29 / 205
第3章 魔の森
029 森のエルフ
しおりを挟む「動かないで!」
現れた女エルフは弓と矢で俺を狙い、そう言い放った。その目は俺を睨み、どうやらかなり俺を疑っているようだ。
『この世界ではエルフは余り人里に現れず、独自の社会を形成しています! ですから、一人でこの森にいる可能性は低いです~~!恐らくは近くに仲間か拠点、それかコロニーがある筈です~!』
俺に弓矢を向ける女エルフにエレンが武器を向けようとするのをPASSで感じ取り、俺はそれをハンドサインで止める。ここはまだ争うべきでは無い。もしも本当に俺を敵と認識したなら問答無用で弓矢を放って来た筈だ。この間合いは弓矢には不利、それを推してその姿を現したのは意味がある筈だ。
女エルフは俺とエレンを交互に確認している。まあ、こんな魔の森にメイドコスはかなり怪しい……てか不自然過ぎる。それより何より、こんな魔の森に人がいる事自体が不自然だから、この警戒心も当然だ。
だがどう説明する?
スマートウォッチを流行らせる為に異世界冒険旅ブログのキャンペーン中だとでも言うのか?
無理無理!そんなの誰も信じ無い。
『ゆう帝、ここは一つ、腕試しの旅の最中だと言っておきましょう!ある意味スマートウォッチの有用性を広める事はゆう帝の無双伝説を広める事なんですから!』
まじか!
中二病設定全開か!
ちょっと無理が無いかね?そんな奴いるのかよ。
『大丈夫です!この世界では冒険者ギルドが力を持ってますから、そんな夢見がちなアホウは後を絶たないのです!だから今更ゆう帝が何を言ってもスルーされますよ!エレンは従者だとでも言っておきましょう!この世界では今のエレンレベルはバカスカ居ますから安心して下さい!』
そうなのか?
たが、それならこの女エルフがここで何をしているかが気になる。もしも俺がエルフの聖域を侵しているなら、かなりまずいんじゃ無いか?
理想的なのはこの女エルフがトラブル中なのが一番なんだが……
「俺は従者と共に世界を旅しながら一流の冒険者になろうと修行してるんだ。ここは道に迷って入り込んだんだが、人里を目指して森を抜けたい。道を教えてくれないか?」
エルフは俺の姿を確認している。
証拠は無いからな。
嘘は言ってない。
魔眼持ちならヤバいだろうが。
「……黒い髪に黒い瞳…この辺りの者では無いな」
「それはその通り、さて、それでも俺はお姉さんと敵対するつもりは無いんだ。その弓矢を下ろしてくれないか?」
「……まあ、いいだろう。さっきのグリズリーはこの森で危険な魔獣になっていたので、私が追っていたんだ。その気配が一気に消えたから慌てて追いかけたら、あんたがグリズリーを倒してアイテムボックスに回収してたから、その真偽を調べたかったのよ」
そう言って弓矢を下ろした。
助かった。
この女エルフ、恐ろしくレベルが高そうだ。あの大熊──グリズリーとか言ってたな。かなりヤバかったのか。
『この女エルフ、恐らくは弓術、精霊魔術のスキルを持っています!かなりの手練れですね~戦わなくて良かったかも~~』
なんとまた死亡フラグか!
これってサバイブ過ぎてるんじゃ無いか? 持ってるチートスキルを超える事態が連発ってどうよ?
「ここは魔の森[ジュヌ大森林]のほぼ中央よ? よくここまで無事に来れたわね。普通はもっと大規模なパーティで挑む危険なエリアなのよ」
どうやら序盤からとんでも無いとこに飛ばされた様だ。あの神様の野郎! 覚えてろよ!
「君みたいな子供が来る場所じゃ無いわ。来なさい。貴方には邪悪な物は感じ取れないから、お師匠様の所に案内するわ」
お師匠様の所?
どうやらエルフの里ではなさそうだ。ここは付いて行くべきか。行かなきゃ返って怪しまれるな。
「……分かりました。流石に野宿は厳しかったんで、助かります」
「そうね、腕前はあるんでしょうけど、流石に準備が心許ないわね。それにお師匠様の好みの美少年だし」
「へっ!?」
今なんか聞こえなかった?
『ゆう帝! 貴方は人外ですがバビロニア製の超の付く美少年なんですよ!元のむさいおっさんとは違うんですから!』
むさいわ余計だ!
てか最後の一言がメチャ気になるんですけど!
なんかバトルメイドが少し不機嫌っぽいのも怖いけど。
フラグ……来たな。
うおおおぅ!遂にエルフと開合を果たし、その魅惑の虜になる時が来たのか!来たのか──!
「……ゆう帝、落ち着いて下さい」
「……はい」
エレンの視線が怖い。
ここは大人しく付いていって、その後お師匠様とやらに会ってから考えようか。
一泊させて貰って、その後街への道を教えて貰えれば十分だろ?もっと色んな事を教えてくれるかも……うふふっうふふふふふっ!よ、涎がでる!
『ゆう帝! 二人がジト目でみてますよ!』
「!!! さ、さあ行きましょうか!」
『いきなりボロが出てますね~やっぱりゆう帝は非モテの鏡ですね』
余計なお世話だ。
だが真実だ。
悲しいかなそれが現実だ。
ふんっ!
俺は微妙に捻れた気持ちになり、少し拗ねた顔をしていたのだろう。その女エルフが心配気に話し掛けて来た。
「大丈夫、そんなに心配しないで。私達は貴方に何の危害も加えたりしないは。だって、この森の危険な魔獣を始末してくれたし、それに──」
そう言って俺の頬をそっとその細く白い指で撫でて来た。
「──こんな可愛らしい子をこの森で放置するなんて、奴隷商人や盗賊の餌食にされるのを待ってる様なものよ?さあ、いらっしゃい。私の名前はソフィア、ウッドエルフの──」
「──ゆう帝にむやみに触らないで頂きたいのですが」
そこへエレンが割って入る。
「あら、別に貴方は来なくても良いわよ」
二人の視線が火花を散らしてる。
来た!モテ期来たのか!
その睨み合いは暫く続いたが、俺がなだめすかしてやっとエレンが矛を収めた。
てか何故にそこまで意地を張り合うのか理解出来ない。何せベッドで寝られる可能性だってあるんだよ!マジックテントの中なんて雑魚寝だし。ご飯だって食べれるかもだよ!お口直しが欲しいよね!
俺は女エルフ、ソフィアの後を付いて行きながらそのプリンプリンの美尻に見惚れていた。
(至福だ!これぞ異世界の醍醐味だよ!)
巷の噂によればエルフは貧乳、ダークエルフは爆乳だと噂されていたが、ソフィアさんは美乳だ!いわゆるモデル体型ってヤツだな。う~~ん、これはお師匠様が気になるね。
俺は意気揚々とソフィアの案内に従った。
その背後から刺す様なエレンの視線を感じながら。
0
お気に入りに追加
226
あなたにおすすめの小説
大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います
騙道みりあ
ファンタジー
魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。
その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。
仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。
なので、全員殺すことにした。
1話完結ですが、続編も考えています。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
クリ責めイド
めれこ
恋愛
----------
ご主人様は言いました。
「僕は、人が理性と欲求の狭間で翻弄される姿が見たいのだよ!」と。
ご主人様は私のクリトリスにテープでロータを固定して言いました。
「クリ責めイドである君には、この状態で広間の掃除をしてもらおう」と。
ご主人様は最低な変態野郎でした。
-----------
これは、あらゆる方法でクリ責めされてしまうメイド「クリ責めイド」が理性と欲求の狭間で翻弄されるお話。
恋愛要素は薄いかも知れません。
【完結】彼女以外、みんな思い出す。
❄️冬は つとめて
ファンタジー
R15をつける事にしました。
幼い頃からの婚約者、この国の第二王子に婚約破棄を告げられ。あらぬ冤罪を突きつけられたリフィル。この場所に誰も助けてくれるものはいない。
性欲排泄欲処理系メイド 〜三大欲求、全部満たします〜
mm
ファンタジー
私はメイドのさおり。今日からある男性のメイドをすることになったんだけど…業務内容は「全般のお世話」。トイレもお風呂も、性欲も!?
※スカトロ表現多数あり
※作者が描きたいことを書いてるだけなので同じような内容が続くことがあります
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
なりゆきで、君の体を調教中
星野しずく
恋愛
教師を目指す真が、ひょんなことからメイド喫茶で働く現役女子高生の優菜の特異体質を治す羽目に。毎夜行われるマッサージに悶える優菜と、自分の理性と戦う真面目な真の葛藤の日々が続く。やがて二人の心境には、徐々に変化が訪れ…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる