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第一話
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僕の名前は神楽透。四年続くイジメで最近不登校になった、入学したばかりの十二歳。
なんで小説の始まりみたいな自己紹介をしているかと言うと……
明らかに地球と違う世界で、今まさにその状態になっているからだ。
「ここ……どこだよ」
◇
「神楽! お前はこんな問題もわからないのか!」
数学教師は壁の黒い板に書いた問題を指さして言う。
「答えはこうだ」
負の数の答えを書き殴った。
「マイナスとマイナスはプラスになる。 答えは十二だ。 神楽、お前と同じ年齢だぞ? 十二年も生きてきて何をして来たんだ」
教師の問いかけに苛立ち、つい言葉が口から出る。
「負の数の計算は日常生活を送る上で必要何ですか? 買い物に行って使うんですか? 使いませんよね。 教えるならもっとタメになる事を教えて下さい。 教師ですよね?」
反論したのが気にくわなかったのか、数学教師は額に青筋を張り大きな声を出した。
「私は数学教師だ! 数学を教えて何が悪い! 問題を解けない上、授業を中断させたお前が悪い! 廊下に立ってろ」
この数学教師は今の若い教師とは違い、昔ながらのやり方を続けている老教師だ。
「廊下に立たせるのを今の時代では、体罰と言うんですよ。 禁止されてる事を平気でするのが教師のする事ですか? ならば僕は校長に話をしに行かなければいけませんね」
そう言って授業を抜け出した僕は、校長室へと向かい事情を説明した後、早退した。
仲の良い友達がいない僕には、その後の事はわからない。
親には体罰をしようとしてくる教師がいるから行かないと、言ってある。
でもホントはイジメられるのが嫌で行かないだけだ。
そうして僕は引きこもりになった。
◇
ふいに頬を撫でるような心地良い風を感じた。
「扇風機? 消したのに……」
寝具の上にあるハズのリモコンを探そうと腕を動かした……が、何かおかしい。
「この感触……え?!」
最近は開発やらが進み、自然が失われつつある為、草は公園に行かないと見ることが少ない。
そう、この感触はまさに草そのもの。
飛び起きた僕の目の前に広がる光景は、多分ずっと忘れないだろう。
それ程の衝撃だったのだ。
「ここ……どこだよ」
自分の部屋で寝ていた時のシャツと短パンという服装のまま、寝転がっていたのだ。
「森、森だよな。 夢……じゃない、草だ。本物の草の感触。 部屋にいたのに……」
もしもここが小説とかでよくある異世界だった場合、森の中で一人で寝転がってたという状態は非常に危険な行為だ。
にもかかわらずパニックになる事なく、驚き過ぎて逆に冷静でいられた。
「転生じゃなく、転移か」
新たな命を授かったのではなく、地球での服装から察するに転移だと判断した。
異世界の定番といえば、空中に不透明のボードを出すところから始まるものと、小説で読んだことがある。
「ステータス」
現れたステータスボードを見て、やはりここは異世界なんだと思い知らされた透は、ステータスに目を落とした。
「名前が、トール・カグヤになってる。 種族は人間。 十二歳。」
確認するべきはまず、自分自身の事。
自分が今、どういう状況、状態にあるか、どこにいるかを先に知っておけばこの後どうするかがスムーズに決めやすい。
「異世界といえば、魔法だよな。魔法は……」
魔法といえば、四大元素が有名だと思う。
火、水、土、風。 自然の中にあり、その恩恵で人々は生活をしている。
火があれば、菌を死滅させ病気を防ぐことが出来る。
水があれば、生き長らえる可能性が高くなる。
土があれば、作物を耕す際に養分の役目となってくれる。
風があれば、自然が豊かになる上、風力発電のようにエネルギーに変えることも出来る。
生きていく為に必要で、その恩恵を扱えるのはどの魔法かと思い、視線を下へと移す。
「創造魔法……?」
創造魔法。普通に考えれば作ること。
それも、真似するコピーよりもっと幅が広く、新しいものも含めての創る事だろう。
「僕に使いこなせるのか?いや、それよりも……」
魔法よりも重要な事がある。
それは、レベルだ。
なんと、僕のレベルは一だ! イチ! ナンバーワン! 異世界の平均レベルというのがわからないけど、これは酷い。
泣けてきそうな程、酷い。
なんで小説の始まりみたいな自己紹介をしているかと言うと……
明らかに地球と違う世界で、今まさにその状態になっているからだ。
「ここ……どこだよ」
◇
「神楽! お前はこんな問題もわからないのか!」
数学教師は壁の黒い板に書いた問題を指さして言う。
「答えはこうだ」
負の数の答えを書き殴った。
「マイナスとマイナスはプラスになる。 答えは十二だ。 神楽、お前と同じ年齢だぞ? 十二年も生きてきて何をして来たんだ」
教師の問いかけに苛立ち、つい言葉が口から出る。
「負の数の計算は日常生活を送る上で必要何ですか? 買い物に行って使うんですか? 使いませんよね。 教えるならもっとタメになる事を教えて下さい。 教師ですよね?」
反論したのが気にくわなかったのか、数学教師は額に青筋を張り大きな声を出した。
「私は数学教師だ! 数学を教えて何が悪い! 問題を解けない上、授業を中断させたお前が悪い! 廊下に立ってろ」
この数学教師は今の若い教師とは違い、昔ながらのやり方を続けている老教師だ。
「廊下に立たせるのを今の時代では、体罰と言うんですよ。 禁止されてる事を平気でするのが教師のする事ですか? ならば僕は校長に話をしに行かなければいけませんね」
そう言って授業を抜け出した僕は、校長室へと向かい事情を説明した後、早退した。
仲の良い友達がいない僕には、その後の事はわからない。
親には体罰をしようとしてくる教師がいるから行かないと、言ってある。
でもホントはイジメられるのが嫌で行かないだけだ。
そうして僕は引きこもりになった。
◇
ふいに頬を撫でるような心地良い風を感じた。
「扇風機? 消したのに……」
寝具の上にあるハズのリモコンを探そうと腕を動かした……が、何かおかしい。
「この感触……え?!」
最近は開発やらが進み、自然が失われつつある為、草は公園に行かないと見ることが少ない。
そう、この感触はまさに草そのもの。
飛び起きた僕の目の前に広がる光景は、多分ずっと忘れないだろう。
それ程の衝撃だったのだ。
「ここ……どこだよ」
自分の部屋で寝ていた時のシャツと短パンという服装のまま、寝転がっていたのだ。
「森、森だよな。 夢……じゃない、草だ。本物の草の感触。 部屋にいたのに……」
もしもここが小説とかでよくある異世界だった場合、森の中で一人で寝転がってたという状態は非常に危険な行為だ。
にもかかわらずパニックになる事なく、驚き過ぎて逆に冷静でいられた。
「転生じゃなく、転移か」
新たな命を授かったのではなく、地球での服装から察するに転移だと判断した。
異世界の定番といえば、空中に不透明のボードを出すところから始まるものと、小説で読んだことがある。
「ステータス」
現れたステータスボードを見て、やはりここは異世界なんだと思い知らされた透は、ステータスに目を落とした。
「名前が、トール・カグヤになってる。 種族は人間。 十二歳。」
確認するべきはまず、自分自身の事。
自分が今、どういう状況、状態にあるか、どこにいるかを先に知っておけばこの後どうするかがスムーズに決めやすい。
「異世界といえば、魔法だよな。魔法は……」
魔法といえば、四大元素が有名だと思う。
火、水、土、風。 自然の中にあり、その恩恵で人々は生活をしている。
火があれば、菌を死滅させ病気を防ぐことが出来る。
水があれば、生き長らえる可能性が高くなる。
土があれば、作物を耕す際に養分の役目となってくれる。
風があれば、自然が豊かになる上、風力発電のようにエネルギーに変えることも出来る。
生きていく為に必要で、その恩恵を扱えるのはどの魔法かと思い、視線を下へと移す。
「創造魔法……?」
創造魔法。普通に考えれば作ること。
それも、真似するコピーよりもっと幅が広く、新しいものも含めての創る事だろう。
「僕に使いこなせるのか?いや、それよりも……」
魔法よりも重要な事がある。
それは、レベルだ。
なんと、僕のレベルは一だ! イチ! ナンバーワン! 異世界の平均レベルというのがわからないけど、これは酷い。
泣けてきそうな程、酷い。
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