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第三章 王都誘拐事件編

第42話 護衛依頼

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ギルマスから破格の報酬を貰ってから数日後、俺はいつものように依頼を受けるためにギルドへとやってきていた。


依頼を探そうと掲示板のところへと向かうと、偶然にも掲示板で依頼書の整理作業をしていたレイナさんと目が合った。

挨拶をしようとすると俺が声をかけるよりも早くレイナさんは俺を見るなり即座に作業を中断し、こちらの方へと駆け寄ってきたのだ。


「ユウトさん、こんにちは!実はちょうどユウトさんにお話ししたいことがあったんです」


そういうと俺はレイナさんに連れられて受付へと向かうこととなった。一体話って何の事だろうか?先日の緊急依頼の件はもう一段落ついたし、もう思い当たることはないけど。


俺はレイナさんとともに受付へとやってくるとすぐにレイナさんは一枚の依頼書を俺へと差し出した。それを一目見た瞬間に俺は忘れていた大事なことを思い出した。


「これって...」

「はい!Dランクへと昇格するために必要な護衛の依頼です。ようやく入ってきたのでいち早くユウトさんにお伝えしようと思っていたんですよ」


そうだ、ゴブリンの件ですっかり忘れていたけれどDランク昇格のために護衛依頼が入ってくるのを待っていたんだった。これでようやくDランク昇格のための第一歩を進められるわけか。


「レイナさん、ありがとうございます!ぜひ受けさせてください!!」

「承りました!では、詳しい依頼内容について説明いたしますね」


ということで俺はついにDランク昇格のために初めての護衛依頼を受けることとなった。

護衛依頼というのは依頼主を守りながら道中で魔物に襲われたり、そして盗賊などの対人戦があったりと今までに経験したことがないような依頼となるだろう。だからこそ不安もあるが、新しいことっていうのはやはりワクワクしてしまうな。


「依頼主はマーカント商会さんで、ここサウスプリングから王都セントラルまでの護衛となります。報酬の関係上、今回は一人しか雇えないとのことなので本来なら初めての方に回すような依頼ではないのですが...」

「えっ、それじゃあどうして僕に?」


そう聞くとレイナさんはニコッと笑顔を見せる。


「実はギルドマスターと相談しまして、ユウトさんなら問題ないということになりました!」


な、なるほど...?
それは信頼されているってことでいいの、かな。


「ありがとうございます...でいいんですかね」

「私もギルドマスターもユウトさんの実力は分かっていますからね!」


何だか僕への評価が異様に高い気がするけど出来ればほどほどでお願いしたいところだ。
正直あまり期待され過ぎるとプレッシャーが...


「では依頼の方を受理しておきますね。護衛依頼頑張ってくださいね」

「はい、ありがとうございます!」


さてと、出発の日は3日後だからそれまでにいろいろと準備しておかないとな。初めての護衛依頼だからっていうのもあるけどそれに人命がかかってるんだから慢心せずに万全を期して挑まないと。


その日は他の依頼を受けずにギルドを後にした。宿に帰ってから護衛依頼の日までに用意するべきこと、そしてやるべきことをリストアップしてしっかりと準備をしていくことにする。やっぱりToDoリストっていうのは大切だからな。


そうして俺は出発までの3日間をすべて護衛の準備に費やすことになった。幸いなことにお金は十分すぎるほどあるので節約することなく必要なものは全て気兼ねなく買うことが出来る。

お金、あってよかった。


そうして色々としているとあっという間に準備期間の2日が過ぎていったのだった。そして準備期間の最終日、俺は最後の必要なものを取りに行くためにガルナ鍛冶・装備屋に向かった。

ゴブリン・イクシード戦で以前ヴェルナさんに作ってもらった剣が壊れてしまったので、もう一度ヴェルナさんにお願いして新しく作ってもらっていたのだ。その受取日が偶然にも出発の一日前という...ギリギリ間に合って本当に良かった。


「こんにちは~!」

「あっ、ユウトさんいらっしゃいませ!」


お店へと入るといつものようにエルナさんが元気よく出迎えてくれた。先日新しい剣をお願いしに来た時にも思ったが、以前と比べて一段とお店の商品の数が増えている気がする。それにどれも品質が良いものばかりだ。


「おぉ、ユウトじゃねーか!頼まれてたものならもう出来てるぜ」

「こんにちは、ヴェルナさん。今すぐ受け取ってもいいですか?」

「もちろん!今すぐ持ってくるから待っててくれ」


俺がお店に入るなりすぐにヴェルナさんもお店の奥から顔を出してくれた。
お願いしてからあまり日が経っていないのに、本当に仕事が早い。


「よっと、待たせたな。これが新しい剣だぜ」


そういうとヴェルナさんはカウンターの上に立派な片手直剣を置いた。
俺はそれを手に取って鞘から取り出して剣の感覚を確かめる。


「うん、すごく良いですね!」

「そうだろ!まあ前に作ったときからあんまり日が経ってないから品質自体は変わんねーけどな」

「いえいえ、それはすぐに剣を壊してしまった僕が悪いんですし」


そうなのだ、以前の剣は作ってもらってすぐに壊してしまった。いくら超越種と戦ったからと言っても自分の作ったものをそんなにすぐ壊されるというのは作り手にとって悲しいことだろう。本当にヴェルナさんには申し訳ない。


「いや、いいんだよ。そんだけ相手が強かったってことだろ?逆に俺の作った武具でユウトを助けられたなら鍛冶師冥利に尽きるぜ!」


そんな風に言ってもらえるなんて...何だか嬉しいな。
ちょっと目頭が熱くなってしまった。


「今度こそ簡単に壊れないように大切に使いますね!」

「おう、ありがとよ!」


俺は代金を支払い、新しい剣を手に入れた。
ついでと言ってはなんだが防具のメンテナンスも一緒にしてもらった。


これでリストアップした準備項目はすべて完了した。
あとは出発の日に寝坊しないだけだ。

なんと明日は朝早くに出発することになっているので集合時間も早いのだ。サウスプリングから王都セントラルまでは馬車で数日かかる距離があるらしいのでそのようになった。おそらく日が落ちるまでに出来るだけ先に進みたいのだろう。

俺は昔から早起きはあまり得意ではないので少し心配である。
セラピィに頼んで起こしてもらおうかな...

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