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第12章 探索依頼 太古の遺跡都市…と見せかけて
125 激突!!!!!!!!!!!
しおりを挟む『おりゃああああっ!』
どこから見ても蛮族の王
振り上げたその鉄塊が再び城砦を崩壊させた。
『また壊したよ!』
『加減という言葉を知らないのでありましょうか!』
驚愕するネフィリムとククリ
『いかんいかん、久し振りに受肉した所為で加減が分からんわい』
ネロは崩壊した城砦をみて冷や汗をかいていた。
(普通こんな子供を相手にしたら手が出しにくいもんだろうが!)
だが目の前の怪物は全く気にする様子も無くその鉄塊…いや大剣を振るい続けている。
既に数十メートルに渡り崩壊した城砦は復旧にどれだけかかるのか見当も付かないレベルだった。
女魔道士は呆れ
「あんたもう私達の味方になった方が良いんじゃない」
そう言う事しか出来なかった。
とてもまともに殺り合える相手には思えない。少なくとも固有スキルである【パペットマペットティペット】を持ってしても…特にクロクマとシロクマとは相性が最悪といっても良い程だったのだ。いや、相性の良いスキルなど想像もつかないのではあるが。
そして徐々に狙いは研ぎ澄まされつつある。あと数回で躱し切れない可能性が高いと読んでいた。
「なんて速さと強さなの。殆どタメが無いし、しかもとんでもない破壊力でまともに防ぐ術が無い」
それだけでは無い。
正門にはさらに二体の化物が現れている。一人は冷却系の最上位範囲攻撃魔法を放ち敵味方構わず氷漬けにしようとしているし、もう一人は禍々しい瘴気を放ち平然と五騎残っている仲間に対峙していた。
「そもそもあれってリッチかなんかのアンデットじゃないのかよ! 何でそんな奴等がダルシアを護ろうとしてんだ!」
ネロが怒りの声を上げる。
本来なら人類の仇敵と言っても過言では無いアンデットの王──ヴァンパイアに匹敵する力を持つ化物が二体も現れるなど有り得ない事なのだ。しかも目の前の一体もその気配からアンデットの中でも厄介なレイバーロードの可能性が高い。
霊的に高いスキルを保持するネロはその危険性を察していた。殆ど自らの戦闘能力を犠牲にするその固有スキルは決して正面から争ってはならないものだと言う事を悟っている所為もあるが、何よりその禍々しきオーラは魔王だと言われてもおかしくない程なのだ。
「……出来れば逃げてえな」
「逃げ果せるとでも思ってるの?」
「ちっ、厄介な奴が現れたもんだぜ」
ネロと女魔道士は直撃を回避しながら隙を伺っていた。
「あんたのスキルはレアだからね。いざとなったら先にシンクロを解いて帰還しなさい。確かシンクロした状態で殺られたらあんたも復活に手間取るんでしょ」
「……他の傀儡はどうする。一応忍ばせてはいるが、こうなったら必要はねえからな」
既に結界は崩壊しておりネロの役割はほぼ終わっていた。
「……どうやらワザと崩壊しやすくしておいて引き込まれたのかも知れないわね」
「……かもな」
あの男
ゆう帝と呼ばれる男が現れてから事態は悪化の一途を辿っている。
ダルシア全域に仕掛けた罠は全て崩壊させられていた。伝説のカイザートードですら倒されているのだ。
だが事態はさらに悪化する事になる。
『くらエッ!』
その時突然雷撃が正門に炸裂した!まさに爆発したと言っても過言ではないその一撃は正門ごと一帯を吹き飛ばしてしまったのだ。
『イかン、ツヨスギたナ』
「強過ぎたじゃねえよ!」
その雷撃が来た方向に屹立する六本腕の巨人
「……アンサタクロスじゃない!」
「はぁっ!? バカかおまえ、あれは伝説の…あれ、本当かよ!何でこんなとこに現れるんだよ!」
女魔道士とネロは唖然としてその姿を見ていた。
そしてゆっくりと、正門があった場所へと歩み寄る巨人は恐るべき魔力を再び放った。
『アノ五騎を屠レバよいノジャナ』
「雷撃は無しだぞ!」
『ワカッたワカッタ』
そう言って一振りの槍を取り出した。
「おいおい、それって宝具…いや神器じゃないの!」
『神槍グングニルだね。僕の持つ神器の中では最強の直接攻撃武具だ!』
「素が出てるぞ」
『グングニルジャヨ』
ゆう帝は「はぁっ」と溜息を吐いた。
そして
「俺が一当てしたら後は任せた。それと三体いるアンデットな仲間だから始末するんじゃないぞ」
『マタオカシナナカマヲアツメテオルナ』
「……いやお前が言っちゃダメだろ」
呆れながら「まあいい」そう言い残してゆう帝は正門へと駆け出した。スレイプニルブーツの力を借り風の様に大地を疾走し瓦礫を飛び越え、ソロモン王を飛び越して五騎と対峙した。
『おおっ! マスター、お早いご帰還ですな』
ゆう帝はチラリと城砦の上の偉丈夫と脇に立つ妖しげな美女を見た。
「……随分と個性的な仲間を集めてくれたんだな」
『この二人は数千の軍隊に匹敵する強者、必ずやマスターの力になりましょうぞ』
凍りついた地面、崩落した城砦を一瞥し
「……お手柔らかにな。俺達が討伐対象に指定された洒落にならないぞ」
そう言い残しドラッケンを引き出すと五騎に言い放った。
「さあ、お待たせした。暫し相手になってやる」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
『ネフィリムやれ』
『了解!ゲート開きまーす!』
その時直上に転移魔法陣が現れそこから一斉に超圧縮爆散泡弾が数十発投下された。そしてククリが逃げ遅れた者に結界を張る。
「敵も味方も巻き添えか!」
一気に直上を埋め尽くす超圧縮爆散泡弾に気を取られたその時──ゆう帝が動いた。
気配を完全に消したまま重騎士に肉薄、極大の超圧縮多重泡弾を二発叩き込む。盾を構えるのが間に合わず直撃を喰らい十メートル近く吹き飛んだ。
「ぐおおおおっ!」
いかな鉄壁の重騎士とはいえ備える事が出来なければ耐え切れるものでは無い。予め生成してアイテムボックスの中に保管できる泡弾を予期する事は、初見では不可能と言っても過言では無い。吹き飛ばされ重騎士も当然の結末と言えるだろう。
「な、なに!」
「強いです。サンダーボルト!」
双剣使いが身構えるより早く魔法を放ったのは悪い判断では無い。だが最速の攻撃魔法を選んだのが裏目に出る事になっても仕方ないのだろう。
ゆう帝はさっと手を翳しそれをいとも簡単に逸らしてしまう。
「なっ!雷を纏っている!?」
「直ぐ次を放たなければダメだ」
「!!!!!」
「!!!!!」
二人の眼前に現れたゆう帝は完全に双剣使いの間合いを潰していた。虚を突かれそのまま超圧縮多重泡弾を直撃させられ吹き飛んだ。
「二人目」
そして女魔道士にも超圧縮多重泡弾を放った。
「早いです!」
驚愕の表情を見せた女魔道士も直撃を喰らい吹き飛ばされた。
「三人目」
「てめぇ!」
魔拳士が手甲から伸びた刃に闘気を纏わせ、ゆう帝の背後から貫いた──がその姿は掻き消す様に消え去った。雷を纏い引きつけるだけ引きつけたゆう帝は瞬身スキルと見まごうばかりの速度でその身を躱したのだ
「空蝉かっ!いやっ」
ゆう帝はあっと言う間に背後に跳んだ。
「ちぃっ!」
其方に気を取られた魔拳士はゆう帝のいた場所に仕掛けられた超圧縮多重泡弾に気が付く事が出来ず接触し──
「ぐあああっ!」
──吹き飛ばされた。
追撃でさらに三発の超圧縮多重泡弾を叩き込まれ完全に沈黙させられてしまうのだった。
「四人目」
そしてマントを羽織った男が咄嗟に地面に溶け込むのをゆう帝は見逃さなかった。
(くふふ、想像より遥かに危険な奴だ)
ゆう帝の隙を突くべく気配を殺しその時を待とうとしたがそれを許す筈など無い。
「久しぶりだがやってみるか」
次の瞬間ゆう帝の足元から氷塊が溢れ始めた。気化冷却/スーパーフリーズによりマイナス百度を超える極低温の結界を張ったのだ。十メートルに渡り凍結させたその中に忍び込もうとしたその時、その異変に気が付いたが既に遅い。
「くっ! 何を仕掛けた!」
「ゴキブリホイホイさ」
接触する物を凍りつかせる極低温の結界からは逃れる事が出来なかったのだ。
そこへ最大電圧の生体電流/エナジーボルトが放たれた。接近戦を挑む者には射程の短い生体電流も効果的なのである。
「五人目」
止めの超圧縮多重泡弾を五発喰らい吹き飛ばされた。
「なんなんだお前は」
ナイトハルトが吐き出す様にそう呟いた。
先ほどまで必死で応戦しても手傷一つ負わず事が出来なかった五騎を完封したのだ。
その顔には驚愕に引きつっている。
「あの亜竜はアンサタクロスに任すとして…」
ゆう帝はジッと大通りの先で激突するオルグ達を見た。
「ふむ、一当てしてから遺跡に行こうか」
そう呟きゆう帝は大通りを駆け出した。滑るように走り去るゆう帝をリゲルトは呆然と見送る。
「あれで最低ランクだと?」
既に正門前は終局を迎えつつあったのだが、余りの無双っぷりに皆立ち尽くす事しか出来ないでいるのだった。
ゆう帝はアンサタクロスを合意の上に撃ち倒し、恐るべき成長を遂げていたのだ。
ランクSを超えるとまで言われる守護神獣は個体によっては魔王や勇者に匹敵すると言われ、主物質界においては真竜族や古巨人族と並ぶ脅威なのだ。
ゆう帝はそのバビロニアンとしての能力に更に磨きをかけていたのである。
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