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第94話
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~ハルが異世界召喚されてから15日目~
レイは遊ばれていることに直ぐ気が付いた。
何故ならレイの攻撃を引き付けるだけ引き付けて、ギリギリのところでこの帝国の少年兵が躱すからだ。
「もっとスピード上げられないの?」
煽られるなか、ルナが逃げたことを確認すると、ルナの背後に男がいる。
──なぜ逃げない!
レイはルナの元へ行こうとするが帝国の少年兵がそれを阻む。
「ねぇ?もっとスピード上げてよ?」
レイは光の剣を用いて最速の剣撃を繰り出したが、ヒラリと躱される。
「これが最高速度?」
金髪の少年兵は煽るが、少年兵の装着していた甲冑が壊れ、少年の細い胴体と腕が顕になった。
「へぇ~?」
自分の素肌を確認するように眺める少年兵、その二の腕には、過去に刺青を消すため自らの皮膚を焼け焦がしたような大きな火傷の痕が残っていた。
再度ルナを確認すると、男に後ろから襲われているところだった。
─────────────────────
ルナは背後から気配を感じとり振り返ろうとするが遅かった。
押し倒され、うつ伏せの情態になる。
いつ背中を刺されるかビクビクしているルナの耳元で男が囁く。
「君は何者…?」
ルナの背筋が凍る。
ガエターノは思った。
──これは神の思し召しだ、クフフフフ……
ガエターノは押し倒したルナの背中に跨がる。
後は攻略するだけだ。ガエターノはもう一度訊く。
「君は何者?」
ルナは恐怖に震えていた。その震えはとてもガエターノを興奮させた。しかし、攻略せねばならない。
「良いかい?もう一度訊くよ?答えなければ直ぐに殺す…君は何者だい?」
小さな悲鳴をあげて、ルナは答えた。
「…ルナ・エクステリア……です」
「そうじゃないそうじゃない。私は君のことを知ってるよ?第三階級聖属性魔法を唱えられ聖女と謳われているだろ?」
「……」
「どうしてそんな君がここでうずくまっていたのかな?」
「……」
「そうか、わかった……君は自分自身が大事だけど、ここにいる負傷兵を見捨てて自分だけが助かるのが嫌だったんだね?」
──この人はさっきから何を言っているの?どうして早く私を始末しないの?
ルナの疑念が渦巻く。
「わかるよその気持ち。見捨てた、見殺しにしたっていうのがずっと纏わりつくのが嫌なんだよね……でも君は誰かが手を引いてくれないと動かないだろ?」
ガエターノはルナがうずくまっている様子と、馬乗りになってルナの第一声の言動を聞いて粗方検討がついていた。
「君は誰かの手をずっと待っている。この乱戦から抜けさせてくれる人の手を。誰かこんな戦争から私を救いだしてくれないかってね。そうすれば自分は負傷兵を見捨ててなんかいないって、手を引いた人のせいにできるから……」
ルナは何も言えなかった。心の片隅にあった気持ちをそのまま言語化され戸惑っていたのだ。
「ここでわかるのは、君はこの仕事をやりたいと思ってないってことなんだ」
──そんなことはない……
「そんなこと……」
「確かにやりがいを感じるときだってある。だけど、この仕事に対して真剣に考えていないからこうなるんだよ」
「…真剣に……」
ルナがガエターノの話を聞き始めた。
「そうさ、この仕事が好きなら救わずに見捨てることもしてみるんだ……」
「そんなことはしたくな──」
ルナが反論し終わる前にガエターノが言った。
「君のために人が死んだじゃないか?その人は良いのかい?君を逃がそうとしたあの兵士、私は見てたよ?君の手を引っ張らなかったあの兵士は死んでしまったんだ」
ルナは何も言い返せなかった。
──この人の言う通りだ……
「君の不正解は僕の正解、僕の不正解は君の正解……この仕事が好きなら嫌いなことにも目を向けないと君はいつだって変わらない。いつか君は大事な人が危なくなりそうなとき、さっきみたいに動けず見殺しにするだろう……」
私はなんでこの仕事をしているのだろうルナは自分に問いかけた。
──自ら志願したから、いいえ違う。第三階級魔法が唱えられたから、ただそれだけで、この戦場に連れてこられてる。あぁ…そうか……私はこの仕事がしたくてしてるわけじゃないのか。じゃあ私は何がしたいの?
「さぁそろそろ時間だ。君は今僕の言うことが理解できたのなら大人へと一歩進んだ、もし理解できていなくても僕が大人にしてあげよう……」
ガエターノはルナの股に手を入れる。
ルナは自分自身の支え、アイデンティティーがもともとなかったことに気が付いた。
こんな私に何の価値があるのだろうか……
そう思うとルナはガエターノに身を委ねた。
──攻略完了……
ガエターノは久しぶりに女性を攻略した快感に耽る。そして、これからもう一つの快感に、と思うと、
「おい……」
ガエターノの前に冷たい表情をした王国の少年兵が現れた。
その少年兵を見た瞬間、ガエターノは恐怖で声がでなくなった。
ガエターノの警報装置が大きな音を立てて報せている。
自分はここで死ぬと。
ハルはルナに馬乗りになっている男の胸ぐらを掴もうとしたが、勢いのあまりハルの指はガエターノの皮膚を突き破りそのまま鎖骨を掴んで持ち上げた。
皮膚を貫かれた痛みと鎖骨を素手で触れられる痛みがガエターノを襲う。
ハルと目が合うガエターノは恐怖に慄く。
ハルは怒りを滲ませ、鎖骨を握る力が強まる。
バキッと音をたててガエターノの鎖骨が砕けた。
落下するガエターノをハルはサッカーボールを蹴るように蹴り上げた。
ガエターノは無数の肉片へと変化した。
「レイ!!」
ハルはレイを探した。
レイは同い年くらいの少年と戦っている。ハルはそこに割って入る。
「レイ?」
レイは突然現れたハルに驚いた。
「僕が代わるから彼処に横たわってるルナさんを抱えて今すぐここから離れて」
ハルはレイにも少なからず腹が立っていた。何故ルナを連れて逃げないのか。
「あれぇ?選手交替?君はさっきの子より速い?」
ハルは構わず帝国の少年兵に歩みを進める。
「あれぇ?無視?フレイム!」
少年の掌から業火の炎がほとばしりハルを飲み込む。
「キャハ!さっきの子はどこ行った?」
少年はキョロキョロしてレイを探している。しかし自分の出した炎の中から手が飛び出し少年兵の頭を掴んだ。
「へ?どうして僕の炎が効かないの?」
少年兵はハルに頭を掴まれながら話す。
「お前が弱いからだ」
ハルはフレイムを唱えて少年を焼失させる。少年の腕には元々火傷の痕があったが、その痕が全身に広がるように皮膚がただれ、炎が少年の全身を包んだ。
ピコン
レベルが上がりました。
「…レベルが上がって、MPも全快になったことだし……」
ハルは呟くと周囲を見渡す。
「「うぉぁぁぁぁ!」」
「「ぐわぁ!」」
殺し合いはまだまだ続いている。いや一方的な蹂躙だ。しかしそれも兵士同士なら仕方のないことなのかもしれない。
「敵本陣はあそこか……」
レイもここから離れたと思ったハルは魔力を練り上げて、唱える。
「フレアバースト!」
青い竜が出現しその衝撃で周囲の大勢の者達は一瞬にして焼け死んでいく。いや、消滅したといっても過言ではない。炎の竜は帝国兵を焼き殺しながら帝国本陣へと向かって行った。
ピコン
レベルが上がりました。
ハルの頭に多くの敵を焼失させた証明が頭の中で響いた。
レイは遊ばれていることに直ぐ気が付いた。
何故ならレイの攻撃を引き付けるだけ引き付けて、ギリギリのところでこの帝国の少年兵が躱すからだ。
「もっとスピード上げられないの?」
煽られるなか、ルナが逃げたことを確認すると、ルナの背後に男がいる。
──なぜ逃げない!
レイはルナの元へ行こうとするが帝国の少年兵がそれを阻む。
「ねぇ?もっとスピード上げてよ?」
レイは光の剣を用いて最速の剣撃を繰り出したが、ヒラリと躱される。
「これが最高速度?」
金髪の少年兵は煽るが、少年兵の装着していた甲冑が壊れ、少年の細い胴体と腕が顕になった。
「へぇ~?」
自分の素肌を確認するように眺める少年兵、その二の腕には、過去に刺青を消すため自らの皮膚を焼け焦がしたような大きな火傷の痕が残っていた。
再度ルナを確認すると、男に後ろから襲われているところだった。
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ルナは背後から気配を感じとり振り返ろうとするが遅かった。
押し倒され、うつ伏せの情態になる。
いつ背中を刺されるかビクビクしているルナの耳元で男が囁く。
「君は何者…?」
ルナの背筋が凍る。
ガエターノは思った。
──これは神の思し召しだ、クフフフフ……
ガエターノは押し倒したルナの背中に跨がる。
後は攻略するだけだ。ガエターノはもう一度訊く。
「君は何者?」
ルナは恐怖に震えていた。その震えはとてもガエターノを興奮させた。しかし、攻略せねばならない。
「良いかい?もう一度訊くよ?答えなければ直ぐに殺す…君は何者だい?」
小さな悲鳴をあげて、ルナは答えた。
「…ルナ・エクステリア……です」
「そうじゃないそうじゃない。私は君のことを知ってるよ?第三階級聖属性魔法を唱えられ聖女と謳われているだろ?」
「……」
「どうしてそんな君がここでうずくまっていたのかな?」
「……」
「そうか、わかった……君は自分自身が大事だけど、ここにいる負傷兵を見捨てて自分だけが助かるのが嫌だったんだね?」
──この人はさっきから何を言っているの?どうして早く私を始末しないの?
ルナの疑念が渦巻く。
「わかるよその気持ち。見捨てた、見殺しにしたっていうのがずっと纏わりつくのが嫌なんだよね……でも君は誰かが手を引いてくれないと動かないだろ?」
ガエターノはルナがうずくまっている様子と、馬乗りになってルナの第一声の言動を聞いて粗方検討がついていた。
「君は誰かの手をずっと待っている。この乱戦から抜けさせてくれる人の手を。誰かこんな戦争から私を救いだしてくれないかってね。そうすれば自分は負傷兵を見捨ててなんかいないって、手を引いた人のせいにできるから……」
ルナは何も言えなかった。心の片隅にあった気持ちをそのまま言語化され戸惑っていたのだ。
「ここでわかるのは、君はこの仕事をやりたいと思ってないってことなんだ」
──そんなことはない……
「そんなこと……」
「確かにやりがいを感じるときだってある。だけど、この仕事に対して真剣に考えていないからこうなるんだよ」
「…真剣に……」
ルナがガエターノの話を聞き始めた。
「そうさ、この仕事が好きなら救わずに見捨てることもしてみるんだ……」
「そんなことはしたくな──」
ルナが反論し終わる前にガエターノが言った。
「君のために人が死んだじゃないか?その人は良いのかい?君を逃がそうとしたあの兵士、私は見てたよ?君の手を引っ張らなかったあの兵士は死んでしまったんだ」
ルナは何も言い返せなかった。
──この人の言う通りだ……
「君の不正解は僕の正解、僕の不正解は君の正解……この仕事が好きなら嫌いなことにも目を向けないと君はいつだって変わらない。いつか君は大事な人が危なくなりそうなとき、さっきみたいに動けず見殺しにするだろう……」
私はなんでこの仕事をしているのだろうルナは自分に問いかけた。
──自ら志願したから、いいえ違う。第三階級魔法が唱えられたから、ただそれだけで、この戦場に連れてこられてる。あぁ…そうか……私はこの仕事がしたくてしてるわけじゃないのか。じゃあ私は何がしたいの?
「さぁそろそろ時間だ。君は今僕の言うことが理解できたのなら大人へと一歩進んだ、もし理解できていなくても僕が大人にしてあげよう……」
ガエターノはルナの股に手を入れる。
ルナは自分自身の支え、アイデンティティーがもともとなかったことに気が付いた。
こんな私に何の価値があるのだろうか……
そう思うとルナはガエターノに身を委ねた。
──攻略完了……
ガエターノは久しぶりに女性を攻略した快感に耽る。そして、これからもう一つの快感に、と思うと、
「おい……」
ガエターノの前に冷たい表情をした王国の少年兵が現れた。
その少年兵を見た瞬間、ガエターノは恐怖で声がでなくなった。
ガエターノの警報装置が大きな音を立てて報せている。
自分はここで死ぬと。
ハルはルナに馬乗りになっている男の胸ぐらを掴もうとしたが、勢いのあまりハルの指はガエターノの皮膚を突き破りそのまま鎖骨を掴んで持ち上げた。
皮膚を貫かれた痛みと鎖骨を素手で触れられる痛みがガエターノを襲う。
ハルと目が合うガエターノは恐怖に慄く。
ハルは怒りを滲ませ、鎖骨を握る力が強まる。
バキッと音をたててガエターノの鎖骨が砕けた。
落下するガエターノをハルはサッカーボールを蹴るように蹴り上げた。
ガエターノは無数の肉片へと変化した。
「レイ!!」
ハルはレイを探した。
レイは同い年くらいの少年と戦っている。ハルはそこに割って入る。
「レイ?」
レイは突然現れたハルに驚いた。
「僕が代わるから彼処に横たわってるルナさんを抱えて今すぐここから離れて」
ハルはレイにも少なからず腹が立っていた。何故ルナを連れて逃げないのか。
「あれぇ?選手交替?君はさっきの子より速い?」
ハルは構わず帝国の少年兵に歩みを進める。
「あれぇ?無視?フレイム!」
少年の掌から業火の炎がほとばしりハルを飲み込む。
「キャハ!さっきの子はどこ行った?」
少年はキョロキョロしてレイを探している。しかし自分の出した炎の中から手が飛び出し少年兵の頭を掴んだ。
「へ?どうして僕の炎が効かないの?」
少年兵はハルに頭を掴まれながら話す。
「お前が弱いからだ」
ハルはフレイムを唱えて少年を焼失させる。少年の腕には元々火傷の痕があったが、その痕が全身に広がるように皮膚がただれ、炎が少年の全身を包んだ。
ピコン
レベルが上がりました。
「…レベルが上がって、MPも全快になったことだし……」
ハルは呟くと周囲を見渡す。
「「うぉぁぁぁぁ!」」
「「ぐわぁ!」」
殺し合いはまだまだ続いている。いや一方的な蹂躙だ。しかしそれも兵士同士なら仕方のないことなのかもしれない。
「敵本陣はあそこか……」
レイもここから離れたと思ったハルは魔力を練り上げて、唱える。
「フレアバースト!」
青い竜が出現しその衝撃で周囲の大勢の者達は一瞬にして焼け死んでいく。いや、消滅したといっても過言ではない。炎の竜は帝国兵を焼き殺しながら帝国本陣へと向かって行った。
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