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第3章 魔の森

029 森のエルフ

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「動かないで!」

 現れた女エルフは弓と矢で俺を狙い、そう言い放った。その目は俺を睨み、どうやらかなり俺を疑っているようだ。

『この世界ではエルフは余り人里に現れず、独自の社会を形成しています! ですから、一人でこの森にいる可能性は低いです~~!恐らくは近くに仲間か拠点、それかコロニーがある筈です~!』

 俺に弓矢を向ける女エルフにエレンが武器を向けようとするのをPASSで感じ取り、俺はそれをハンドサインで止める。ここはまだ争うべきでは無い。もしも本当に俺を敵と認識したなら問答無用で弓矢を放って来た筈だ。この間合いは弓矢には不利、それを推してその姿を現したのは意味がある筈だ。

 女エルフは俺とエレンを交互に確認している。まあ、こんな魔の森にメイドコスはかなり怪しい……てか不自然過ぎる。それより何より、こんな魔の森に人がいる事自体が不自然だから、この警戒心も当然だ。

 だがどう説明する?
 スマートウォッチを流行らせる為に異世界冒険旅ブログのキャンペーン中だとでも言うのか?
 無理無理!そんなの誰も信じ無い。

『ゆう帝、ここは一つ、腕試しの旅の最中だと言っておきましょう!ある意味スマートウォッチの有用性を広める事はゆう帝の無双伝説を広める事なんですから!』

 まじか!
 中二病設定全開か!
 ちょっと無理が無いかね?そんな奴いるのかよ。

『大丈夫です!この世界では冒険者ギルドが力を持ってますから、そんな夢見がちなアホウは後を絶たないのです!だから今更ゆう帝が何を言ってもスルーされますよ!エレンは従者だとでも言っておきましょう!この世界では今のエレンレベルはバカスカ居ますから安心して下さい!』

 そうなのか?
 たが、それならこの女エルフがここで何をしているかが気になる。もしも俺がエルフの聖域を侵しているなら、かなりまずいんじゃ無いか?
 理想的なのはこの女エルフがトラブル中なのが一番なんだが……

「俺は従者と共に世界を旅しながら一流の冒険者になろうと修行してるんだ。ここは道に迷って入り込んだんだが、人里を目指して森を抜けたい。道を教えてくれないか?」

 エルフは俺の姿を確認している。
 証拠は無いからな。
 嘘は言ってない。
 魔眼持ちならヤバいだろうが。

「……黒い髪に黒い瞳…この辺りの者では無いな」

「それはその通り、さて、それでも俺はお姉さんと敵対するつもりは無いんだ。その弓矢を下ろしてくれないか?」

「……まあ、いいだろう。さっきのグリズリーはこの森で危険な魔獣になっていたので、私が追っていたんだ。その気配が一気に消えたから慌てて追いかけたら、あんたがグリズリーを倒してアイテムボックスに回収してたから、その真偽を調べたかったのよ」

 そう言って弓矢を下ろした。
 助かった。
 この女エルフ、恐ろしくレベルが高そうだ。あの大熊──グリズリーとか言ってたな。かなりヤバかったのか。

『この女エルフ、恐らくは弓術、精霊魔術のスキルを持っています!かなりの手練れですね~戦わなくて良かったかも~~』

 なんとまた死亡フラグか!
 これってサバイブ過ぎてるんじゃ無いか? 持ってるチートスキルを超える事態が連発ってどうよ?

「ここは魔の森[ジュヌ大森林]のほぼ中央よ? よくここまで無事に来れたわね。普通はもっと大規模なパーティで挑む危険なエリアなのよ」

 どうやら序盤からとんでも無いとこに飛ばされた様だ。あの神様の野郎! 覚えてろよ!

「君みたいな子供が来る場所じゃ無いわ。来なさい。貴方には邪悪な物は感じ取れないから、お師匠様の所に案内するわ」

 お師匠様の所?
 どうやらエルフの里ではなさそうだ。ここは付いて行くべきか。行かなきゃ返って怪しまれるな。

「……分かりました。流石に野宿は厳しかったんで、助かります」

「そうね、腕前はあるんでしょうけど、流石に準備が心許ないわね。それにお師匠様の好みの美少年だし」

「へっ!?」

 今なんか聞こえなかった?

『ゆう帝! 貴方は人外ですがバビロニア製の超の付く美少年なんですよ!元のむさいおっさんとは違うんですから!』

 むさいわ余計だ!
 てか最後の一言がメチャ気になるんですけど!
 なんかバトルメイドが少し不機嫌っぽいのも怖いけど。
 フラグ……来たな。
 うおおおぅ!遂にエルフと開合を果たし、その魅惑の虜になる時が来たのか!来たのか──!

「……ゆう帝、落ち着いて下さい」
「……はい」
 
 エレンの視線が怖い。
 ここは大人しく付いていって、その後お師匠様とやらに会ってから考えようか。
 一泊させて貰って、その後街への道を教えて貰えれば十分だろ?もっと色んな事を教えてくれるかも……うふふっうふふふふふっ!よ、涎がでる!

『ゆう帝! 二人がジト目でみてますよ!』
「!!! さ、さあ行きましょうか!」
『いきなりボロが出てますね~やっぱりゆう帝は非モテの鏡ですね』

 余計なお世話だ。
 だが真実だ。
 悲しいかなそれが現実だ。
 ふんっ!

 俺は微妙に捻れた気持ちになり、少し拗ねた顔をしていたのだろう。その女エルフが心配気に話し掛けて来た。

「大丈夫、そんなに心配しないで。私達は貴方に何の危害も加えたりしないは。だって、この森の危険な魔獣を始末してくれたし、それに──」
 そう言って俺の頬をそっとその細く白い指で撫でて来た。
「──こんな可愛らしい子をこの森で放置するなんて、奴隷商人や盗賊の餌食にされるのを待ってる様なものよ?さあ、いらっしゃい。私の名前はソフィア、ウッドエルフの──」
「──ゆう帝にむやみに触らないで頂きたいのですが」

 そこへエレンが割って入る。

「あら、別に貴方は来なくても良いわよ」

 二人の視線が火花を散らしてる。
 来た!モテ期来たのか!

 その睨み合いは暫く続いたが、俺がなだめすかしてやっとエレンが矛を収めた。
 てか何故にそこまで意地を張り合うのか理解出来ない。何せベッドで寝られる可能性だってあるんだよ!マジックテントの中なんて雑魚寝だし。ご飯だって食べれるかもだよ!お口直しが欲しいよね!

 俺は女エルフ、ソフィアの後を付いて行きながらそのプリンプリンの美尻に見惚れていた。

(至福だ!これぞ異世界の醍醐味だよ!)

 巷の噂によればエルフは貧乳、ダークエルフは爆乳だと噂されていたが、ソフィアさんは美乳だ!いわゆるモデル体型ってヤツだな。う~~ん、これはお師匠様が気になるね。

 俺は意気揚々とソフィアの案内に従った。
 その背後から刺す様なエレンの視線を感じながら。
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