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第二章 ゴブリン大増殖編
番外編⑥ 迷子の男の子
しおりを挟む「ふぅ、依頼報告終わった~」
本日の依頼も無事終わり、俺はギルドからすずねこ亭へと向かっている。こうしてのんびりと出来るのはやっぱりいいなと夕焼けに染まる空を見ながらしみじみと感じる。俺はゴブリン討伐作戦の事後処理がひと段落してからは以前と同じような穏やかな日々を過ごすことが出来ている。
前世では常に不安で焦りを抱きながら毎日を過ごしていたからな。
こうした生活が出来るだけでも本当に転生できてよかったと思える。
日も落ちかけているということもあり、町を行き交う人たちもかなり少なくなってきている。やはり前世とは違ってこの世界の人たちは規則正しい生活をしているようだ。朝に起きて日中に活動し、夜になってきたら休む。当たり前でとても大切なリズムだ。
「うぅ...お姉ちゃん、どこぉ...」
歩いているとどこからかかすかに泣き声が聞こえてきた。辺りを見渡してみると道の脇で男の子が体育座りでうずくまって泣いていた。辺りに保護者らしき人も見当たらず、これは完全に迷子であろう。
「君、大丈夫?」
こんな時間に子供一人でこんなところにいたら心配なので俺はとりあえず声をかける。
すると泣いていた子供は膝に埋めていた顔を上げてこちらへと目線を向けた。
「うぅ...お姉ちゃんがいなくなっちゃった...」
「お姉ちゃんと一緒だったの?」
「うん、一緒にお買い物してたんだけど...いつの間にかいなくなっちゃて...」
あぁ、なるほど...これはよくある感じの迷子ですね。う~ん、前世だったら交番に連れて行ったらいいんだけどこの世界だと警備兵のところに連れて行ったらいいのかな?
「そうなんだね。とりあえず警備兵のところに行くかい?」
「...いやだ」
「でも、ずっとここにいたら危ないよ?」
「いやだ!お姉ちゃんが来てくれるもん!!お姉ちゃん来るまで待つんだもん!!」
そう言うと再び顔を膝に埋めて顔を伏せてしまった。
これは意地でもここから動きそうにないな。
どうしたものか...
とりあえずこの子をこのまま一人にさせておくわけにもいかないので、俺も隣で壁に寄りかかってしばらく一緒にいることにした。しかしこういうとき何を話せばいいのか全く分からない。この無言の空間はとても気まずい。
「そういえば君、名前なんて言うの?」
「...ロイルだよ」
「そうか、ロイル君っていうんだね」
う~ん、なかなか話が広がらないな...
この子が自然と話したくなるような、好きなことについて聞ければいいのだけど。
「...君のお姉ちゃんってどんな人なの?」
さっきまでのこの子の反応からたぶんお姉ちゃんが大好きなんじゃないかと思う。
俺は必死にこの気まずい空気をどうにかしようとロイル君に話しかける。
「えーとね、僕のお姉ちゃんはね。優しくてかっこよくて、それでねとても強いんだよ!」
「そうなんだね、いいお姉さんだね」
「うん!それでね、お母さんが病気になってからは僕たちのためにすごく頑張ってくれてるんだ。だから今日は少しでもお姉ちゃんの役に立ちたいと思ったんだけど...」
元気にお姉ちゃんのことを話していた男の子だったが、再び目に大粒の涙を浮かべて今にも泣き出しそうな顔をし始めた。俺は咄嗟に何か話を明るい方向へと持っていこうと必死に頭を回転させた。
「あ、お姉ちゃんがとても強いって言ってたけど、もしかしてロイル君のお姉ちゃんは冒険者なのかな?」
「...ぐすっ、うん。お姉ちゃんは冒険者だよ。それもとても強い冒険者なんだ!この前もすごい作戦に行ってきたりもしたんだよ!!」
「...すごい作戦?もしかしてゴブリンのやつかな?」
「そう!ゴブリンを一杯倒してきたんだって!!僕のお姉ちゃんすごいんだよ!!!」
この子のお姉ちゃん、あのゴブリン討伐作戦に参加していたのか。
もしかして俺、会ったことあるかな?それなら見つけてあげれるかもしれない...!
「君のお姉ちゃんって名前なんて言うの?」
「僕のお姉ちゃん?名前はローナだよ。ローナお姉ちゃん」
ローナってもしかしてあのBランク冒険者パーティのシーフっぽい人か?
すごく大人しそうな人だったけど、家族を支える立派なお姉ちゃんだったのか。
それはそうと、彼女なら知っているから探し出せるぞ!
彼女の魔力は覚えているから地図化スキルを使えばこの町のどこにいても分かると思う。
俺はすぐに地図化スキルを発動し、ローナさんを探し始める。
すると案外簡単に見つけ出すことが出来た。
「ロイル君、君のお姉ちゃんどこにいるか分かったかも!」
「えっ!本当!?!?!」
お姉ちゃんを見つけたことを伝えると一気に表情が明るくなりキラキラとした笑顔を見せる。
この子は本当にお姉ちゃんのことが大好きなんだな。
「本当だよ。じゃあ一緒にお姉ちゃんのところに行こうか」
「うん!!!」
そうして俺はロイル君を連れてローナさんのもとへと向かうことにした。
正直この状況を傍から見られると誘拐犯と思われないかと内心ドキドキしていた。
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