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第四章 極寒山脈の凶龍編
第74話 幸せの形
しおりを挟むボルグさんに新しい装備の制作を依頼した翌朝、今日も今日とて見慣れない豪華な部屋で目を覚ました。昨晩、まるで子供のように新しい装備の完成が楽しみ過ぎて夜更かしをしてしまったことでいつもよりも少し起きるのが遅くなってしまったようだ。
あとから聞いたのだが、マリアさんが俺のことを気遣ってくれたようで起こさずに寝かせてくれていたらしい。気をつかわせてしまって申し訳ない...
すでにレイナさんやお嬢様は朝食を済ませていたので俺は一人で朝食を食べることにした。こうしてゆっくりと一人で食べるのもいいけれど、みんなとワイワイ話しながら食べるのも違う良さがあるなと考えながらパンを噛み締める。
そうして穏やかな朝食を取り終えると俺は部屋に戻って今後の予定について考え始める。
もうすでに必要な物資は昨日のうちにマリアさんと共に買い揃えたので、あと必要なのはボルグさんに依頼した装備だけである。Sランク依頼を控えているのでいつも以上に慎重に、そしてより念を入れて必要なものを買い揃えておいたので正直これ以上は準備するものは特にないのだ。
あとは少し魔法の勉強をするとか、新しい魔法の開発をしてみたりとかぐらいしかやる事はないだろう。ただ、あまり依頼前に疲れが出てしまうようなことはしておきたくないのでゆっくりと英気を養うというのも一つの手である。
俺はいろいろと悩みに悩んだ結果、魔法の勉強は必要最低限にとどめて置いて基本的に残りの期間は疲れを残さないようにゆっくりと休むことにした。やはりいくら強くなっても疲れが残っていたり身体のコンディションが100%でなければちゃんと実力を出し切ることも出来なくなるだろうからな。
そうして俺は読みかけの魔法書をインベントリから取り出した。そして窓際のいいポジションにある椅子に座ってゆっくりと本を読みながら英気を養うことにした。
コンコンッ...
「ユウトさん、いらっしゃいますか?」
本を読み始めてどれくらいたっただろうか?
日の光が読み始めたころよりも眩しく室内を照らしていた。
そんな時に誰かが部屋を訪ねてきた。
俺は本からドアの方へと視線を移して声の主に返事をする。
「はーい、いますよ!」
俺は本をインベントリにしまって椅子から立ち上がる。
急いでドアの方へと向かっていき、ドアを開けて来客を確認する。
「あっ、お嬢様どうされました...?ってレイナさんも一緒でしたか」
「...こんにちは、ユウトさん」
「ユウトさん、少しお話があるのですがよろしいでしょうか?」
そこにはいつものように優しそうな笑顔で微笑んでいるお嬢様の姿と気のせいかもしれないが少し不安そうな表情をしたレイナさんがいた。俺はとりあえず二人を部屋へと招き入れることにした。何か話があるようだけれど、どうしてだか分からないが急に心拍数が上がってきた。
何だか分からないけれどこの状況に俺は緊張しているみたいだ。やましいことはしていないとは思うが知らないうちに俺は何かしてしまっていたのだろうか...?などなど嫌な思考が頭の中をグルグルと駆け巡る。
もしかして昨日からレイナさんの様子が少しおかしい気がしていたことと何か関係があるのだろうか。と、考え出したらきりがないほどに俺はいろいろと嫌なことを考えてしまっていた。
「........」
「...」
「...」
向かいのソファに座るレイナさんとお嬢様、そしてテーブルを挟んで対面に俺。誰もしゃべり出すことなく静かに時だけが流れていく。何だか面接のような感じのように見えるが、実際この重苦しい空気は面接のそれだった。
「あ、あの...何かお話があるんじゃ...?」
俺はこの気まずさに耐えきれずに二人に用を尋ねる。
するとお嬢様が突然大きく深呼吸をし始めた。
数回深呼吸をしてどうやら緊張しているようだった。
そんな重大な話なのかと彼女の深呼吸を見て余計に俺の心拍数が上昇していくのを感じる。
「...よしっ!すみません、お待たせしました。」
「は、はい...」
どうやら落ち着いてきたのかいつもより顔を赤らめているお嬢様がじっとこちらを見つめてきた。その瞳からは並々ならぬ強い意志を何故だか感じる。俺も息を整えて覚悟を決める。どんなことを言われてもそれがお互いのためになるというのであれば...とどんな話をされても良い返しが出来るように心の準備も整えた。
「実は...ユウトさんに私たち二人から伝えたいことがあるんです」
「...はい」
「ユウトさん、私は...」
お嬢様はその先の言葉を言おうとするがなかなか口にすることが出来ないようであった。その間、ほんの2,3秒だったのだが今ここにいる俺たちにとってはそれが何十秒もの長い時間に感じていた。
「ユウトさん...!私はあなたが好きです。救っていただいたあの時から、お慕いしております!!」
「はい、えっ...........えっ?!?!?!」
その言葉は心の準備をしっかりと整えていた俺の心を容易に揺さぶってきた。その威力は俺の思考を数秒間停止させるのには十分なものであった。そうして俺の思考回路がショートしている間に今度はレイナさんが口を開けた。
「ユウトさん...わ、私もユウトさんのことが...す、好きです」
「えっ、えっ?!」
新たなる追撃に俺の思考回路はさらにパニックに陥った。その後、ほんのわずかな時間だったが思考停止状態から何とか脱出した俺は必死に今の状況を整理し始める。
二人が俺のことを好き...?
どうして...?
...いや、どうしては違うな。
俺はどうするべきか、だな。
俺は二人のことをどう思っているのか。
もちろん俺にとってレイナさんもセレナお嬢様もどちらも勿体ないぐらいの素晴らしい人だ。そんな人たちが俺のことを好きだと言ってくれるなんて嬉し過ぎるに決まっている。
しかし俺はどうすればいいんだ?
こんなどちらも素晴らしい人たちなのに...
どちらか選べるのか...?
俺は永遠に答えの出ることがない思考をずっと頭の中で巡らせていた。
するとお嬢様が不安そうな小さな声で俺に話しかける。
「ゆ、ユウトさんは私たちのこと...どう、思っていますか?」
「も、もちろん二人とも素敵な方たちですし...僕には本当に勿体ないくらいです」
俺は自分の気持ちが完全に整理できていないなりにも必死に自分の想いを二人に伝える。しかし、これだけでは二人の気持ちに対する答えとしては全く足りていないということは分かる。
そんな中、レイナさんが泣きそうな震えた声で俺に問いかける。
「ゆ、ユウトさんは私たちのこと...好き、ですか?」
俺はその質問が何故だか心に鋭く鮮明に突き刺さってきた。色々と返答や情報整理に思考がごちゃごちゃとしていたのにも関わらず、その質問にだけは明確な答えが頭の中にすんなりと浮かび上がっていたのだ。
俺は少しその答えを口にするのが恥ずかしいと躊躇してしまいそうになったが、彼女たちの姿を見てそんな自分が一瞬で情けなく感じてしまった。彼女たちは恥ずかしくても一生懸命に自分たちの想いを言葉で伝えてくれたのだ。それに俺がちゃんと応じないのは彼女たちの覚悟に泥を塗ることになる。
俺は大きく一回息を吸い込み、真剣に二人のことを見つめる。
「僕はレイナさんのこともセレナお嬢様のことも、好きです。二人ともとても魅力的な人で、関わっていくたびに僕はそんな二人にどんどん惹かれていたんだと思います」
彼女たちはそんな俺の気持ちを聞くと先ほどまでの泣きそうで不安そうな表情から一変し、とても明るく満面の笑みを浮かべていた。本当に心の底から幸せそうな笑顔だ。
「ユウトさん!ありがとうございます!!!」
「わ、私もユウトさんのこと大好きです!!」
二人がそう言ってお互いに手をつなぎ合って喜び合っていた。
しかしそんな二人とは裏腹に俺は素直に喜べないでいた。
「ユウトさん、どうされました?」
そんな浮かない顔の俺に気づいたお嬢様が不思議そうに尋ねてきた。
俺は一瞬言うべきか悩んだのだが言うべきだと思い立ち、意を決して二人に打ち明ける。
「僕は二人のことが好きです。だからこそ僕にはどちらか一人なんて選べないんです!!どちらかを選べばどちらかを悲しませてしまう。優柔不断だと言われても仕方がないですが、俺はどちらか片方が悲しむ選択をすることが嫌なんです!!」
「そ、それにセレナお嬢様は貴族...しかも公爵家の令嬢です。一冒険者である僕とは身分の差があります。貴族でも何でもない僕がお嬢様と恋仲になるなんて許してもらえないと思うんです...」
俺は必死に自分の葛藤を言葉に詰め込んで二人に打ち明ける。
すると二人は俺の想像とは全く違った反応をしていた。
そう、二人ともポカーンと間の抜けたような顔をしてこちらを見ていたのだ。
「えっ、二人ともどうし...」
「ユウトさん!!」
「は、はい!!」
俺は二人の反応の理由を聞こうと声をかけようとしたところ、お嬢様が嬉しそうに待ってましたと言わんばかりに勢いよく話し始めた。
「ユウトさんは今や仮とはいえSランク冒険者という立場を手に入れています。この国ではSランク冒険者はその貴重さゆえに領地や貴族としての責務などはありませんが、私たち貴族と変わりない扱いをされているのです。もちろんそれは婚約に関しても言えます!なので心配ご無用なのです!!そしてそのような立場の人が二人以上の女性を妻にするということは珍しくありません。それか一人しかいない人の方が珍しいと思います」
セレナお嬢様は必死にかなり早口で俺に説明をしてくれた。
Sランクというものにそこまでの価値があったとは思いもしなかった。
確かにその説明だと俺がレイナさんとセレナお嬢様の二人とお付き合いすることも貴族の令嬢と恋愛関係になるというのが問題ないということになる。俺がそこについて心配する必要は全くないわけだ。
つまりはあと必要なのは...俺の覚悟だけか。
俺は目を閉じて頭の中に二人のことを思い浮かべる。
幸せに微笑む二人の顔、優しく話しかけてくれる彼女たち。
そのような光景に対して湧きあがってくるこの感情、とても暖かく幸せに満ちている。
そうか、幸せ...か。
すると俺はふと最近はあまり思い出すことのなかった前世での記憶を思い出した。当時の俺が必死に求めていたもの、あの頃は抽象的でふわっとしか分からなかったものが今は自分の中にあるんだとひしひしと感じた。
俺は前世から自分が本当に求めていた『幸せ』というものが何なのか少し分かったような気がした。そしてこの感覚を決して逃してはいけない、そう強く感じ覚悟を決める。
「レイナさん、セレナお嬢様。僕は...二人のことが好きです。まだまだ未熟者で二人に苦労を掛けてしまうかもしれませんが、絶対に二人のことを幸せにします!どうか僕と...結婚を前提にお付き合いしていただけませんか」
俺は覚悟と二人に対する気持ちを込めた言葉と共に頭を下げる。
するとゆっくりと二人が近づいてそっと肩に手を置いた。
「「こちらこそ、よろしくお願いします!」」
俺が顔を上げると目に涙を浮かべて幸せそうな笑顔を浮かべた二人がそこにいた。
そんな二人を俺は優しく抱きしめる。
これから何があってもこの二人が笑顔で居続けられるように頑張ろうと心に誓った。
「セラピィも一緒!」
するとベッドの上でじっとこちらを見ていたセラピィが俺たちの元へと駆け寄ってきて三人に抱き着いてきた。何だかこうしてみると父親と母親、そして娘という家族って感じがして何だか微笑ましく感じた。
「もちろん、セラピィもずっと一緒だよ」
「ええ、もちらんセラピィさんもです!」
「ずっと一緒です...!」
そうして俺たちはしばらく互いのぬくもりを感じながら抱きしめ合っていた。どうやら俺はもっと強くならなきゃいけない理由を見つけてしまったようだ。大切なものを守るため、この世界に危険が迫っているというなら何があっても俺がその悉くを打ち砕いて見せる!!
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