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第二章 幼少期~領地編

30.説明中

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 リヒト先生とレオンに、この滞在中にやりたいことを一気に言った後に、私のステータスを見せた。
 それから、先生に向き直り説明を始めた。

 「先生。ステータスを見ていただいたのは、この二ヶ月でやりたいことが、私が使えるスキルや魔法を駆使しないとできないからです。順を追って説明しますね。

 まずは馬車の改造です。
 こちらへ来る旅で馬車に乗ってきたのですが、乗って早々にお尻が痛くなりまして、お恥ずかしい話ですが、ずっと<ヒール>をかけていました。一日目の街でクッションをたくさん買ってもらって、なんとか辿り着くことができたんです。ですが、クッションをたくさん敷いても、やはりお尻が痛くなりました。そこで、車輪まわりか車体を改造して、振動を減らすといいんじゃないかと考えました。帰るまでになんとかしたいと思っています。

 次に、屋敷の魔道具の手直しです。
 これは、私が王都の屋敷の魔道具を改良していたのをご存知ですよね。その結果、魔道具の性能が上がりましたし、魔石の消費が減りました。今回こちらに滞在する間に改良することを、エルンストに依頼されています。セバスから王都の屋敷の魔道具の話を聞いていたそうです。
 
 馬車や魔道具の改良には、生産スキルはもちろんのこと、レベルの高い火、風、地、無属性の各魔法が使え、さらに職種で魔法士、魔道具士を持っていなければ、二ヶ月という短期間では上手くいかないと思っています。
 
 次に、領地の整備ですが、これは視察をしてみないとなんとも言えません。
 農地の整備が必要なのか、河川の護岸工事が必要なのか、街や村の整備が必要なのか。
 そのために、ありのままの現状を確認したいのです。ありのままを見たいので、領主の子とわからないようにってことです。
 土地の整備も大切ですが、飲料水の状況や汚物と汚水の処理状況も調べなければなりません。これは病気の予防をしたいので、今回の視察で一番大切なことになります。
 そうして、整備が必要と感じたら、お爺様と相談をして、魔法を使いたいと思っています。

 ここで重要なのは、鑑定スキルや並列思考、生産スキルそして調合スキルです。魔法では、地魔法と無属性魔法ですね。

 次に、森の様子はどうなのか、魔獣の状況はどうなのか、それに対して代官や名主はどういう対処をしているのかも知りたいんです。
 だから、森に魔獣を狩りに行きたいんです。冒険者として行ければ一番いいんですが…。
 魔道具の改良に魔石もたくさん必要ですし、森の薬草の自生状況も確認しておきたいのでちょうどいいですね。

 これに必要なのは、私が持てるすべてのスキルと魔法と耐性になるでしょうか? 対植物、対魔獣、そして対人ですからね。 

 最後に温泉ですが、リヒト先生は温泉をご存知ですか?
 はい、そうです。地下から出るお湯です。
 領地内で温泉が出る土地があるならば、公衆浴場を作りたいと思っています。

 なぜ温泉かというと、一番大きな理由は大量の水を汲み上げずに済むということ。そして、多くの場合はそれを温める必要がないことです。
 もちろん、今回探すのは自噴泉です。それも温める必要がない温度のものを探すつもりです。
 そうすれば、汲み上げの労力と温める魔石の必要がありません。汲み上げの労力も雇用増加とも考えられますが、今回はそれを考えていません。

 この国では、私が知っている範囲では、庶民は風呂に入りません。王都には公衆浴場がないと聞いています。生活魔法を使える人は、魔法で<クリア>をかけているようですが、生活魔法が使えない人は、湯で身体を拭く程度です。
 <ピュリフィケーション>を使えれば、汚れはもちろんのこと、雑菌も滅しますので問題はないのですが、これは光属性がなければ使えません。そして、光属性持ちは希少です。
 <クリア>を使えるだけでもかなり良い方ではありますが、魔力量の関係で庶民の中で毎日使っている人は少ないようです。
 ここで問題なのは、身体や服をいかに清潔に保つかということです。
 まずは、庶民が身体を洗う習慣を身につけること。これが病気の予防につながると思っています。
 
 そして、温泉ですが、お湯自体が身体に働きかけるんです。ケガの治りが早くなったり、病気が軽くなったりの効果があるようです。
 そこでいろいろ考えているんです。
 これは、温泉が出るか調査して、出るとなったらお教えしますね」

 「うん。それで、なんで清潔にすると病気の予防になるんだ? 温泉のお湯のことはどこで知ったんだ? そのいろいろ考えていることは教えてくれないのか?」

 私の説明を最後まで聞いてから、先生は、珍しくたくさんの文字数を話して、とっても楽しそうな瞳で聞いてきたんだ。
 先生、絶対に私のことおもしろ認定してるよね?

 



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