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第五章 王都魔物侵攻編

第107話 みんなの応援と希望

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エルダーゴブリン・イクシードを倒して俺はすぐに他の超越種と戦っているであろう仲間たちの元へと急いで向かっていった。みんながやられるとは全く思ってはいないが、まだこの問題の元凶が残っているため出来る限り力はみんな残しておいて欲しいからだ。

それにローガンスをもう二度と逃がす気は全くないが、出来る限り不測の事態に対応できる人が多ければ多いに越したことはない。だからこそ加勢に向かうことが先決だと判断した。


「あっ、あれは...!」


一番近くに魔力を感じたガーディスさんのところへと向かっているとそこには遠くからグランドマスターの姿が見えた。どうやら彼も早く超越種を倒して加勢に来ていたようだ。


「グランドマスター!」

「おっ、ユウト君か。無事倒せたようだね」


俺がグランドマスターの元へと辿り着くとそのすぐそばには大きな風穴の空いたジャイアントオーク・イクシードが地面に力なく倒れていた。どうやら何とか超越種を討伐できたようだ。

ふとグランドマスターの方へと視線を向けると背中越しということもあってよく見えないが何かを抱えているように見えた。俺は少し位置を変えて何を抱えているのかと覗き込んでみると、そこにはボロボロになって力なく倒れ込んでいたガーディスさんの姿があった。


「が、ガーディスさん!?」


俺はそのような姿のガーディスさんに一瞬嫌な言葉が頭をよぎって急いで駆け寄ったが、魔力はまだ感じられていたことを思い出してその言葉を頭の中から排除し安堵する。


「私が来た時にはもう意識がなかったんだ。幸いなことに命に別状はなさそうだから良かったけれど、彼ほどの実力者がこんなになるとは...あの魔物たち、紛い物の超越種と言えど我々にとっては脅威であることは変わりないね」

「そうですね...早く他の超越種も倒さないとですね」

「ああ、そうだね。ガーディス君は私が背負っていくから君は先に行ってくれ」


そうして俺はグランドマスターのところから急いで次に近くにいると思われるヴェスティガさんのところに向かうことにした。だが彼から感じられる魔力が普段よりも大幅に少なくなっていることがかなり不安である。


数分ほどでヴェスティガさんの元へと辿り着いた。
意外なことにそこにはイルーラさんも一緒にいたのだ。

どちらもすでに超越種は討伐したとのことだったが、かなりの激戦だったことが窺えるほどの負傷具合であった。特にイルーラさんからはほとんど魔力を感じないほどに消耗しきっており、ヴェスティガさんに肩を貸してもらって何とか立っていられるというほどであった。

対してヴェスティガさんも残った力で何とかイルーラさんを支えていたがかなりきつそうな感じである。超越種との戦いはそれほどまでにギリギリの戦いだったのだなと想像して思わず息をのんだ。


「ヴェスティガさん、僕が代わります」

「おぉ、それはありがたい」


俺はヴェスティガさんの代わりにイルーラさんを抱きかかえる。
俺にはまだまだ余力は残っていたので彼女をお姫様抱っこの形で抱き上げた。

最初は少し恥ずかしがっていたがそんなことを言っている状態じゃないことは彼女が一番わかっていたためすぐに大人しくなった。まあイルーラさん、とても華奢で軽かったので負担なんて全くなかった。


そしてその直後、ガーディスさんを背負ったグランドマスターとも合流して一度町の防衛線のところまで戻ることにした。かなりのスピードで向かったので辛うじて立って動くことが出来るヴェスティガさんには俺の風魔法で移動を補助しながら向かった。





===============================





「あっ、ユウトさん!グランドマスター!お帰りなさいです!!」

「お帰りユウト~!!」


俺たちが王都の門外にある騎士団とギルド職員の人たちが設営した防衛拠点に戻ってくるとそこには怪我人を治療しているセレナとその補助をしているセラピィの姿があった。


「ただいま!二人は大丈夫?」

「はい、私たちはまだ何とか。でも思っていた以上に負傷者が多いみたいで...」


そういうとセレナは少し不安そうな表情で辺りを見渡した。怪我人は予想以上に多く、セレナやセラピィを含め回復魔法が使える神官、騎士団の医療部隊も慌ただしく駆け回っていた。


ここに来る道中で行く手を塞いでいた魔物をかなりの数倒したので何となく分かったのだが、超越種たちだけではなくその他の魔物たちも何らかの強化が施されているようだ。

今回の作戦に集まったのはかなりの実力ある冒険者たちばかりで、かつ騎士団の人たちもそれに引けを取らないほどの実力は兼ね備えているはずだ。そんな彼らでさえこれほどまでの損害を受けているというのはかなり異常なことである。


「とりあえずセレナ君、この子たちのことをお願いしても大丈夫かな?」


グランドマスターがセレナにそう告げるとセレナは背負っていたガーディスさんを見て慌てて応援を呼びに行った。しばらくしてセレナがレイナや他の回復魔法が使える人たちを連れて帰ってきた。


「皆さん、大丈夫ですか?!」

「僕とグランドマスターは大丈夫だよ。でもイルーラさんたちのことをお願い」


そう告げて俺は敷かれた布の上にイルーラさんを寝かせた。グランドマスターも同じく背負っていたガーディスさんを寝かせ、ヴェスティガさんの介抱もしていた。


「Sランクの冒険者たちでさえこんなになるなんて...」


セレナや神官の人たちが彼らの治療を行いながら不安そうな言葉を漏らしていた。たしかに今ここでの最高戦力と言えるSランク冒険者たちがここまでの負傷を負っているとなると不安にもなるだろう。

レイナも持ってきた木箱から包帯などを取り出しながら不安そうな表情をしていた。


「大丈夫です!まだグランドマスターも僕もいますから。必ずこの戦いを終わらせて帰ってきます」

「ユウトさん...ユウトさんもどうか無事で帰ってきてくださいね」

「そうです、絶対に無理はしないでくださいね。約束ですよ...!」


俺は必死な眼差しでこちらを見つめるレイナとセレナに近づいて「もちろん、必ず帰って来るよ」と優しく答える。彼女たちは少し安心したのか先ほどまでの張り詰めたような表情が気持ち和らいだように感じた。


「あっ、これはエストピーク殿!戻っておられましたか」


突然背後から声が聞こえてきたので俺は立ち上がって後ろを振り返る。するとそこには白を基調とし差し色で赤色が入ったカッコイイ鎧を来た金髪の男性がこちらへと駆け寄ってきていた。


「おお、騎士団長か!とりあえず5体の超越種もどきは何とかSランク冒険者総出で倒すことは出来たよ」

「なんとっ!しかしその様子は...」


グランドマスターの発言からこの鎧を着た男性は騎士団を取りまとめる長、国王の懐刀と呼ばれその実力はSランク冒険者にも匹敵するのではないかと言われている人物であろう。

彼は超越種を倒したと聞いて一瞬嬉しそうな表情を見せたが、俺たちの背後で横たわっている彼らのことを見て不安そうな表情へと変化していった。


「ああ、見ての通りSランク冒険者とは言えどあの魔物たち相手では簡単にはいかなかったよ。だがまだ私とこのユウト君が十分戦える状態にある。心配は無用だとも」

「彼が件の新しいSランク冒険者ですか」


グランドマスターから聞いていたのか騎士団長はどうやら俺のことを知っているようだ。彼はこちらへと近づいてきて俺を鑑定でもするかのようにじっくりと見てきた。

すると急に彼は俺に頭を下げたのだ。
俺は突然の行動に驚いて半歩ほど後ろに下がってしまった。


「ユウト殿、此度は王都を守るため驚異的な魔物たちに果敢に挑んでくれていること感謝申し上げる。どうかこの町をこの国の心臓を守るため、どうかよろしく頼む!」

「えっ、あっ、いや頭を上げてください!もちろんそのつもりですから!!」


俺は騎士団長の行動に混乱してしまいどう対応すればいいのか分からなくてあたふたしてしまった。するとその様子を見ていたグランドマスターが笑いながら俺の代わりに対応してくれた。


「心配しなくとも大丈夫だとも。彼は必ず今回の首謀者を倒せるさ!」

「もちろんです!必ず倒して、この国を守り切ります!」

「...ありがとう。私も、私たち騎士団も全力でサポートします。後ろのことはどうか私たちに任せてください」


グランドマスターと俺、そして騎士団長で拳を合わせて誓い合う。
互いに自らの持ち場でこの国を守るために全力を尽くす。

何だか俺は力がみなぎってくる感覚がした。
今なら絶対にローガンスとあのドラゴンゾンビ・イクシードを倒せそうだ。




「では騎士団長、それに君たちも。行ってくるよ」

「レイナ、セレナ、セラピィ、行ってきます!」

「「「行ってらっしゃい!!!」」」


俺は彼女たちに笑顔でそう告げると彼女たちも笑顔で言葉を返してくれた。
その姿を見て俺はますます力が湧いてくる気がした。


そうして俺とグランドマスターの二人は最終決戦となろうドラゴンゾンビ・イクシードとローガンスの元へと急いで向かって走り出した。必ず勝って、必ずみんなを守り切る!!!


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