称号チートで異世界ハッピーライフ！～お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です～

第三章 王都誘拐事件編

第60話 ロードウィズダム家との朝食会

眩しく強く、そして温かい光が俺の目を照らしている。
突然電源を入れられたかのように自らの頭が働き出した。


「ん、ん...」


まだ働き出したばかりの脳が一生懸命に情報を処理しようとフル回転している。
そしてようやく俺は現状を認識し始めていった。


「あれ、ここは...？」


俺は何故か豪華なキングサイズと思われるベッドに一人横たわって寝ていたのだ。周囲は豪華な装飾が施された大きな部屋が広がっており、明らかに自分がいるべき場所ではないであろうということは理解できた。


俺は何かやらかしたのではないかと一瞬焦り、飛び起きてしまった。しかしながら徐々に昨晩の記憶が思い出されてきたことでようやく現状の理解を正確に行うことが出来るようになったのだ。


「そうか、そういえば昨晩はアルバート様に招待されてパーティに参加していたんだったな」


そう、俺は公爵家主催のパーティに公爵家当主直々に招待されて参加していたのだ。そしてパーティが終わるとせっかくだからと屋敷に泊まっていって欲しいと言われ、疲れていたのも相まって言われるがままこの豪華な客室で寝ることになったということだった気がする。


とりあえず俺はベッドから出て早々と支度を済ませる。
いつまでもここでお世話になるわけにもいかないのですぐにでも出ていくことに決めたのだ。


...コンコンッ


身支度を済ませて出発しようとしていた矢先、突然誰かがドアをノックする音が聞こえてきた。特に後ろめたいことをしていたわけでもないのに一瞬ドキッと身構えてしまった。


「ユウト様、起きていらっしゃいますか？」

「えっ、マリアさん...？」


ドアの向こう側からはマリアさんの声が聞こえてきた。
何かまた問題でもあったのだろうかと少しばかりの不安が頭をよぎる。


「失礼いたします。ユウト様、朝食の準備が出来上がりましたので呼びに参りました」

「ちょ、朝食...ですか？」


ドアを開けて部屋に入ってきたマリアさんはさも当たり前のように俺を朝食に呼びに来たのだと言う。俺はどこかのお店で食べてそのままサウスプリングに帰ろうと思っていたのだが...


「いや、そこまでお世話になるわけには...」

「ユウト様は正式なロードウィズダム公爵家のお客様ですので礼を尽くすのは当然のことです」


マリアさんは真剣な表情で俺をじっと見つめたままそのように告げる。
俺は何も言うことが思いつかずにそのまま朝食へと案内されることとなった。

何か俺、ここに来てから言いくるめられてばかりじゃないか...？


朝食が用意されている部屋へと案内されるとそこにはとても長く広いテーブルが置いてあり、白いテーブルクロスに綺麗に配置された食器の数々、まさに芸術といってもいい空間が広がっていた。

そしてそこにはすでにセレナ様とアルバート様、そして昨日のパーティでアルバート様の隣に常にいた金髪の女性、おそらく公爵夫人だろう人物とセレナ様の姉や兄のような夫人やアルバート様によく似た人物の計5人が座っていた。


「おぉ、ユウト君来たか！さあ座ってくれ」

「えっ、あの、これはどういう...」


まさかの公爵家勢ぞろいとは思いもよらず、俺は突然の緊張で頭が混乱し始める。
アルバート様やセレナ様なら以前も話したからまだいいものの他の方々もいるなんて...

俺、場違いすぎないか？


「なに、遠慮することはない。我が家族の恩人なのだからこうしてもてなすのは当たり前だろう」

「は、はい...失礼します」


俺は恐る恐るマリアさんに案内された席へと向かい、生きた心地がしないまま席に着く。
その直後、俺を待っていたかのように全員の前に続々と料理が運ばれてき始めた。


「さて、この度は我が娘セレナを救ってくれた恩人であるユウト君に改めて感謝を。乾杯！」

「「「「乾杯」」」」

「か、乾杯...」


アルバート様の音頭で皆が一斉に飲み物を飲み始める。
俺もそれに続きグラスを口にもっていくが何を飲んでいるのか味があまり分からなかった。


「初めまして、ユウトさん。私はアレナ・ロードウィズダムと申します。この度は私たちの娘を助けていただき本当にありがとうございました！」


すると公爵夫人、アレナ様が俺に挨拶と感謝を告げる。
それに続くかのようにセレナ様の姉や兄もこちらに話しかけてきた。


「私はセレナの姉のイレーナ・ロードウィズダムと申します。妹を助けていただきありがとうございました」

「同じく兄のグラート・ロードウィズダムと申します。あなたがいなければ妹が大変なことになっていたと聞き、感謝の気持ちでいっぱいです。ありがとうございます」

「あっ、いえ！とんでもございません！」


俺はまたもや貴族の方々から頭を下げられて困惑する。
こういう時、一体どう対応するのが正解なのか誰か模範解答を用意してほしいと心の中で叫んでいた。

しかしここでふと昨日のパーティでのセレナ様との会話を思い出した。

アルバート様、アレナ様、そしてイレーナ様にグラート様。
この方たちの雰囲気を見ていると少し温かな気持ちになった。


「ユウト君は我がロードウィズダムの恩人だ。せっかくなので今まで時間を取れなかった分、君とゆっくり話でもと思ってこのような席を設けさせてもらったのだ」

「そうでしたか、このような席を設けて頂きありがとうございます」


そうしてロードウィズダム公爵家の方々との談笑を交えた朝食会が始まった。
最初は緊張していたものの途中から話が弾んで意外と楽しい時間を過ごすことが出来た。





「...そういえば、ユウト君。王都にはどのくらい滞在する予定なのかね？」

「もう今日か明日にでもここをτ発つ予定です」

「えっ！？」


突然セレナ様が大きな声を上げた。
さっきまで大人しく談笑していたのに急に声量が2,3倍にまで跳ね上がったのだ。


「あっ、ご、ごめんなさい。突然大きな声を出してしまって」


セレナ様は自分でも思ってもみなかったほどの声が出たようで恥ずかしそうに顔を赤らめて下を向いてしまった。まあたまにあるよね、思っていたよりも声が出てしまったり、逆に出なかったりってこと。


「そんなすぐに出発するのですか？もう少しゆっくりしていけばいいのに」

「もともと王都には冒険者としての依頼で来ただけなのでそこまで長く滞在するつもりはなかったんですよ」

「まあいいじゃないか、アレナ。冒険者をやっているんだから忙しいのは仕方ないさ。それにまたすぐに会えるだろう」


アルバート様はそのようにアレナ様に告げる。
もしかしてアルバート様は冒険者にかなり理解がある方なのだろうか。

そういえばマリアさんも元冒険者って言ってたし冒険者ギルドと何かしらの繋がりでもあるのだろうか？


「ユウト君、せめて今日ぐらいは我が屋敷でくつろいでいってくれ。何かあればマリアや近くの使用人に遠慮なく伝えてくれ」

「あ、ありがとうございます」


そうして突然始まった緊張交じりのロードウィズダム公爵家の方々との朝食会が終わった。
途中から緊張も解けて楽しく話すことが出来たのはとても良かった。

それにしてもセレナ様は大丈夫だろうか？
あのあとずっと考え込むように下を向いていたからな。

まあでも特に悪そうな雰囲気ではなかったし大丈夫だろう。
何かあったらあの家族が守ってくれるだろうし。


そうして俺はロードウィズダム公爵家での最後の一日をのんびりと過ごすことにした。綺麗な庭園をセレナ様の案内でセラピィとともに散歩したり、あの豪華な客室でゆったりと読書をするなど非常に安らかな時を過ごすことが出来た。


そして静かで穏やかな夜が明け、王都を出発する日の朝を迎えた。