上 下
1 / 14

第一話

しおりを挟む
 僕の名前は神楽透。四年続くイジメで最近不登校になった、入学したばかりの十二歳。

 なんで小説の始まりみたいな自己紹介をしているかと言うと……

 明らかに地球と違う世界で、今まさにその状態になっているからだ。

 「ここ……どこだよ」



 「神楽! お前はこんな問題もわからないのか!」

 数学教師は壁の黒い板に書いた問題を指さして言う。

 「答えはこうだ」

 負の数の答えを書き殴った。

 「マイナスとマイナスはプラスになる。 答えは十二だ。 神楽、お前と同じ年齢だぞ? 十二年も生きてきて何をして来たんだ」

 教師の問いかけに苛立ち、つい言葉が口から出る。

 「負の数の計算は日常生活を送る上で必要何ですか? 買い物に行って使うんですか? 使いませんよね。 教えるならもっとタメになる事を教えて下さい。    教師ですよね?」

 反論したのが気にくわなかったのか、数学教師は額に青筋を張り大きな声を出した。

 「私は数学教師だ! 数学を教えて何が悪い! 問題を解けない上、授業を中断させたお前が悪い! 廊下に立ってろ」

 この数学教師は今の若い教師とは違い、昔ながらのやり方を続けている老教師だ。

 「廊下に立たせるのを今の時代では、体罰と言うんですよ。 禁止されてる事を平気でするのが教師のする事ですか? ならば僕は校長に話をしに行かなければいけませんね」

 そう言って授業を抜け出した僕は、校長室へと向かい事情を説明した後、早退した。

 仲の良い友達がいない僕には、その後の事はわからない。
 親には体罰をしようとしてくる教師がいるから行かないと、言ってある。
 でもホントはイジメられるのが嫌で行かないだけだ。

 そうして僕は引きこもりになった。



 ふいに頬を撫でるような心地良い風を感じた。

 「扇風機? 消したのに……」

 寝具の上にあるハズのリモコンを探そうと腕を動かした……が、何かおかしい。

 「この感触……え?!」

 最近は開発やらが進み、自然が失われつつある為、草は公園に行かないと見ることが少ない。
 そう、この感触はまさに草そのもの。
 飛び起きた僕の目の前に広がる光景は、多分ずっと忘れないだろう。
 それ程の衝撃だったのだ。

 「ここ……どこだよ」

 自分の部屋で寝ていた時のシャツと短パンという服装のまま、寝転がっていたのだ。

 「森、森だよな。 夢……じゃない、草だ。本物の草の感触。 部屋にいたのに……」

 もしもここが小説とかでよくある異世界だった場合、森の中で一人で寝転がってたという状態は非常に危険な行為だ。
 にもかかわらずパニックになる事なく、驚き過ぎて逆に冷静でいられた。

 「転生じゃなく、転移か」

 新たな命を授かったのではなく、地球での服装から察するに転移だと判断した。
 
 異世界の定番といえば、空中に不透明のボードを出すところから始まるものと、小説で読んだことがある。

 「ステータス」

 現れたステータスボードを見て、やはりここは異世界なんだと思い知らされた透は、ステータスに目を落とした。

「名前が、トール・カグヤになってる。 種族は人間。 十二歳。」

 確認するべきはまず、自分自身の事。
 自分が今、どういう状況、状態にあるか、どこにいるかを先に知っておけばこの後どうするかがスムーズに決めやすい。

 「異世界といえば、魔法だよな。魔法は……」

 魔法といえば、四大元素が有名だと思う。
 火、水、土、風。 自然の中にあり、その恩恵で人々は生活をしている。
 火があれば、菌を死滅させ病気を防ぐことが出来る。
 水があれば、生き長らえる可能性が高くなる。
 土があれば、作物を耕す際に養分の役目となってくれる。
 風があれば、自然が豊かになる上、風力発電のようにエネルギーに変えることも出来る。
 
 生きていく為に必要で、その恩恵を扱えるのはどの魔法かと思い、視線を下へと移す。

「創造魔法……?」

 創造魔法。普通に考えれば作ること。
 それも、真似するコピーよりもっと幅が広く、新しいものも含めての創る事だろう。

「僕に使いこなせるのか?いや、それよりも……」

 魔法よりも重要な事がある。
 それは、レベルだ。
 なんと、僕のレベルは一だ! イチ! ナンバーワン! 異世界の平均レベルというのがわからないけど、これは酷い。
 泣けてきそうな程、酷い。

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~

こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。 それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。 かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。 果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!? ※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件

月風レイ
ファンタジー
 普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。    そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。  そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。  そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。  そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。  食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。  不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。  大修正中!今週中に修正終え更新していきます!

ダンジョン配信 【人と関わるより1人でダンジョン探索してる方が好きなんです】ダンジョン生活10年目にして配信者になることになった男の話

天野 星屑
ファンタジー
突如地上に出現したダンジョン。中では現代兵器が使用できず、ダンジョンに踏み込んだ人々は、ダンジョンに初めて入ることで発現する魔法などのスキルと、剣や弓といった原始的な武器で、ダンジョンの環境とモンスターに立ち向かい、その奥底を目指すことになった。 その出現からはや10年。ダンジョン探索者という職業が出現し、ダンジョンは身近な異世界となり。ダンジョン内の様子を外に配信する配信者達によってダンジョンへの過度なおそれも減った現在。 ダンジョン内で生活し、10年間一度も地上に帰っていなかった男が、とある事件から配信者達と関わり、己もダンジョン内の様子を配信することを決意する。 10年間のダンジョン生活。世界の誰よりも豊富な知識と。世界の誰よりも長けた戦闘技術によってダンジョンの様子を明らかにする男は、配信を通して、やがて、世界に大きな動きを生み出していくのだった。 *本作は、ダンジョン籠もりによって強くなった男が、配信を通して地上の人たちや他の配信者達と関わっていくことと、ダンジョン内での世界の描写を主としています *配信とは言いますが、序盤はいわゆるキャンプ配信とかブッシュクラフト、旅動画みたいな感じが多いです。のちのち他の配信者と本格的に関わっていくときに、一般的なコラボ配信などをします *主人公と他の探索者(配信者含む)の差は、後者が1~4まで到達しているのに対して、前者は100を越えていることから推察ください。 *主人公はダンジョン引きこもりガチ勢なので、あまり地上に出たがっていません

【完結】おじいちゃんは元勇者

三園 七詩
ファンタジー
元勇者のおじいさんに拾われた子供の話… 親に捨てられ、周りからも見放され生きる事をあきらめた子供の前に国から追放された元勇者のおじいさんが現れる。 エイトを息子のように可愛がり…いつしか子供は強くなり過ぎてしまっていた…

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

神々の間では異世界転移がブームらしいです。

はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》 楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。 理由は『最近流行ってるから』 数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。 優しくて単純な少女の異世界冒険譚。 第2部 《精霊の紋章》 ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。 それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。 第3部 《交錯する戦場》 各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。 人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。 第4部 《新たなる神話》 戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。 連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。 それは、この世界で最も新しい神話。

処理中です...