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第二話

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 酷い。 酷過ぎる。
 創造魔法はありがたいけど、出来ればレベルもある程度は欲しかった。

 「もしモンスターが出て来たら」

 考えなくても容易にわかってしまう。
 死ぬ。
 死にたくない。やっとイジメから解放されたのに……。

 そうと決まれば、移動開始だ。
 この森を出て、人里に向かう。

 「よし!」

 



 森を出て、見つけた道にそって歩く事、十分。
 人里というより国を囲う外壁らしきものが見えた為、トールは足の痛みを我慢して駆け出した。
 
 走る毎に、感覚が麻痺していくのがわかる。
 近づくにつれ鼓動が早くなる。
 鎧を装備した人が見えて思わず、声を張り上げた。

 「おーい!」

 ふいに視線が傾き、次の瞬間トールは意識を手放した。





 「ーー子が?」

 声が聞こえる。

 「ーーんの前で倒れたんだ」

 近くで話してる?

 「……ん」

 ガチャガチャと鎧の音が近づいてくる。

「おい坊主、大丈夫か?」

 トールは意識が朦朧とした中、周りの様子をうかがう。
 そして目が合った男性に恐る恐る尋ねた。

 「ここは……僕は一体……」

 聞かれた男性は安堵した様子でこう答えた。

 「ここはグランデ王国の外壁にある、警備室だ。 坊主が走ってくるのが見えたんだが、途中で気を失って倒れたんだ。 覚えてるか?」

 覚えてる。

 「それでよく見れば、素足だろ? 怪我してたから回復魔法で治癒してから、ここに運び込んだんだ。 で、今は説明してる」

 「ありがとう」

 「いやいや、良いって気にすんな。 で、覚えてるなら話は早い。 俺は警備兵だからな、仕事はする。 聞かれた事に答えてくれ」

 警備兵の男性が引き出しから紙を取り出し、ペンを持ち何かを書き込んでいく。
 ふと、視線が机の上にある小物に移った。

 「ああ、これはウソをついてるのかがわかる魔道具だ。 念の為に使うから気にしなくても良い」

 凄いな異世界。

 「じゃまず、何で走ってた」

 これは正直に答えないとな。

 「目が覚めたら森の中にいました。 安全を確保したくて人里を探して歩いてここに辿り着きました」

「目が覚めたら森の中にいた? 森って……迷いの森か?」

 なんだその、いかにも迷いそうな森は。

 「迷うんですか?」

 「ああ、迷う。 一度通った所にいつの間にか戻ってるのが普通だ」

 そんな所にいたのか!
 僕をこの世界に呼んだ奴と会ったら殴ってやる。

 「次だ。 目が覚めたらと言ったが、その前はどこにいた?」
 
 「自分の部屋にいて、気づいたら森で寝転がっていました」

 うん。魔道具の反応はないな。

 「魔道具の反応はない。 つまり、捨てられたか」

 え?!僕、捨て子扱いなの?!

 「後は、これだな。 この板に手を置いてくれ。 右でも左でもいい」

 言われた通りに手を置くと、ピッという音に続いてステータスが表示された。
 なんてハイテク!

 「トール・カグヤ……十二歳。 種族、人族。 賞罰なし。 称号……ん? 異世界転移者?」
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