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第二章 ゴブリン大増殖編

番外編④ 甘いお菓子をプレゼント─前編─

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「さてとっ、じゃあ料理始めていきますか!」

「おー!」


突然だが俺は今、ランちゃんと一緒にすずねこ亭の調理場にいる。
なぜこのような状況になっているのかというと、それは今日の朝にまで遡る。





======================





「う~ん......」

「ユウトさん、どうしたんですか?」


すずねこ亭で朝ご飯を食べながら唸っているとランちゃんが心配そうに声をかけてくれた。
もしかして俺、深刻そうな顔でもしてただろうか...?


「あっ、ごめんね!別に大したことはないんだけどね」

「そうですか?...何か悩みがあるなら私が聞きますよ!!」


いや、悩みってほどの事じゃないんだけどなぁ...

しかし、目の前にいるランちゃんは目をとてもキラキラさせてこちらを見ている。
おそらく他人の悩みを聞いて解決するという大人っぽいことをやってみたいのだろう。


まあ自分一人で考えていても答えが出なさそうだからランちゃんに聞いてみるのもありかもしれないな。三人寄れば文殊の知恵とも言うし。

...まあ二人だけどね。


「実はね、この前の事でギルドの受付の人に心配かけちゃったから何かお詫びと日頃のお礼もかねて何か出来ないかなと思っててね」

「この前のってボロボロになって帰ってきた日のこと?」

「うん、そうなんだ。で、さっきからずっと考えてたんだけどなかなかいい案が思い浮かばなくて...」


そう、先日のゴブリン討伐作戦の際にレイナさんに物凄い心配をかけてしまったからそのお詫びをしないとなとずっと思っていたのだ。ここしばらくは作戦の事後処理でバタバタしたいたけれど、ようやく落ち着いてきたので準備しようと思ったという訳だ。


「もしかしてその相手って女の人...ですか?」

「えっ、そうだけど...」


急にどうしたんだ、ランちゃん?
怖いよ、目が怖いよ!!


「それってつまり、女の子へのプレゼントってことですか?」

「プレゼントと言われればそうだけど...別にそれ以外の特別な意味はないよ!?お世話になってる人へのお礼だからね!?」


ふ~ん、そうですか...、と何かを考える素振りを見せるランちゃん。
もしかしてだけど、俺が好きな人に贈るプレゼントで悩んでるって思われてる?

確かにレイナさんはすごい素敵な人だし、可愛いし、あんな人と付き合えたらすごい嬉し...


って何を考えているんだ?!?!?!
そんな甘酸っぱいラブコメを俺が出来るわけないじゃないか!期待するな、俺!!


「まあ、そういうことにしておきますね」

「そういうことというか、本当にそうなんだけど...」


ランちゃんの中ではまだ納得出来てないらしい。
これはいつか変な誤解へと発展しそうで何か怖いな...


「そうですね~、喜んでもらえそうなもの...」

「何かいい案ある?」

「うーん、私なら美味しいものが良いですね!」


美味しいもの、か...
どこか美味しいお店に誘うとか?


いやいやいや!そんなの無理だろ!!!
前世で彼女いない歴=年齢の俺が女性を食事に誘えるわけないじゃん!!!


でも他に思いつくものと言えばアクセサリーとかぐらいだけど、それもプレゼントするとなると恥ずかしいし。それに今回はあくまでも心配させてしまったお詫びと日頃のお礼だからアクセサリーは何か違う気がするんだよな。


ってなるとやっぱり美味しいものが一番いいのか...?
でも食事に誘うのはハードル高いし、他に何かいい方法はないだろうか。


「ん~、美味しいもの...」


何か惜しいところまで来ている気がするんだよな~。再び唸りながら考えているところに横で美味しい食べ物を想像しているランちゃんの笑顔が目に入る。

その姿を見ていると突如ピカッと名案が閃いた。


「そうだ!お菓子だ!!」

「へっ?!お菓子?」


そう!美味しいもので手軽にプレゼントできるものと言えばやっぱり甘いお菓子だよな!!そうと決まれば早速探しに行こう!!!


俺は急いで残りの朝食を食べ終えると買い物へと向かう準備をする。準備が整い出かけようとしたその時、後ろからランちゃんが軽く俺の服の裾を掴んできた。


「ユウトさん...私も一緒に行ってもいいですか?」


少しモジモジとしながら上目遣いで尋ねてくる。

くっ!可愛すぎやしないか!?
これ、もし意図的にやっているんだったら相当策士だぞ。
けれど、おそらくこれは無意識でやっているんだろうな。

恐るべしランちゃん...!


「別に大丈夫だよ。でもまずはランちゃんのお父さんに許可を貰ってからね」

「分かりました!お父さんに聞いてきます!!」


そう言うと目をキラキラ輝かせながら奥へと走っていく。
こういう姿を見ると何だか微笑ましくなるな。





そうして俺たちはお菓子を買うために市場へとやってきた。
ここにはいろんな物が売られているためプレゼントに最適なものもあるだろう。


「ねぇ、ユウトさん。本当に甘いお菓子をプレゼントするの?」

「えっ、良い案だと思ったんだけど。ダメかな...?」


横にいるランちゃんが心配そうに聞いてくる。
何か問題でもあるのだろうか...?もしかしてこの世界でお菓子をプレゼントするのは変なのか?


「いや、甘いお菓子なんてそんな貴族様が食べるような高価なものプレゼントするなんてすごいなぁと思って」


え...甘味って高価なものなの?
前世のイメージで手軽に買えてプレゼントに最適だと思ったんだけど...


「も、もしかして甘いお菓子って...気軽に渡せるものじゃない?」

「気軽に渡せるわけないじゃないですか!めちゃくちゃ高いんですよ!?」


おぅ、まさかのここに来て異世界ギャップか。
甘いお菓子が買えないとなるとさてどうしたものか...


「って、買えないなら自分で作ればいいじゃん!」

「ユウトさん、作れるの?」

「材料さえあれば、ね」


ということで予定変更!甘いお菓子の材料を探しに行くぞ!!
じゃあ何を作るかも考えないとな。


手軽に作れてプレゼントできる美味しいお菓子と言えば...
やっぱりクッキーだよね!

以前、店で食べたクッキーは甘いお菓子というよりちょっとしたつまみって感じだったな。たぶんこの世界では砂糖みたいな甘味が高級品扱いなのだろう。


そうなるとあれと、あれと、あれが必要だな!
よしっ、頑張って必要なものを集めていきますか!!


そうして俺たちは甘いクッキーの材料を求めて市場を駆け巡ることとなった。


しかしここは異世界。簡単に前世と同じ感じでクッキーの材料が手に入るわけもなく、材料を買ってからすずねこ亭に帰って来る頃には二人ともめちゃくちゃ疲れ切っていたのであった。

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