉を開けると、少しむくれた様子のルーが出向かてくれた。
「お帰り優希。そういう事だと思ったよ」
「え?なんだよ急に。何が?」
そこでハッと気付く。そういえばイトナに襲われた日もこんな様子だったような。もしかしなくてもベルクスとのことがバレている……?
「えっと、なんか、ごめん」
危機感を持てって何度も言われていたのにまたやらかしたのか?俺は。
「~~っ」
ルーが片手で頭をガシガシ掻きながら、
「俺が言うことじゃないって分かってんだよ。そもそも『花嫁が候補の男の部屋に行くのを邪魔してはいけない』って取り決めがあるのもそういうことだしな」
なんだそれ初めて聞いたんだけど!?
花嫁に対する取り決めを花嫁本人が知らないってそれはどうなの!?いいのか!?
ルーは大きく溜息を吐いた後、
「夕食後俺のブラッシングをしてくれ。それでいい」
と俺にとって大変ご褒美な条件を提案したのだった。
夕食はオムライスで、俺の分にはケチャップで大きくヒヨコの絵が描かれてあった。
これ絶対昨日の当て付けだろ!オムライス美味しかったけど!!
もう軽率にビックサイズには挑戦しません!
風呂から上がるルーを今か今かと待ち、その日俺はようやく念願の狼姿を拝むことができたのだった。
現代で狼はそうそう見る機会なんてなく、なんとなく「大きい犬なのかな」程度に思っていた俺は猛反した。
胸板は厚く、手足は長く、ルーの頭だけでも俺の頭の1.5倍程大きい。
こう見ると夢に出てきた狼より随分大きいな……やっぱりあれはベルクスだったのか。
目付きは鋭く、鋭い歯並びからは大きな牙が覗いている。そして……、
その歯に大きいブラシを咥え、尻尾を振りながらトテトテとやってきた。
……野生を忘れた狼なんてもう狼ではないのでは……?
俺の膝に前足を載せ、1度顔を舐めてから座り込む。
「いいぞ」
うっ…可愛い…こんなに格好良いのに……!
ブラッシングする前に思い切りそのもふもふの赤い体に抱き着いたのは言うまでもなかった。
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