2 / 14
第二話
しおりを挟む
酷い。 酷過ぎる。
創造魔法はありがたいけど、出来ればレベルもある程度は欲しかった。
「もしモンスターが出て来たら」
考えなくても容易にわかってしまう。
死ぬ。
死にたくない。やっとイジメから解放されたのに……。
そうと決まれば、移動開始だ。
この森を出て、人里に向かう。
「よし!」
◇
森を出て、見つけた道にそって歩く事、十分。
人里というより国を囲う外壁らしきものが見えた為、トールは足の痛みを我慢して駆け出した。
走る毎に、感覚が麻痺していくのがわかる。
近づくにつれ鼓動が早くなる。
鎧を装備した人が見えて思わず、声を張り上げた。
「おーい!」
ふいに視線が傾き、次の瞬間トールは意識を手放した。
◇
「ーー子が?」
声が聞こえる。
「ーーんの前で倒れたんだ」
近くで話してる?
「……ん」
ガチャガチャと鎧の音が近づいてくる。
「おい坊主、大丈夫か?」
トールは意識が朦朧とした中、周りの様子をうかがう。
そして目が合った男性に恐る恐る尋ねた。
「ここは……僕は一体……」
聞かれた男性は安堵した様子でこう答えた。
「ここはグランデ王国の外壁にある、警備室だ。 坊主が走ってくるのが見えたんだが、途中で気を失って倒れたんだ。 覚えてるか?」
覚えてる。
「それでよく見れば、素足だろ? 怪我してたから回復魔法で治癒してから、ここに運び込んだんだ。 で、今は説明してる」
「ありがとう」
「いやいや、良いって気にすんな。 で、覚えてるなら話は早い。 俺は警備兵だからな、仕事はする。 聞かれた事に答えてくれ」
警備兵の男性が引き出しから紙を取り出し、ペンを持ち何かを書き込んでいく。
ふと、視線が机の上にある小物に移った。
「ああ、これはウソをついてるのかがわかる魔道具だ。 念の為に使うから気にしなくても良い」
凄いな異世界。
「じゃまず、何で走ってた」
これは正直に答えないとな。
「目が覚めたら森の中にいました。 安全を確保したくて人里を探して歩いてここに辿り着きました」
「目が覚めたら森の中にいた? 森って……迷いの森か?」
なんだその、いかにも迷いそうな森は。
「迷うんですか?」
「ああ、迷う。 一度通った所にいつの間にか戻ってるのが普通だ」
そんな所にいたのか!
僕をこの世界に呼んだ奴と会ったら殴ってやる。
「次だ。 目が覚めたらと言ったが、その前はどこにいた?」
「自分の部屋にいて、気づいたら森で寝転がっていました」
うん。魔道具の反応はないな。
「魔道具の反応はない。 つまり、捨てられたか」
え?!僕、捨て子扱いなの?!
「後は、これだな。 この板に手を置いてくれ。 右でも左でもいい」
言われた通りに手を置くと、ピッという音に続いてステータスが表示された。
なんてハイテク!
「トール・カグヤ……十二歳。 種族、人族。 賞罰なし。 称号……ん? 異世界転移者?」
創造魔法はありがたいけど、出来ればレベルもある程度は欲しかった。
「もしモンスターが出て来たら」
考えなくても容易にわかってしまう。
死ぬ。
死にたくない。やっとイジメから解放されたのに……。
そうと決まれば、移動開始だ。
この森を出て、人里に向かう。
「よし!」
◇
森を出て、見つけた道にそって歩く事、十分。
人里というより国を囲う外壁らしきものが見えた為、トールは足の痛みを我慢して駆け出した。
走る毎に、感覚が麻痺していくのがわかる。
近づくにつれ鼓動が早くなる。
鎧を装備した人が見えて思わず、声を張り上げた。
「おーい!」
ふいに視線が傾き、次の瞬間トールは意識を手放した。
◇
「ーー子が?」
声が聞こえる。
「ーーんの前で倒れたんだ」
近くで話してる?
「……ん」
ガチャガチャと鎧の音が近づいてくる。
「おい坊主、大丈夫か?」
トールは意識が朦朧とした中、周りの様子をうかがう。
そして目が合った男性に恐る恐る尋ねた。
「ここは……僕は一体……」
聞かれた男性は安堵した様子でこう答えた。
「ここはグランデ王国の外壁にある、警備室だ。 坊主が走ってくるのが見えたんだが、途中で気を失って倒れたんだ。 覚えてるか?」
覚えてる。
「それでよく見れば、素足だろ? 怪我してたから回復魔法で治癒してから、ここに運び込んだんだ。 で、今は説明してる」
「ありがとう」
「いやいや、良いって気にすんな。 で、覚えてるなら話は早い。 俺は警備兵だからな、仕事はする。 聞かれた事に答えてくれ」
警備兵の男性が引き出しから紙を取り出し、ペンを持ち何かを書き込んでいく。
ふと、視線が机の上にある小物に移った。
「ああ、これはウソをついてるのかがわかる魔道具だ。 念の為に使うから気にしなくても良い」
凄いな異世界。
「じゃまず、何で走ってた」
これは正直に答えないとな。
「目が覚めたら森の中にいました。 安全を確保したくて人里を探して歩いてここに辿り着きました」
「目が覚めたら森の中にいた? 森って……迷いの森か?」
なんだその、いかにも迷いそうな森は。
「迷うんですか?」
「ああ、迷う。 一度通った所にいつの間にか戻ってるのが普通だ」
そんな所にいたのか!
僕をこの世界に呼んだ奴と会ったら殴ってやる。
「次だ。 目が覚めたらと言ったが、その前はどこにいた?」
「自分の部屋にいて、気づいたら森で寝転がっていました」
うん。魔道具の反応はないな。
「魔道具の反応はない。 つまり、捨てられたか」
え?!僕、捨て子扱いなの?!
「後は、これだな。 この板に手を置いてくれ。 右でも左でもいい」
言われた通りに手を置くと、ピッという音に続いてステータスが表示された。
なんてハイテク!
「トール・カグヤ……十二歳。 種族、人族。 賞罰なし。 称号……ん? 異世界転移者?」
0
お気に入りに追加
22
あなたにおすすめの小説
悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~
こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。
それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。
かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。
果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!?
※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件
月風レイ
ファンタジー
普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。
そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。
そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。
そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。
そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。
食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。
不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。
大修正中!今週中に修正終え更新していきます!
ダンジョン配信 【人と関わるより1人でダンジョン探索してる方が好きなんです】ダンジョン生活10年目にして配信者になることになった男の話
天野 星屑
ファンタジー
突如地上に出現したダンジョン。中では現代兵器が使用できず、ダンジョンに踏み込んだ人々は、ダンジョンに初めて入ることで発現する魔法などのスキルと、剣や弓といった原始的な武器で、ダンジョンの環境とモンスターに立ち向かい、その奥底を目指すことになった。
その出現からはや10年。ダンジョン探索者という職業が出現し、ダンジョンは身近な異世界となり。ダンジョン内の様子を外に配信する配信者達によってダンジョンへの過度なおそれも減った現在。
ダンジョン内で生活し、10年間一度も地上に帰っていなかった男が、とある事件から配信者達と関わり、己もダンジョン内の様子を配信することを決意する。
10年間のダンジョン生活。世界の誰よりも豊富な知識と。世界の誰よりも長けた戦闘技術によってダンジョンの様子を明らかにする男は、配信を通して、やがて、世界に大きな動きを生み出していくのだった。
*本作は、ダンジョン籠もりによって強くなった男が、配信を通して地上の人たちや他の配信者達と関わっていくことと、ダンジョン内での世界の描写を主としています
*配信とは言いますが、序盤はいわゆるキャンプ配信とかブッシュクラフト、旅動画みたいな感じが多いです。のちのち他の配信者と本格的に関わっていくときに、一般的なコラボ配信などをします
*主人公と他の探索者(配信者含む)の差は、後者が1~4まで到達しているのに対して、前者は100を越えていることから推察ください。
*主人公はダンジョン引きこもりガチ勢なので、あまり地上に出たがっていません
【完結】おじいちゃんは元勇者
三園 七詩
ファンタジー
元勇者のおじいさんに拾われた子供の話…
親に捨てられ、周りからも見放され生きる事をあきらめた子供の前に国から追放された元勇者のおじいさんが現れる。
エイトを息子のように可愛がり…いつしか子供は強くなり過ぎてしまっていた…
チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる