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第一章

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 さて、ギャン泣きした後で少々身体がだるい感じがするが、頑張ってみようかな。
 傍らに座っている父の脚に掴まって……。

 あっ、脚が……、すっごいブルブル。お尻が上がらん…。

 あーっ、やっぱり頭が重いっっっわ!!!




 よっし! 立ったぞーーー!!


 かなり脚がエックス状になっているが、なんとか立ちあがった。
 まだ父に全体重をかけて寄りかかっているけれど…。


 「とーっ!ゆ~、たっち!!」


 父にたったぞ~とアピールする。


 「おおーっ! ユーリすごいなあ! 頑張ったなあ!!」


 父はそう言って、僕の頭をワシャワシャと撫でた。
 母もエマも妹のクリスタも、僕がつかまり立ちをしようと動き始めた時から、固唾を呑んで見守っていた。
 立った瞬間、母は満面の笑顔で、エマは瞳をウルウルさせて、クリスタはわかっているのかいないのか、手をペチペチと叩いて喜んでくれた。

 この後すぐに、脚がプルプルしてぺしゃんとお座りしてしまったが、父が抱き上げてくれたので、僕は一番いいタイミングでおねだりを開始する。


 「とー、ゆ~、あぇ!」


 と、部屋の隅にある本棚を指さす。
 絵本が3冊入った本棚だ。ここからどうやってつなげようか…。


 「あち!」


 そう言って、ドアを指さす。


 「んっ? どこかに行きたいのか?」


 「んっ!」


 「よしっ! じゃあユーリの行きたいところに行ってみるか! リーナちょっと行ってくるよ」


 「あーぃ!」


 「ふふっ、行ってらっしゃい」


 母は、僕についてこようとハイハイしだしたクリスタを抱きあげながら、そう言った。
 そうして、僕は父の腕にお座りした状態で抱っこされて廊下に出た。


 「さて、ユーリ。どこに行きたいんだい?」


 「あち!!」


 そうして、覚えていた父の書斎の方に向かう。
 書斎の前まできたので、ドアをペチペチ叩いて開けてもらおう。


 「んっ!! んっっ!」


 「ユーリ、書斎に何かあるのかい?」


 「あぃ!」


 「ふふっ、そっか…。いいよ? どうぞ?」


 そう言って、ドアを開けた。
 途端に、微かに香るインクの匂い。


 「っ……?」

 
 書架は片面の壁だけだが、床から天井まで一面全部が書籍で埋め尽くされていた。
 一瞬香ったインクと本の匂いになのか、一面を覆う本の群れになのかはわからないが、一瞬何かを思い出しそうになった。
 
 むぅ~~~っ?
 
 何かが呼び起こされそうだったが……?

 だめだっ、わからん!
 まあ、そのうち思い出すだろう。

 それよりも、今は父におねだりしなければ…。
 父に、本がみたいのだとアピールする。
 書架に向いてもらって、綺麗に並んでいる本を眺めていく。





 あった…。


 「こぇ! こぇ!!」


 「えっ? …これがいいのかい?」


 「んっ!!」


 「…………わかった。でも、ちゃんとお座りして読むんだよ? いいね?」


 「あーいっ!」


 僕が探していたのは、現代の魔法本だ。
 比較的、古い書籍が多い中に、まだ新しめの背表紙で、『魔法全集』と読めたんだ。
 僕が生きた時代とどのくらい時間が経っているのか確認したいから、他にも『王国の歴史』と『これで完璧・薬草図鑑』に『東の大陸魔獣・野獣大全』、一番下の端っこにあった『本科・数学』『本科・社会』『本科・魔法』『本科・共通言語』、そして『おとこの野外料理』。
 教科書らしき本はまだわかるが、なんで料理本があるんだ?って思う。でも、料理もどのくらい違うのか興味があるから借りていこう。

 部屋に置いてあったワゴンに載せてもらって、僕は抱っこしてもらったまま、部屋に向かった。

 すーっごい楽しみ~♪

 さてさて、どのくらい違う時代に転生したのだろうか…。
 部屋に戻ったら早速読むことにしようと、僕はワクワク上機嫌で抱っこされて部屋に戻った。


 
 

 

 
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