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第17話

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~ハルが異世界召喚されてから4日目~ 

「さぁこれから皆さんには殺し合いをして頂きます」 

 教室は静まり返った。 

 ハンスが机を叩きながら叫ぶ。 

「どういうことだ!」 

「こういうことです」 

 男はハルの前にいる男子生徒を指差したが、 

「やめろ!!」 

 ハルは立ち上がり教壇へと続く階段にでた。 

 男は狙いを男子生徒からハルに定めた。向けている指の角度を少し上げる。 

「ウィンドカッター」 

 ハルは拳に魔力を纏い、一直線に空気を切り裂きながらハルの首もとに向かって鎌鼬が迫り来る。 

 ハルはそれを殴り付けて、打ち消した。 

 その時、どこかで爆発音が轟き、教室全体が揺れた。それに驚いた女子生徒が悲鳴を上げる。 

 ハルと教壇にいる襲撃者は正面の敵をお互いが見据えたままだ。 

 ラースはハルに手を伸ばして、呆気にとられていた。 

 襲撃者の男が感心しながら口を開く。
 
「ほう、これを防ぎますか?…じゃあこれならどうです?」 

 男はハルに指をさしたまま、その指の周囲に3つのウィンドカッターを出現させ、ハルに向けて放った。 

 前回はこれが向かってくる途中で戻った。この予習なら万全だ。
 
 3つのウィンドカッターはそれぞれ首、胴、脚目掛けて飛んでくる。術者の男は余程人間をバラバラにしたいらしい。 

 ハルは魔力を両手と右足に纏った。右の拳で首に向かってくるウィンドカッターを叩き壊し、今度は左の拳で胴に向かってくるそれをアッパーカットで打ち消した。最後の脚に向かって飛んでくるウィンドカッターを右足で蹴り上げて打ち消す。 

 ──MPは? 

MP 41/51 

「よしっ!」 

 するとまたも何処からか爆発音が轟く。 

 Bクラスの他の生徒達には何が起きているのか理解できない。 

「すげぇ…?」
「何これ?何かのデモンストレーション?」
「さっきから爆発音が聞こえんだけど?」 

 Bクラスの生徒達が口々に騒ぎ始めた。 

「ハ…ハル?」 

 唯一ラースだけがハルを不安げに見つめている。 

 ハルは男を見たが、その男は教壇の前からピクリとも動こうとしない。 

「?」 

 違和感を覚えつつもハルは腕を伸ばしてファイアーボールを唱えた。 

 掌に赤い魔法陣が出現し、火の玉が放出される。火の粉を散らしながら火球は男の胸に命中した。いや、すり抜けたと言うべきか。 

「あれ?こんな簡単に…?」 

 そう思ったのも束の間、ハルは背中に痛みを感じた。 

 後ろを振り向くとさっきまで教壇にいた黒いローブを着た男が血のついた刃物を持って立っていた。 

「どうして!?」 

 もう一度前を見ると、そこにまだ男がいる。 

「フフフ、驚きましたよ。まさかこの魔法を使うことになるとはね……」 

 ハルは痛みをそこまで感じなかったが、倒れた。男の持っている刃物がハルの血の赤い色とは別に緑色に怪しく光る。おそらく毒が塗ってあるようだ。 

「冥界へのお土産に教えておきましょう。あそこにいる私は幻です。それでは私の経験値となりなさい」 

 男は倒れたハルを見下ろしながら掌を向け、魔力を込め始めた。 

 ──あっ…死んだ…… 

 ハルがそう悟ったその時、 

「ファイアーボール!!」 

 ラースが男目掛けて魔法を放った。男はハルに止めを刺す為に込めた筈の魔力を、迫る火球を掻き消す為に用いた。そしてそのままラースに向かってウィンドカッターを唱えた。 

 ラースの首が飛ぶ。ハルはその一瞬の隙をついて魔法を唱えた。 

「…ファイアー…ボール…!!」 

「何!?」 

 男に渾身のファイアーボールがヒットする。 

「ハハ…一矢報いたぞ……」 

 男が炎に包まれる光景を最後に、 

ピコン
新しいスキル『毒耐性(弱)』を獲得しました。 

ゴーン ゴーン  

~ハルが異世界召喚されてから1日目~ 

 背中にもう傷はない、スキルのお陰もあり悶絶する程の痛みではなかった。 

 ──痛いんだけどね…… 

 さっきの世界線もラースは死んでしまった。ハルも瀕死状態だった。 

 ──二人掛かりでようやくあの男を倒せた? 

 ハルはステータスを開いた。 

【名 前】 ハル・ミナミノ
【年 齢】 17
【レベル】  4
【HP】  62/62
【MP】  52/52
【SP】  87/87
【筋 力】 28
【耐久力】 47 
【魔 力】 40
【抵抗力】 37
【敏 捷】 43
【洞 察】 40
【知 力】 931
【幸 運】 15
【経験値】 270/500 

 経験値に変動が無いためあの男を倒せていないことがわかった。二人でようやくあの男を相手に出来たという評価にしておこう。戻ったのはあの男にファイアーボールをヒットさせた喜びだろう。 

<図書館> 

「幻を出現させる魔法?その幻は動いたりした?」 

「いえ…ただそこにある?って感じですかね」 

 フレデリカは着ているローブの下で腕を組ながら考えた。そして片腕を出して答える。 

「それはおそらく第一階級光属性魔法のミラージュじゃないかしら?」 

「ミラージュ?」 

「そう。本物と見分けられない程っていうできではないのだけど、例えば全身黒い服を着ていると錯覚しやすいんじゃないかな?」 

 ハルは口を大きく開けて言った。 

「あっ!確かに全身黒い服着てた!」 

 自分が言い当てたことに得意気になるフレデリカは更に畳み掛ける。 

「因みに王国戦士長の右腕レオナルド・ブラッドベル様なら本物と見紛う程の幻を複数人出せて、その幻を意のままに動かせるのよ?凄いでしょ!」 

「へぇ~…ブラッドベル…(あのスカした奴の父親かな?)」 

「……あと考えられるのは第二階級火属性魔法のヒートヘイズね?これも幻を見せる魔法よ?でもこれを戦闘で使えるのは相当な達人だから、もし相手にそんな人がいたら逃げることを薦めるわ?」 

 図書館をあとにするハルは王都を出て南の魔の森へと向かった。 

<魔の森> 

 大口を開けたグリーンドッグの群。魔物の群は魔力を纏い始め、一斉にウィンドカッターを唱えた。 

 森に生い茂る草を切り裂きながら無数の風の刃がハルを襲う。  

 順に口元、胸、首に向かってくるウィンドカッターをそれぞれ魔力を込めた左ジャブ、右アッパーで打ち消し、3つの風の刃を同じく魔力を込めた右足を自分の頭の高さまで蹴り上げて打ち消す。蹴りあげた足をそのままかかと落としの要領で残りの刃を打ち消した。ハルはその後冷静にファイアーボールを2つ同時に顕現させ、2体のグリーンドッグにヒットさせる。 

 2体の仲間が燃え盛る中、残り8体のグリーンドッグが一斉に噛みつこうとしてきた。 

 其々の個体は別々の唸り声をあげ、直進してくるもの、ジグザグに向かってくるもの、飛びかかってくるものに別れる。 

「遅い!さっきの魔法のが全然速かったって!」 

 まず1体のグリーンドッグがハルの胸目掛けて飛び掛かってきた。ハルは魔力を込めた拳でその魔物の脳天に叩きつけると、ハルの足元を狙うもう1体のグリーンドッグに激突した。 

 隙間なく、ハルの両脇から2体のグリーンドッグが襲いかかってくるが、ハルは両手に魔力を込めて唱える。 

「ファイアーボール!!」 

 2つのファイアーボールがそれぞれヒットした。 

 残り4体となったグリーンドッグ達はスピードを緩め、ハルと一定の距離を取って逃げ出した。 

 ハルは逃げる魔物達を目で追いながら考えた。 

 ──そう言えばこの拳… 

 魔力を帯びている右手を見た。 

 ──これで咄嗟に殴ってみたけどこれって身体強化だよね? 

「今度フレデリカ先生に聞いてみよう」 

筋力が1上がった 

~ハルが異世界召喚されてから2日目~ 

 あの男にリベンジするため、わざとBクラスに合格した。 

 アレックスとマリアと出会う。 

 ハルは自己紹介だけをして、フレデリカのいる図書館へと向かった。 

<図書館> 

 まだあって間もない少年が魔力を纏った拳をあどけない笑顔で見せてくる。 

「先生これって身体強化か何かなの?」 

「それってただ魔力を集中させたものよね?だからおそらく身体強化じゃないわ」 

「え?そうなの?でもホラッ?」 

 ハルは片手でフレデリカを持ち上げた。 

「キャッ!ちょっと!」 

「なんか力も強くなってる気がするんだよなぁ…レベルが上がったせいなのかな?」 

 フレデリカはゆっくりとおろされるとハルの腕を観察した。 

 ──よく見ると魔力が掌だけじゃなくて、腕全体に覆われている…… 

 通常身体強化はスキルを用いて発揮される。例えば、剣技の中に『剣気』というスキルがある。これは身体能力の向上と剣技の攻撃力を上げる効果がある。このように何か攻撃系スキルを習得しない限り身体強化の効果を得ることができない。純粋に身体強化だけのスキルは拳技か脚技にある『精神統一』くらいだろう。 

 また魔法で身体強化をする場合は聖属性による支援系魔法が当てはまるが、自分自身にかける者は神に使えた聖騎士や修道士くらいだ。 

 ──ハルくんは聖属性魔法を唱えられないし、これはどうしてだろう… 

 ハルは自分の疑問に対する回答が得られず、図書館をあとにした。 

 魔力を感じるトレーニングをする。腹式呼吸をする際、いつもより胸の力を抜いてみた。 

~ハルが異世界召喚されてから3日目~ 

 入学式、ラースと出会う。 

 ──今度こそは…… 

 二人で何の授業をとるか話し合った。その後孤児院の仕事をする。魔力を腕と足に集中させて仕事をした。いつもよりも倍早く仕事が終わったが、 

 ──かなり疲れた。 

 MPとSPが減っている。魔力を長時間纏わせると両方の値が減っていくことを学んだ。 

「マ~キノッ?」 

 マキノのブックアタックをされる前に自分から本を読む提案をしてみた。 

「なぁに?本読んでほしいの?」 

「うん!僕が読むんだけどね」 

 マキノは迷いながら本を選ぶ。選んだ本のタイトルは、 

『竜の王』 

「初めて見るなこれ……何々」 

 ハルはいつものようにあぐらをかきマキノをその組んだ足の上にのせて一緒に本を読んだ 

 大魔導時代のことが書かれた本だった。おそらくは史実ではなく創作モノだろう。 

◇ ◇ ◇ ◇ 

 妖精族、竜族、魔族の三つの種族はそれぞれいがみ合っていた。しかしこの三種族の子供達にはそんなことは関係なかった。 

妖精族の子ヴィヴィアン
竜族の子ペシュメルガ
魔族の子ファウスト 

 彼等はとても仲が良く、一緒に遊んでいた。しかし彼等にも同族の友達はいる。 

 ヴィヴィアンの妖精族の友達が竜族に殺された。 

 ペシュメルガの竜族の友達が魔族に殺された。 

 ファウストの魔族の友達が妖精族に殺された。 

 そんな事件が相次ぐ、勿論友達を失うのは辛かった。かといって3人がお互いを恨むことはなかった。いつまでも自分達は殺し合わないことを誓った。 

 しかし彼等も戦争に行く歳になり、他種族を殺す経験をした。 

 たまに3人で集まっては笑い話をした。そこでつらい経験を話すことはなかった。しかし、だんだんと疎遠になった3人に最も恐れていたことが起こる。 

 神ディータは嫌気が差していた。毎日毎日戦争に明け暮れている三種族にとうとう神ディータは怒った。 

「戦いばかりしている者には涙はいらないだろう」 

 そう言って彼等から涙を取り上げてしまった。悲しみのやり場をなくした三種族の戦士達は失くなった悲しみが力へとなり変わり更なる殺戮をするようになってしまった。 

 狂った戦争の最中、三種族入り乱れての大戦が起こった。作戦も何もない。目の前にいる敵を殺す。邪魔なら味方さえも。そんな乱戦の最中、ペシュメルガはヴィヴィアンの事を見付けた。そして近くにファウストもいる。心優しいファウストは悲しみを失くしたことにより我を忘れた狂戦士と化していた。そんなファウストの武器アゾットがヴィヴィアンを襲う。それに気付いたペシュメルガは迷うことなくヴィヴィアンを庇い死んでしまう。ファウストの意識もそこで戻った。 

 妖精族のヴィヴィアンが敵である竜族ペシュメルガを腕に抱く、ファウストは自分の手で親友を殺してしまったことに絶望し膝をつく。 

 種族を越えたその光景があまりにも異質であり美しかった為、戦っていた者達の手が、時が止まった。 

 悲しみを、涙を神ディータにとられたにも関わらず。ヴィヴィアンとファウストの目に涙が溢れ落ちた。二人の涙の雫がペシュメルガの頬に落ちる。 

 すると、奇跡が起きた。 

 ペシュメルガが目を開けたのだ。そして生き返ったペシュメルガは同時に力を得た。 

 この戦争を終わらせる程の…… 

◇ ◇ ◇ ◇  

 本はそこで終わっていた。 

 ペシュメルガが大魔導時代を終わらせたという人もいるがペシュメルガに関しての文献はおろか、魔族、妖精族に関する書物が少なすぎるためよくわかっていない。 

 一般的な考えとしては神ディータが戦争を終わらせたと伝わっている。このペシュメルガは後に生と死を司る王と呼ばれているようだ。 

 ──これはもはや神話だな 

 それにしてもやはりこの本は創作物だろう。差別を無くすことを是としている。みんな仲良くしなさいという寓話的要素が多分に含まれている。 

 だが、そんな主張も虚しくこの世界はまだ戦争が続いていた。 

 ──そして明日の襲撃……彼等の狙いはなんなのか…… 

~ハルが異世界召喚されてから4日目~ 

 以前の世界線では魔法歴史学の授業をとっていたが今回は風属性魔法の授業を受けている。 

 ──これから来る風属性野郎対策だ!! 

「ウィンドカッターやウィンドアロー等、刃物のような切れ味を持つ……」 

 対策というよりは風属性魔法の性質の話に終始しており、あまり役に立ちそうになかった。 

 2時限目、火属性の第二階級魔法の講義は相変わらずMP消費を抑えてサボっていたが、気になることがあったのでスタンに質問してみた。 

「僕達が第二階級魔法を唱えられないのってレベルが低いせいじゃないんですか?」 

「レベルは関係ないぞ。いかにレベルが高くても唱えられない者もいるし、ここの校長は15歳の時レベル3だったにも拘わらず、この第二階級魔法ファイアーエンブレムを唱えられたんだ。こればっかしは才能と訓練なんだ」


3時限目 

 待ちに待った、運命の時間だ。 

「おーい!ハル!隣いいか?」 

「もう座ってんじゃん!だけど僕トイレに行きたくなりそうだからこっち側に座ってよ」 

「ん?うんこしてないのか?というかなんか緊張してね?」 

 ラースの話を聞き流すハル。 

 先生らしき男が教室に入ってきた。神学の先生のわりには若くて屈強そうな男だ。一歩一歩確かめるように階段を下りて教壇にたつとその男は言った。 

「さぁこれから皆さんには殺し合いをして頂きます」 

 ──リベンジマッチだ!! 

【名 前】 ハル・ミナミノ
【年 齢】 17
【レベル】  4
【HP】   62/62
【MP】  52/52
【SP】   87/87
【筋 力】 29
【耐久力】 47 
【魔 力】 40
【抵抗力】 37
【敏 捷】 43
【洞 察】 40
【知 力】 931
【幸 運】 15
【経験値】 300/500 

・スキル 
『K繝励Λ繝ウ』『莠コ菴薙�莉慕オ�∩』『諠第弌縺ョ讎ょソオ』『閾ェ辟カ縺ョ鞫ら炊』『感性の言語化』『第一階級水属性魔法耐性(中)』『恐怖耐性(中)』『物理攻撃軽減(弱)』『激痛耐性(弱)』『毒耐性(弱)』 

・魔法習得
  第一階級火属性魔法
   ファイアーボール  
   ファイアーウォール 

  第一階級水属性魔法
   ──
  第一階級風属性魔法
   ──
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