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第15章 この世界の深層

169 ローズの相談事が意外とまともだった件

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「ふう…良いお湯ね」

「……そ、そうですね」

「いやねえ~お仲間なのよ、もっとフレンドリーにやりましょうよ」

 掃除の終わった温泉場に連れていくと、ローズ達は当然の様に服を脱ぎ捨てると、そのままお風呂パーティが始まった──て言うか勝手に入り始められた。因みにゴブリン軍団は周辺警戒の任務に就いている。
 て言うか、入浴グッズを大量に用意しているあたり、最初からそのつもりだったようだ。どの辺りから俺の事を調べ上げていたのか、気になるところだ。
 やっと合点がいったのは、この五人の違和感は、奴隷墜ちを拾い上げ、恐らくは奴隷契約を結んでいるからだったのかららしい。
 しかも五人全員が美女だ。
 転生前が男だった事が発覚したので、ローズはニューハーフ枠に格下げされた。工事済みって感じで。

「それより、頼みとは?」

「まあ、せっかちね~王国中の冒険者達から羨望の眼差しで崇められるブラッディローズの入浴シーンをタダで拝める幸運にもっと感謝して欲しいわね」

 確かに……美女軍団ではあるが。

「頼みとは…ズールー姉妹の件か?」

「…そうね、それもあるけど、それよりも気になるのは、氷の剣を持った、今回の事件の核心である、謎の美少女と、それを仕組んだ組織よ」

 そう言えば、王国かなんかの依頼を受けて、ズールー姉妹を討伐する為に、このダルシアくんだりまで、ワザにホームを移してまで乗り込んで来たんだよな。

「本当の目的は、ユウに逢うためなんだけどね」
「!!! お、お前な! 幾ら転生に転性を重ねてるとはいえ、ノリがよすぎるぞ!」

 おのれローズ、このバビロニアンたる俺を動揺させるとは生意気な!

「連れないのね~でも、私は本気よ!」
「よ、よせ! 何でこの異世界までやって来て共食いせなあかんのだ!俺にはハーレムエンド狙いの大望があるんだからな!」
「あら、私達六人まとめてハーレムに出来るチャンスよ」
「!!! ぐっ 確かにそれは魅力的な提案だ…だ、ダメだダメだ! 人生観が変わってしまう」

 だが
 もしもこのローズが転生者で性転換している事を気が付かなかったとしたら…俺は……ハーレムの一員に加えていた可能性が高い。

「……いや…まてよ……そもそも性転換してる証拠は無い」
「声に出てるわよ」
「!!! し、しまった!」
「冗談はさて置き──」
 くっ、冗談だと!? あしらわれてる気がするのは気の所為か。
 もしかして、俺が手を出さない為の抑止力を狙っているのか!?
 うが──っ!
 全然分からね──っ!

「この世界には、ユウの知ら無い世界が沢山あるって事、理解出来たかしら」

「……それは…もうたっぷりと」

「それは良かったわ」
 そう言ってローズはニコリと笑った。
 う~ん、やっぱり美人だな~
 手は出せ無いけども。

「何しろ、今、王都で有閑マダム達が興味津々なのは、突然辺境に現れた傾国の美少年であるユウの事なのよね。私も一時期は王都の男達の視線を釘付けにしてたんだけど、段々と噂が広まって、どちらかと言えば遠巻きにされてる感じなのよね~羨ましいわ」

「どうせ、とんでもない大立ち回りをやらかしたんだろ? チートスキル爆発系の」

 そう、きっと俺ほどでは無いにしろ、召喚者や転性者は、例外無くユニークスキルやチートスキルを授けられてこの世界に降り立つのが基本だからな。
 
『殆どは自然発生するんですよ? マスターのようにコッテリしている人は稀ですから~』

 シリィはこのローズの事は知らなかった。
 と言う事は、バビロニアの系譜では無いのか。
 転生者なら、地球で死んで、魂だけ渡ったって事だよな。
 一体何が起こったのか、気になるところだが、本人が喋るまではほっとくのがマナーだろうな。集めた五人も、奴隷だ何だと言いながらも、火中の栗を拾った可能性もある。
 ただの工事済みニューハーフでは無いだろう。
 そして、手の内はまだ殆ど明かして無い。決して勢いに任せたチート頼みの攻略をしている訳でも無さそうだ。

「まあ、私みたいな美女は色々と干渉したがる輩が多いから、有名税みたいなものだけどね。それより、あの仲間割れした氷の魔女とおかしな盗賊団に関して、手を組みたいの。この世界には、王国や公国みたいな集団とは別に、幾つかの組織が密かに大陸の平和の為に活動しているの。私が依頼を受けているのも、その組織の一つなのよ。そこは、この世界に眠る古い文明の残した禁呪や秘宝を見つけ出し、悪用されないように封印したり、管理下に置くのが目的で、数百年前の大破壊の後につくられた、比較的新しい組織よ。まだ、名前はあかせないけど、ユウもどうせ、目的はあかせないでしょ、相身互いって事で、この案件に関しての共闘を、申し込みたいわけよ」

 エルフ二人組の時もそうだったが、最初から全幅の信頼を与えられる風土はこの世界には無いらしい。まあ、それだけ、危険度が高いって事だよな。危機管理としては当然の処遇だろう。それに、俺の秘密も明かさずに済むなら、まあ、情報交換くらいなら、問題は無さそうだ。
 俺としても、あの氷の魔女と、変なニコラとか言う聖職者崩れとの激突は必至だと思うし。
 情報は喉から手が出るほど欲しい。

「分かった。行動を共にするかどうかは別にして、互いに情報交換を行い、何れにせよ行方を追わなければ話ははじまらないしな」

「それで十分よ。で、追跡の結果は出たの?」

「途中まではね」

「それって、どう言う事なの」

「転移先はどちらも10キロ位しか離れては無かったんだけど、俺の持つネットワークからはかなり外れて移動を繰り返してるんだ。ダルシアから見れば、北に盗賊団と間違われた奴等が、西に氷の魔女が跳んだの迄は追跡出来てる。今は、隠密で追跡を続行してはいるんだが、派手にPASを繋ぐと、相手にもバレるから、ある程度所在を特定してから、俺が直ぐに接近出来る段取りをつけてからになるな。何週間も動き回るとは思え無いから、まあ十日内くらいにはあらかた完了出来るとふんでいる。それに、先ずは変な聖職者崩れに激突させたいんだ。でないと、俺と激突中に巻き添え食らったら、俺が危うくなるしな」

「……その時には、連絡を回して貰えるのかしら」

「スマホのSNSでメールする」

「そうね、そうして貰うと助かるわ。何しろクローディアから呼び出し食らって、色々とやらされる事になってるの。全く、人使いが荒いんだから」

 いやいや、クローディアを怒らせて五体満足ならめっけもんだよ。
 何しろ本物のランクAの化け物だからね。
 一糸乱れぬ六人は、暫しの歓談の後、有効的にダルシアへと帰還された。う~む、地球の俺なら動揺しまくってただろうが、美女慣れしている最近の俺は、何とか暴走せずに事態を終息へと無事導く事が出来て本当に良かった。
 恐らくは主従契約によるダメージ転移とか、連携強化とか、HPMP振り分けとか、ドーピングしまくってるんだろうな。
 俺も似たようなもんだが。

「直接激突するのだけは避けたいな。クローディアさんもだけど」

 得体の知れ無い能力ほど怖いものはない。
 スキルホルダーには最大限の注意を払う必要があるだろう。

「でも、露天風呂最高~ストレスが溶け出すわ~」

 アルマンドさんの護衛依頼が終わったら、皆で湯治に来よう。
 そして、ついに大人の階段を…

「大人の階段がどうしました」
「どんな階段なのか、凄く気になるわね」

 その時、背後からエレンとマナの声がした。

「随分とローズと親しくなられて」
「本当ね、私達も呼ばずに仲睦まじく温泉につかって混浴を愉しむなんて、万死に値するわね」
 そして、一糸纏わぬ二人、舶来金髪碧眼の美女と、銀髪紅眼の美少女が、俺の両側を挟み込むように温泉に浸かって来た。
 ふと上を見ると、待機モードになって縮小化しているグリフォンがハチドリの様にブンブンと飛び回り、初めて見る温泉に興味津々なのか、脚をチョンチョンと浸して遊んでいる。

 お前が連れて来たのか。

 すっかりPASが繋がっているの忘れてたわ。

 テヘペロ

 俺にも息抜きは必要だと言う事で、ご理解願えたらと思いますです…はい。
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